活動性乾癬性関節炎 患者に対するBimekizumabの投与【Journal Club 20210901】

Bimekizumab in patients with active psoriatic arthritis: results from a 48-week, randomized, double-blind, placebo-controlled, dose-ranging phase 2b traial
(活動性乾癬性関節炎患者に対するBimekizumabの投与:48週間無作為化、二重盲検、プラセボ対照第2b相試験)

Chistopher T Ritclin, University of Rochester Medical Center, Rochester, NY, USA
Lancet 2020;395:427-440

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<サマリー>
IL-17AおよびIL-17Fの二重中和は乾癬性関節炎における新規治療法として期待されている。今回、IL-17AおよびIL-17Fのモノクロナール抗体であるBimekizumabに関して、活動性の乾癬性関節炎の患者で有効性、安全性を検討した。プラセボ群に比較し、関節病変、皮膚病変共に有意差をもって改善を認めた。
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P:乾癬性関節炎の患者
I:Bimekizumabでの治療
C:12週までプラセボ→その後Bimekizumab
O:12週目のACR 50達成患者の割合

 <セッティング>
・チェコ、ドイツ、ハンガリー、ポーランド、ロシア、アメリカの41施設で登録

<研究デザインの型:RCT、横断研究、前向きコホートなど>
・12週間の無作為・二重盲検・プラセボ対照第2b相試験 →その後48週目までの用量盲検試験

①プラセボ
②Bimekizumab 16mg/4W
③Bimekizumab 160mg/4W
④Bimekizumab 160mg/4W(1回だけ320mgのloading施行)
⑤Bimekizumab 320mg/4W
→12週間試験ののち、①と②に関しては無作為に③または⑤に1:1の割合で再度割り付けされ48週までBimekizumabを投与

<Population、およびその定義>
18歳以上で乾癬の分類基準で確定診断され、少なくとも6ヶ月前から症状があり、活動性(圧痛関節痛3/78以上、腫脹関節痛3/78以上、乾癬の皮膚症状があるか過去にあった患者)がある患者
除外基準:現在のTNF阻害薬使用

<主な要因、および、その定義>       
・Bimekizumab使用
(16mg/4W、160mg/4W、160mg/4W(初回だけ320mgのloading施行)320mg/4W)

<Control、および、その定義>
・Bimekizumab以外の製剤使用
※TNF阻害薬の現在使用は除外(過去使用はOK)
※PSL、NSAIDs、csDMARDsの併用可

<主なアウトカム、および、その定義>
・主要評価項目:12週目のACR 50達成患者の割合
・副次評価項目:12週目のACR 20、ACR 70達成患者の割合
    BSA 3%以上の乾癬の患者の12週目でのPASIスコアが75%以上または90%以上改善した患者の割合
    48週目のACR 20、ACR 50、ACR 70達成患者の割合
    BSA 3%以上の乾癬の患者の48週目でのPASIスコアが75%以上、90%以上、100%以上改善した患者の割合
    有害事象の検討

<交絡因子、および、その定義>
・年齢、性別、体格、人種

<解析方法>
・BimekizumabとACR 50との関係にはCochran-Mantel-Haenszel検定と修正riditスコアを用いた欠測対処にはmultiple imputationを用いた
・副次評価項目は治療法、地理的背景、TNF阻害薬への暴露歴を含むロジスティック回帰モデルに基づいて産出した

<結果>
・プラセボ 42人、Bimekizumab 16mg 41人、Bimekizumab 160mg 41人、 Bimekizumab 160mg(loading) 41人、Bimekizumab 320mg 41人
(Figure 1)
・群により多少差はありやや男性が多い
    白人が多い
    罹病期間は7~9年
    過去の治療としては、各群とも20%前後の患者でTNF阻害薬、60~70%前後の患者でcsDMARDs、50~70%前後の患者でMTXを使用

(Table 1)
・12週目のACR 50達成患者の割合はBimekizumab使用群はいずれの群もプラセボ群に比較し有意に高かった。また、ACR 20についても同様の結果であった。
ACR 70に関してはBimekizumab 160mg投与群でプラセボ群に比較し有意に高かった。
プラセボ群とBimekizumab 16mg/4W群は再度割り付け後、24週の時点でACR基準の改善を認めた。

(Figure 2、Table 2,3)
・12週目のPASI 75達成患者の割合はBimekizumab使用群はいずれの群もプラセボ群に比較し有意に高かった。PASI 90については、Bimekizumab 160mg投与群、320mg投与群でプラセボ群に比較し有意に高かった。
 プラセボ群とBimekizumab 16mg/4W群は再度割り付け後、24週の時点でPASIの改善を認めた。

(Figure 3、Table 2,3)
・副作用
 ・12週目までの副作用発現:プラセボ 42名、Bimekizumab 68名(41%)
 ・ほとんどが軽症~中等症で鼻咽頭炎(25名)、上気道炎(21名)が多かった
 ・重篤な副作用
 ・~12週目:プラセボ群で心房細動、Bimekizumab群で薬剤性肝障害、蜂窩織炎、E型肝炎
 ・12週目~:Bimekizumab群で手根管症候群、甲状腺腫、悪性黒色腫、変形性関節症、慢性中耳炎
 ・炎症性腸疾患、ぶどう膜炎、心血管イベント、アナフィラキシー反応はなし
 ・死亡例なし

<結果の解釈・メカニズム>
In vitroでは、IL-17AとIL-17Fは中等度のシグナル活性化因子にすぎないが、TNFなど他のサイトカインと作用することにより、炎症反応を増幅させる。IL-17AはIL-17Fに比べより強力(potent)であるが、蛋白質の発現レベルは約30倍IL-17Fの方が高いことが知られており、IL-17Aだけでなく、IL-17Fも中和させることにより関節、皮膚症状共に改善したと思われる。
Bimekizumab 320mg群に比べ、160mg群の方が成績がよかったのは、320mg群の方が活動性が高かったためと考えられる。

<Limitation>
・サンプルサイズが小さい
・比較対照薬(他のIL-17阻害薬等:特にブロダルマブ)がない

<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
・IL-17A阻害薬やTNF阻害薬で効果不十分であったPsA患者に有効である可能性がある

<この論文の好ましい点>
・主要評価項目を宣言している点

<この論文にて理解できなかった点>
・PSLの使用量が不明
・csDMARDsの種類や投与量が不明

担当:西見慎一郎

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