Avacopan for the Treatment of ANCA-Associated Vasculitis
ANCA関連血管炎に対するAvacopanの効果:ADVOCATE Study
David R.W. Jayne, M.D., Peter A. Merkel, M.D., M.P.H., Thomas J. Schall, Ph.D., and Pirow Bekker, M.D, Ph.D., for the ADVOCATE Study Group
N Engl J Med 2021; 384:599-609
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<サマリー>
ANCA関連血管炎の治療においてアバコパンはステロイド漸減投与に対して,26 週の時点での寛解に関して非劣性を示したものの優越性は示さず,52 週の時点での持続的寛解に関しては優越性を示した。
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P:ANCA関連血管炎患者
I:アバコパン投与
C:ステロイド漸減投与
O:寛解
<背景>
ANCA関連血管炎は生命を脅かす疾患であり、標準的な治療はグルココルチコイドによる免疫抑制療法であるが、その毒性が問題となる。
補体成分5aがC5a受容体に結合することは、ANCA関連血管炎の病態に中心的な役割を果たすと考えられている。Avacopanは、経口投与可能な低分子のC5a受容体拮抗薬で、C5a受容体を介したC5aの作用を選択的に阻害し、好中球の動員や活性化を抑制する薬剤であり、ANCA関連血管炎の治療薬として研究されている。本試験ではANCA関連血管炎の治療において、avacopanが慢性グルココルチコイドの必要性を代替するかどうかを評価する。
<研究デザインの型>
・無作為化二重盲検ダブルダミー対照試験
<セッティング>
・2017年3月15日から2019年11月1日まで、143施設
・Avacopan(30mg 1日2回)または同種のプラセボを52週間投与し、8週間の追跡調査を行った。プレドニゾンまたは同種のプラセボは、漸減スケジュールで20週間投与された(1日60mgを漸減し、21週目までに投与を中止)。
<対象者>
組み入れ基準
・シクロホスファミドまたはリツキシマブによる治療が適応となるMPAもしくはGPAと新たに診断されたか再発した患者
・MPOもしくはPR-3 ANCA陽性
・eGFR>15
・BVASが1つ以上の大項目または3つの非大項目、または血尿とタンパク尿の2つ以上の腎項目を有すること
除外基準
・侵襲的肺換気サポートを必要とする肺胞出血
・その他の自己免疫疾患
・スクリーニング前12週間以内に透析または血漿交換が必要な方
・腎臓移植の既往歴
・免疫抑制療法:シクロホスファミドをスクリーニングの12週間前までに投与された。
・スクリーニング時にAZA、MTX、MMF使用しており、1日目に使用を中止してシクロホスファミドまたはリツキシマブに変更する意志がない。
・スクリーニング前4週間以内にメチルプレドニゾロン換算で3gを超える静脈内投与、またはスクリーニング前6週間以内にプレドニゾン10mgを超える経口投与を継続的に受けた。
・リツキシマブまたは他のB細胞抗体をスクリーニングの52週間前まで、またはスクリーニングの26週間前までに投与された
・抗腫瘍壊死因子治療をスクリーニングの12週間前までに受けていること。
・過去にアバコパンの投与を受けたことがある。
・過去5年以内の癌の病歴。
・トランスアミナーゼ、アルカリフォスファターゼが正常上限の3倍以上。
・結核、B型またはC型肝炎ウイルス、HIV感染症。
・ベースライン時の白血球数<3500/μL、好中球数<1500/μL、リンパ球数<500/μL。
<無作為化の方法>
バコパン30mgを1日2回経口投与+プレドニゾンのプラセボを投与する群と、プレドニゾン+アバコパンのプラセボを加えて漸減的に経口投与する群に、ダブルダミーデザインで1:1の割合で無作為に割り付けられた。
<薬物療法>
・BVASの主要項目に関わる病状の悪化が見られた患者はグルココルチコイド追加した。
・シクロホスファミドを15mg/kgから1.2gまでを1日目と2週目、4週目、7週目、10週目、13週目に静脈内投与する方法、シクロホスファミドを体重1kg当たり2mgから1日200mgまでを14週間経口投与する方法、リツキシマブを375mg/m²を4週間静脈内投与する方法を行った。15週目以降は、シクロホスファミドに続き、アザチオプリンを2mg/kg/日を目標量として経口投与した。
<エンドポイント>
・主要評価項目:26週目の臨床的寛解(BVASが0であり、26週目以前の4週間にグルココルチコイドの投与を受けていないこと)と、持続的寛解(26週目および52週目に寛解し、52週目以前の4週間にグルココルチコイドの投与を受けていないこと)
・副次評価項目:最初の26週間のグルココルチコイド毒性指数(GTI)によるグルココルチコイドによる毒性作用、QOL、eGFR、尿中アルブミン・クレアチニン比
<解析方法>
・修正intention-to-treat解析
・inverse-variance stratum weights
・ゲートキーピング法
<結果>
331 例が無作為化され,166 例がアバコパン群,165 例がプレドニゾン群に割り付けられた。(Figure1)
・ベースライン時の患者の人口統計学的および臨床的特性(Table1)
平均年齢は両群とも61歳、男性はavacopan群で59.0%、prednisone群で53.7%であった。各群とも、43%がPR3抗体陽性、57%が抗MPO抗体陽性であった。合計81.2%の患者が腎血管炎を発症していた。スクリーニング時のグルココルチコイド投与量は、両群とも同程度であった。両群とも、約3分の2の患者がRTXを投与され、3分の1の患者がシクロホスファミドを投与された。
・エンドポイント
・主要評価項目(Table2)
第1の主要評価項目である26週目の寛解は、アバコパン群では166名中120名(72.3%)、プレドニゾン群では164名中115名(70.1%)に認められた(推定共通差、3.4%ポイント、95%信頼区間(CI)、-6.0~12.8、非劣性はP<0.001、優性はP=0.24)。
第2の主要評価項目である52週目の持続的寛解は,アバコパン群では166例中109例(65.7%),プレドニゾン群では164例中90例(54.9%)に認められた→非劣性は26週、52週の両方で示され、優越性は52週目でのみ満たされた。
・副次評価項目
グルココルチコイドによる毒性作用については、26週目のGTI-CWSの最小二乗平均値は、アバコパン群39.7、プレドニゾン群56.6。
52週目のeGFRのベースラインからの最小二乗平均変化量は、アバコパン群で7.3ml/1.73m²、プレドニゾン群で4.1ml/1.73m²。
・再発結果(Figure2)
アバコパン群158例中16例(10.1%)、プレドニゾン群157例中33例(21.0%)に再発が認められた。
・安全性(Table3)
重篤な有害事象は、アバコパン群で116件、プレドニゾン群で166件であった。最も多かった重篤な有害事象は血管炎の悪化(アバコパン群10.2%、プレドニゾン群14.0%)。血管炎を除く重篤な有害事象が発生した患者の割合は、アバコパン群で37.3%、プレドニゾン群で39.0%であった。死亡はアバコパン群で2例、プレドニゾン群で4例。重篤な感染症はアバコパン群で13.3%、プレドニゾン群で15.2%。グルココルチコイドに関連する可能性のある有害事象の発生率は,アバコパン群で66.3%,プレドニゾン群で80.5%であった。
経口および静脈内グルココルチコイドの平均量は、アバコパン群でプレドニゾン1349mg(患者1人当たり4mg/日)、プレドニゾン群で3655mg(患者1人当たり12mg/日)であった。血管炎の悪化や再発のためにプロトコールで指定された以外の免疫抑制剤を使用したのは、アバコパン群では29名(17.5%)、プレドニゾン群では36名(22.0%)であった。
<ディスカッション>
・Avacopanは、26週目の寛解に関しては、プレドニゾンの漸増投与と比較して非劣性であったが、優越性はなく、52週目 の寛解の持続に関しては、プレドニゾンよりも優れていた。
・グルココルチコイドによる中毒症状の発生率がアバコパン群よりもプレドニゾン群で高かったことは、プレドニゾン群でグルココルチコイドの使用量が多かったことと一致する。血管炎におけるeGFRとアルブミン尿に対するアバコパンの効果は、糸球体におけるC5a-C5aR軸の遮断により、糸球体にダメージを与える好中球の強力活性化を阻止することによるものと考えられる。
<Limitation>
・対象となる患者がMPO-ANCA陽性もしくはPR-3陽性患者、免疫抑制剤としてリツキシマブ使用もしくはエンドキサン使用、新規に診断された患者もしくは再発患者であり、患者群が異質である。それぞれの群における有効性や安全性の評価はされていない。
・52週以降の有効性や安全性が示されていないため、今後の研究が必要となると考えられる。
<この論文の好ましい点>
・アバコパンのステロイドに対する非劣性のみでなく、持続的寛解に関しては優位性を示すことができた点。
・患者は世界各国の143施設での登録となっており、アジア人も含まれている点。