Serious infections in ANCA-associated vasculitis in the biologic era: real-life date from a multicenter cohort of 162 patients
Konstantinos Thomas, et.al. Arteritis Research & therapy 2021 Mar 20; 23(1): 90
PICO:
P:AAV(GPA+MPA)
I:RTX投与
C:CYC投与
O:重症感染症の発症リスク
サマリー;AAV治療において、RTXはCYよりも安全性に勝る可能性がある
<背景>
これまでの研究報告でAAVにおいて重症感染症(serious infection: SI)が死亡率の増加に大きく関与することは知られている。本研究ではAAVにおけるSIの発生率やタイプ、SI発症のリスク因子を治療の違い、また疾患活動性により比較することを目的とした。
先行研究
・RAVE試験:2010年RCT、観察期間6カ月⇒SI発生率はCYCとRTXで差がない
・RITUXVAS試験:2014年RCT、重度腎障害、観察期間2年⇒SIの発生率はCYCでわずかに高い
<セッティング>
参加施設:ギリシャ・アテネの3施設
<研究デザインの型:RCT、横断研究、前向きコホートなど>
後ろ向き観察研究 ケースコントロール研究
<Population、およびその定義>
・≧18歳、GPAもしくはMPA(寛解導入後に最低3ヶ月以上の追跡調査が行えている者)
・EGPAは除外
<主な要因、および、その定義>
・SI定義:入院または抗菌薬の静注が必要な感染症
帯状疱疹(HZ):の必要性、治療の種別に関わらずHZは全症例をSIとする
(AAVにおいてはHZの罹患率が高いことが知られているため)
・各薬剤の曝露期間は以下の期間で〔patint-years:患者年〕で設定した
・シクロフォスファミド(CYC):初回投与から最終投与の3ヶ月後までをinduction曝露期間とした
・リツキシマブ(RTX):初回投与から最終投与6ヶ月後までをinduction曝露期間とした。
・その他の薬剤:初回投与から最終投与を曝露期間とした。
※各薬剤の曝露期間における発症率は、曝露期間中のSI数を各曝露期間の患者年数で割って算出した。
※グルココルチコイドは寛解導入時の開始量をデータとして収集した
<Control、および、その定義>
なし
<解析方法>
二分法の変数はパーセンテージで、連続変数は、正規分布の場合は平均値(標準偏差)、ノンパラメトリック分布の場合は中央値(四分位範囲)でそれぞれ表示した。二分法の比較にはカイ二乗法を、連続変数にはMann-Whitney法またはt検定を用いた。統計的有意性の閾値はp値<0.05とした。感染なしの生存期間(FIS)はKaplan-Meier解析で評価し,いくつかのサブグループ間でFISを比較するためにlog rank testを実施した。患者は,重篤な感染症が発生した時点,またはフォローアップ期間の終了時点(入手可能な最後の訪問日)で打ち切られた。単変量および多変量ロジスティック回帰により、全追跡期間中および1年目のSIの危険因子を同定した。単変量解析でp<0.05の変数は多変量モデルに含まれ(後方選択)、p<0.05の変数はモデルの最終段階まで保持された。
<結果>
・1990年1月~2020年5月までに受診した患者162名を対象とした。
・CYCもしくはRTX、もしくはCYC+RTX併用の患者137名
寛解導入療法
・GC(平均44±15mg)
・CYC単剤:61%
・RTX単剤:18%
・CYC+RTX併用:9%
137名中102名(74%)にPCP対する予防投与。
■Table2
・2 patient-years, 平均期間5.4年で50人(32%)の患者で67件のSIが確認された
・発症率は5/100 patient-yearsであった
・SIの内訳 ⇒呼吸器感染症:45%、HS:24%、消化管・菌血症・尿路感染:各9% その他
・発症時PSL投与量の中央値は19mg/日
■Figure 1、Supple table2
SIのリスクファクター:
・診断時の腎機能(CrCl<30mL/min) 、年齢(>65歳)、血漿交換/透析を要する:21
・肺障害や糖尿病では有意さはなかった
■Table 4
・SIの発生率:維持療法期間や治療中止後に比べて導入期でもっとも高かった
・CYによる寛解導入療法はRTXによるものよりもSI発生リスクが高かった
・維持療法においては他の免疫抑制剤(AZA、MTX、MMF)を投与した患者や治療を中断した患者と比較し、RTX維持療法の患者との間に差はなかった。
■Supple table 5
多変量解析では血漿交換/透析を要する患者(OR-3.16)、診断時BVAS高値(OR=1.11)、が独立したリスクファクタ―
<Limitation>
・レトロスペクティブな研究である点⇒SIの過小評価、入院しない他院で診断治療された感染症は拾えていない
・施設間で統一された治療プロトコールはなく、全施設で最新の知識のもと治療していると仮定している点
・観察期間中のステロイドの総量を加味していない点
・障害臓器ごとの分析を行えていない点(Spp table2で肺のみに言及)
・好中球やリンパ球数、血清IgG値などのパラメーターに触れていない
<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
・AAVに対するより有効かつ安全な治療選択の参考
<この論文の好ましい点>
レトロスペクティブだが、RAVEやRITUXVAS試験に比べ、観察期間がより長い点
担当:高橋 良