高安動脈炎におけるトファシチニブとMTXの治療効果と安全性【Journal Club 20211208】

Treatment efficacy and safety of tofacitinib versus methotrexate in Takayasu arteritis: a prospective observational study 
著者 Xiufang Kong  Department of Rheumatology, Zhongshan Hospital, Fudan University, Shanghai, China Kong X, et al.
Ann Rheum Dis 2021;0:1–7. doi:10.1136/annrheumdis-2021-220832

P:高安動脈炎患者 
ETOF使用
CMTX使用
O:治療効果と安全性

結論
TOF MTX に比べ、高安動脈炎治療における CR 誘発、再発防止傾向、GCs 投与量の漸減において優れていた。TOF の安全性は 高安動脈炎患者においても良好であった。

<セッティング>
・復旦大学付属中山病院のリウマチ科

<研究デザインの型:RCT、横断研究、前向きコホートなど>
・前向き観察研究(観察期間12か月間)

<Population、およびその定義>
・1990年にACRが設定した分類基準を満たすこと
・MTXまたはTOFの使用を開始した時点で活動性疾患がNIH基準2点以上
・ベースラインおよびフォローアップ期間中に完全なデータを持っている患者
・除外基準:腫瘍、感染症、その他の自己免疫疾患を併発、他の免疫抑制剤や生物学的製剤を併用していること

<主な要因、および、その定義>        
・TOF使用 5mgを1日2回投与

<Control、および、その定義>
・MTX使用 週に10~15mgの固定量で経口投与

<主なアウトカム、および、その定義>
・アウトカム:完全寛解(CR)および部分寛解(PR)は、6、9、12ヵ月目に評価
・再発は12ヵ月間の治療期間中に評価した。
(1)疾患活動性、NIHスコア2点以上、
(2)炎症パラメーター(ESRおよびCRP)の低下
(3)血管画像上の変化(進行、改善、または安定した疾患)
(4)GCs投与量の漸減(異なる時点でのGCsの平均投与量とベースラインからの減少量
(5)副作用および安全性(発疹、食欲不振、脱毛、月経異常、肝/腎障害などの不耐症の症状や兆候)を評価

<交絡因子、および、その定義>
・記載なし

<解析方法>
・ベースラインから治療後の異なる時点での連続変数:ペアのt検定
・無再発生存率:Kaplan-Meier曲線
・2つの治療群間の差:log-rank検定
・ベースラインのESR値、治療群、全身症状、治療未経験または治療抵抗性の特徴を12ヶ月目のCRのリスク要因で探る:「Enter」という方法で二元ロジスティック回帰分析

<結果>
・年齢、男女比、罹患期間、疾患活動性に差は認められず
・難治性患者の割合は、MTX群に比べてTOF群で相対的に高かった(p=0.002)
・6ヵ月目のCR率は、TOF群がMTX群よりも高い傾向にあった(23/27, 85.19% vs 16/26, 61.54%; p=0.07)
・12カ月目のCR率は、TOF群がMTX群よりも高かった(23/26、88.46%、対13/23、56.52%、p=0.02)
・PRについても各時点で評価したが、TOF群とMTX群の間には差が見られなかった(p>0.05)
・TOF群では、12ヶ月間の治療期間中に3名(11.54%)が再発したが、MTX群(8名、34.78%、p=0.052)に比べて相対的に少なかった。
・平均無再発期間は、TOF群の方がMTX群よりも長かった(11.65±0.98 vs 10.48±2.31カ月、p=0.03)
・両群ともに、GCsの投与量は有意に減少した。3ヶ月目、6ヶ月目、9ヶ月目、12ヶ月目において、両群ともベースライン時と比較して有意な減少が認められた(いずれもp<0.05)
・ベースラインから6ヵ月目までと、6ヵ月目から12ヵ月目までの画像評価。全体として、両群間に有意差は認められなかった(すべてp>0.05)
・安全性
12ヶ月の治療期間中に、TOF群の1名(3.70%)に帯状疱疹が発症し、アシクロビルで治療した。MTX投与群では、3名(11.54%)に肝酵素値の上昇(正常値上限の2倍以上)が認められた。

<メカニズム>
・IL-6やTNF-αといった炎症性サイトカインを標的としたTAK治療が、従来の免疫抑制剤よりも優れた効果を示す

<Limitation>
・MTXの高用量投与を行わなかったこと(平均10㎎/w)
・TOF群とMTX群の母集団の構成が一致していないこと
・比較的小規模なコホートである
・観察期間も比較的短かった

<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
・TOFが高安動脈炎の新しい治療選択肢となる可能性

<自分で考えた交絡因子>
・人種差
・MTX量

<この論文の弱点>
・RCTではない。
・TOF群にMTXの併用は行っていない。

<この論文の好ましい点>
・高安動脈炎に対するTOFの有効性、安全性をMTXと比較した論文

<この論文にて理解できなかった点> 
・「Enter」という方法で二元ロジスティック回帰分析

担当:三輪裕介

 

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