Bruton’s Tyrosine Kinase InhibitorであるFenebrutinibのSLEに対する効果と安全性

Efficacy, Safety, and Pharmacodynamic Effects of the Bruton’s Tyrosine Kinase Inhibitor Fenebrutinib (GDC-0853) in Systemic Lupus Erythematosus: Results of a Phase II, Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Trial

 

David Isenberg, et al. Arthritis & Rheumatology, Vol. 73, No. 10, October 2021, pp 1835–1846

 

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<サマリー>
fenebrutinibの安全性に問題はなかったが、経路の強力な阻害効果にもかかわらず主要評価項目のSRI-4での奏功は得られなかった。
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P:SLE患者

I:Fenebrutinib投与群(投与量に2パターンあり)

C:プラセボ群

O:SRI-4奏効率

 

<背景>

ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)はTecファミリーに属するキナーゼで、造血系細胞に発現し、B細胞や骨髄系細胞のシグナル伝達経路で重要な役割を担っている。Fenebrutinibは経口投与可能な可逆的BTK阻害薬であり、B細胞リンパ腫の治療において臨床効果を示したほか、関節リウマチの患者を対象とした第Ⅱ相試験で有効性を実証した。B細胞および骨髄系細胞はSLEの病態にもかかわっており、SLEの治療戦略としてBTK阻害薬は有効であると考えられている。本研究では、SLEに対するFenebrutinibの第Ⅱ相用量設定試験が行われた。

 

<対象者>

組み入れ基準:revised ACR基準またはSLICC基準を満たし、かつ抗核抗体・抗ds-DNA抗体・抗Sm抗体の1個以上が陽性、SLEDAI-2Kで8点以上、PGA score 1点以上、これまでにSLEでの経口薬治療を受けたことがあるなどの条件を満たす18-75歳の患者。

除外基準:増殖性ループス腎炎の患者、直近で腎臓や中枢神経系の管理を要した患者、抗リン脂質抗体症候群の既往歴がある患者、固形臓器移植を受けた患者、蛋白尿が3.5mg/日以上の患者、Cre 2.5mg/dL以上の患者、eGFR 30以下の患者、直近で他の治験薬剤やカルシニューリン阻害薬・シクロホスファミドなどの治療を受けた患者、6週間以内に生ワクチンを接種した患者。

 

試験期間中は経口ステロイド、抗マラリア薬、その他の免疫抑制薬、ACE阻害薬の投与量は可能な限り一定に保たれた。

 

<研究デザイン>

第Ⅱ相、マルチセンター・ランダム化プラセボ対照二重盲検比較試験で有効性・安全性・薬物動態を評価した。試験は48週にわたって行われ、0週から12週と24週から36週の2回、経口ステロイドの投与量を減らすことができた。残りの期間では、経口ステロイドの投与量は固定された。また、一部の時期で2週間程度の期間経口ステロイドを増量するバースト療法が許可された。

<有効性評価>

主要評価項目としてはSRI-4、副次的評価項目としてはBICLAやSRI-6、経口ステロイドの減量を加味したSRI-4、形質細胞分化のレベルが高い患者におけるSRI-4など。探索的エンドポイントとしてSLEDAI-2K、BILAG 2004、PGA、CLASI、SFI、FACIT-Fなどが評価された。

<安全性評価>

CTCAE Ver. 4.0を用いた有害事象の評価、および臨床検査値に基づいた評価がなされた。

<バイオマーカー評価>

4週、12週、24週、48週に抗ds-DNA抗体、C3、C4、CH50、IgG、IgM、CCL4、リン酸化BTK、BTK蛋白質、CD19陽性B細胞数、CD3陽性T細胞数、IgJ、MZB1、TXNDC5、TMEM55Bが測定された。

 

<結果>

2017年1月~2019年7月にかけて12か国44施設で260人の患者が登録された。

48週後のSRI-4奏効率はプラセボ群で44%、Fenebrutinib150mg1回投与群で51%、200mg2回投与群で52%であり、有意差はみられなかった。SRI-4の改善は主にSLEDAI-2Kの改善によってもたらされ、PGAやBILAG scoreに変化はなかった。

48週後のBICLA奏効率はプラセボ群で41%、Fenebrutinib150mg1回投与群で53%、200mg2回投与群で53%であり、有意差はみられなかった。同様にSRI-6や経口ステロイドの減量を加味したSRI-4についても差を見出すことはできなかった。

重篤な有害事象についてはプラセボ群で10%、Fenebrutinib150mg1回投与群で5%、200mg2回投与群で14%であり、感染症の発生率は51%/56%/47%、うち重篤なものは0/1/3例であった。

バイオマーカーは、pBTKのレベルはFenebrutinib投与群で減少し、形質細胞・B細胞の減少、抗ds-DNA抗体・IgG・IgMの減少もみられた。

 

<ディスカッション>

SLEの臨床試験においては、免疫抑制剤やステロイドをどのように、どの程度の量を、いつ使用するかを定める必要があるなど、独特の課題がある。

治療群によってステロイド減量の適用基準に差があり、主要エンドポイントに交絡が生じた可能性がある。また、ベースラインのステロイド使用量に上限を設け、レスキュー療法を十分に用意した上でステロイドの漸減スケジュールを義務付けることで新治療薬の疾患悪化予防効果を実証しやすくなる可能性がある。

治験期間中には投与量のリマインダーが行われており、これが患者のアドヒアランスを向上させ、プラセボ群における奏効率を通常以上に高めた可能性がある。

疾患活動性の高い患者を十分に組み入れた場合には、プラセボ群での奏効率が低下する可能性がある。

(担当:矢嶋) 

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