リウマチ性血管炎に対するリツキシマブの効果について【Journal Club 20211201】

Rituximab Therapy for Systemic Rheumatoid Vasculitis: Indications, Outcomes, and Adverse Events
Caitrin M. Coffey, Michael D. Richter, Cynthia S. Crowson, Matthew J. Koster, KennethJ.Warrington, Steven R. Ytterberg and Ashima Makol
The Journal of Rheumatology April 2020, 47 (4) ; 518-523

Summary:
リウマチ性血管炎(RV)の患者13人に対するリツキシマブ(RTX)治療の後ろ向きな症例検討では、8人(62%)が完全寛解を認め、5人(38%)は部分寛解を認めた。

背景:
リウマチ性血管炎(RV)は、小~中サイズの血管を侵すまれな関節リウマチの合併症であり、関節外症状の中でも最も重篤な症状とされ、5年後の死亡率は40%に達すると言われている。生物学的療法やtreat to target戦略の登場により、RVの発症率は過去20年間で低下傾向であるが、RVの臨床症状は変わらず、RVに関連する死亡率は依然として高いままである。RVに対する治療は経験的治療に基づいて行われ、生物学的製剤の役割は十分に確立されていない。
これまでリツキシマブ(RTX)は、RAに対して有効性が示唆されており、RVに対してもフランスのAIR(Autoimmunity and Rituximab)レジストリでは、RTXを投与した患者の大部分が、6カ月(71%)および12カ月(82%)で寛解を達成している。
本研究は、単施設において、RV患者におけるRTXの適応、転帰、および副作用を分析することを目的としている。

方法:
【患者の選択】
メイヨークリニックにおいて2000年〜2017年までの間にRVの診断を受け、RTXの治療を受けた患者を対象とした。抽出方法は電子カルテのより「rheumatoid arthritis」「vasculitis」のキーワードにてコンピューター検索によって抽出し、組織学的、放射線学的、臨床的にリウマチ科医によりRVと診断されていた症例を対象とした。また、RTXの使用についてはRVに対してRTXを使用したことが明記されている症例に限定し、RV以外の適応症でRTXを受けた患者、外部機関で治療を受けた患者、追跡情報が得られない患者は除外した。

【血管炎の評価】
寛解の評価はBirmingham Vasculitis Activity Score (version 3)より関節痛・関節炎の項目を除いたもの用いて行い、スコア0を完全寛解(CR)と定義した。また、カルテ上の臨床的改善を認めたもの部分奏功(CR)とした。

結果:
【ベースラインの特性】
2000年から2017年の間に、129人がRVと診断され、そのうち17人の患者がRVの適応症でRTX よる治療が行われていた。特性としては平均年齢は59.2歳で、男性:女性の比は7人:10人 16人が白人であった。17人の患者のうち14人(82%)はリウマチ因子(RF)陽性であり、17人中13人(77%)は抗シトルリン化ペプチド抗体(ACPA)陽性であった。

【RTX療法の内容】
RTXは、17人中8人の患者(47%)で一次導入療法として使用され、4人(24%)で再発RV、5人(29 %)で別の薬剤による治療中に追加して使用された。投与量は、13例で1000mg/body 2週毎(86.7%)、感染のため1例で7週間間隔に遅延された。2例で連続4週間375 mg / m 2 1週毎で行われた。RTXと組み合わされて行われた治療としては、ステロイドは11例(65%)、DMARDは9例(53%)、シクロフォスファミドは1例(6%)で使用された。
症状の内訳は皮膚潰瘍は9人、多発単神経炎は5人、炎症性眼症状(強膜炎を含む)は5人、胸膜炎を1人に認めた。8人が生検で血管炎が証明され、白血球破壊性血管炎を4人に認めた。

【治療結果】
・3ヶ月時点で15人が追跡でき、そのうち2人(13%)がCRを達成し、10人(67%)がPR、3人(20%)が無反応であった。
・6ヶ月時点では、6人(40%)がCRを達成し、8人(53%)がPRを達成し、1人は無反応であった。
・12か月の時点では13人が追跡でき、そのうち8人(62%)がCRを達成、5人(38%)はPRを達成した。

【RTX副作用】
・17人の患者のうち10人(59%)に副作用は認めず、4人(24%)が軽度の副作用を認めた。(2人は注入反応、1人は発疹、1人はCD腸炎)
・3人が感染症により入院が必要となった。(それぞれ尿路感染症、肺炎、PCP)
・RTXの使用による死亡は認めず、好中球減少症、低ガンマグロブリン血症、単純ヘルペスウイルス感染症、日和見真菌感染症、または結核を発症した患者はいなかった。

【分析】
6ヶ月でCRを達成したグループと達成しなかったグループ間でカイ2乗検定と順位和検定を用いて比較した場合、年齢、性別、喫煙、肥満度指数、RV診断時のRAの期間、RFおよびACPA力価、DAS28に有意差は認めなかった。 

【シクロフォスファミドの使用歴】
・17人の患者のうち7人がRVの臨床経過中のある時点でシクロフォスファミドによる治療を受けていた。
・3人の患者はRVの初回導入でCYで治療され、再発時のRTXの治療受けた。(No.3.5.11)(そのうちの1人はRTXの開始時に継続的なCYC療法を受けていた。No.3)
・2人の患者は一次治療としてCYに反応せず、RTXが追加された。(No.14.17)
・1人の患者は、悪心、嘔吐のためにCYが中止され、RTXによる治療が行われた。(No.15)
・1人の患者はRTXへの反応が不十分だった後にCYを開始した。(No.14)

【Discussion】
・この研究では先行研究の結果(6カ月で71%、12カ月で82%で寛解)と比較的一致した結果が得られた。
・先行研究と同様に、CYとの直接比較はできていないものの、CYに治療抵抗性だった症例に対しても効果を認めた。

【Limitation】
・CYやその他の生物学的製剤とのランダム化比較試験が望ましいが、RVは稀な合併症のため、症例数が少なく、実施困難であること。
・RVの診断基準についてはいまだ統一された見解がないこと。

【本研究の優れている点】
・強膜炎、末梢神経炎、皮膚潰瘍と比較的RVに典型的な症例が多かったこと。
・17例とRVのケースシリーズの中では比較的サンプル数があること

【本研究の好ましくない点】
・白人が大多数であったこと
・免疫グロブリン、補体価、IC-C1q1などには言及されていなかったこと

担当:蕗田淳平

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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