Effects of BAFF Neutralization on Atherosclerosis Associated With Systemic Lupus Erythematosus
F. Saidoune et al. Arthritis Rheumatol. 2021 Feb;73(2):255-264.
【背景】動脈硬化による心血管イベントはSLEの死因になる。
Figure 1. ApoE -/-mouseとApoE-/-D227KmouseではCD19、CD11cなど細胞の割合に差はない。一方でBAFFの濃度はApoE-/-D227K mouseにおいて高い。D:血清dsDNA抗体は高値であり、E:腎組織においてもIgGやC3の沈着を認める。さらにApoE-/-D227K mouseではApoE-/-に比してプラークが厚くなっている。
Figure 2. ApoE-/-D227K mouseに抗BAFF抗体を投与することで、血清中BAFFやCD19陽性B細胞、また組織でのCD19陽性細胞は減少していった。
しかしながら、プラークの厚さには変わりがなかった。
Figure 3. 血清中コレステロール濃度は高い群ではプラークの厚さは抗BAFF抗体投与群でも差はなかったものの、コレステロールの低い群ではプラークの厚さは薄くなっていた。
73人のSLE患者のうち、CVD歴のない頸動脈プラークの有無で患者を分けた
Figure 4. プラークのある患者では血球中のCD19陽性B細胞、CD27陰性細胞は多かった。プラークの変わらなかった患者では血清BAFFの濃度は変化なかったが、プラークの増えた患者では血清BAFFの濃度は上昇した。BAFFとプラークの厚さは相関していた。
Figure 5. Belimumabを投与した3例のSLE患者での血清BAFFの推移
THP-1に患者血清とoxLDLで刺激をしてマクロファージへの分化を確認すると1名では増加し、1名では低下した。
【目的】BAFFの抑制がSLEの動脈硬化を抑制することができるか
【結果】SLEで動脈硬化を起こすApoE-/-D227K mouseは通常のApoE-/- mouseと比べ、血球中のB細胞をはじめとした細胞の差はない。一方でApoE-/-D227K mouseはdsDNA抗体や補体の沈着といったSLEモデルとして考えられる(Figure 1)。ApoE-/- D227K mouseに抗BAFF抗体を投与することにより、dsDNA抗体の低下や腎組織への補体の沈着は抑えられた。血管へのプラークへの影響は抗BAFF抗体を投与しても変化はなった(Figure 2)。ApoE-/-D227K mouseのコレステロールの値にて抗BAFF抗体の投与に対して抗BAFF抗体を投与すると血清コレステロールが低いグループではプラークの産生
が抑えられた(Figure 3)。プラークのある患者ではCD19陽性B細胞とCD27陰性細胞は多く存在し、プラークの増加した患者ほど血清BAFFの値は上昇していた(Figure 4)。患者のBMI別では、BMI<25では血清BAFFとプラークの厚さは相関していた(Figure 5)。
【重要なポイント】SLEにおける脂質代謝をベースとした動脈硬化がB cellによる影響も受けている可能性が示唆された。
【今後の論文展開や論文に対する検討課題】ApoE-/- mouseの血清コレステロールに関して個体差なのかどうか。他の要因があり、影響を受けているのかは検討する必要がある。
(担当:磯崎 健男)