☆チョコスタ☆はちょこっとだけ、アドバンスな統計解析を自分の分野(リウマチ膠原病分野)で考え、理解を深めようというブログです。第4回目はE-valueについてお話しします。
・主な内容:Courcoulas AP, Yanovski SZ, Bonds D, et al. Long-term outcomes of bariatric surgery: a National Institutes of Health symposium. JAMA Surg. 2014; 149(12):1323-1329.
・具体例:VanderWeele TJ, Ding P. Sensitivity Analysis in Observational Research: Introducing the E-Value. Ann Intern Med. 2017;167(4):268-274.
【まとめ】
・E-valueとは観察研究における未測定交絡因子に対する感度分析のアプローチで、観察された結果を否定するために、未測定交絡因子がどの程度の強さでなければならないか?を示す数値です。
・E-valueの計算はソフト(https://www.evalue-calculator.com/evalue/)で簡単に計算可能です。本当に簡単です。
・E-valueは最小値が1であるため直感的で、相対リスク、HR、リスク差、研究デザインを含む様々な効果測定値に対して計算するのが可能です。
・E-valueの大きさは、他の危険因子の関連性の大きさに応じて大きくも小さくもなるので、その論文の中で解釈が必要です。
・リウマチ領域でもAnn Intern Medに掲載されたLN患者の腎移植の論文で扱われています。
【E-valueとは】
・観察研究における未測定交絡因子に対する感度分析のアプローチです。
・「測定されていない交絡因子が、観察された治療とアウトカムの関連性を否定するために、同時に測定された共変量を考慮しながら、治療とアウトカムの両方に対して必要とされるリスク比の最小の強さ」のこと。つまり観察された結果を否定するために、未測定交絡因子がどの程度の強さでなければならないか?ということです。
・未測定交絡因子の強さがE-valueで示されるよりも弱い場合、測定されていない交絡因子によって、主要研究の結果が「関連なし」に覆されることはありえません。E-valueは、このような大きさの未測定交絡因子が妥当かどうかを考慮することで、主な研究結果の頑健性を評価するのに役立ちます。
【E-valueの計算】
リスク比(RR)の場合: E-value = RR + sqrt{RR×(RR – 1)}
*sqrt:square root=平方根
下記の計算ソフトで簡単に計算できます。
https://www.evalue-calculator.com/evalue/
【E-valueの魅力】
・最小値が1であるため直感的です。E値が高いほど、観察された関連を説明するためには、測定されていない交絡因子がより強くなければなりません。
・計算は95%CIの範囲にも適用できます。信頼区間をリスク比1.0を含むように(すなわち、関連性がないように)シフトさせるために必要とされる、未測定交絡の程度を評価することができます。
・E-valueは、相対リスク、HR、リスク差、研究デザインを含む様々な効果測定値に対して計算するのが可能です。
【E-valueの注意点】
・E-valueの大きさは、他の危険因子の関連性の大きさに応じて大きくも小さくもなります。(例)他のほとんどの危険因子のHRが1.1であれば、測定されていない交絡因子は、報告された関連を説明するためには、ほとんどの危険因子よりもはるかに大きな影響を与えなければならないため、E-value 1.3は比較的大きくなります。多くの危険因子のHRが2.0であれば、E値1.3は比較的控えめとなります。
【リウマチ業界での例】
2017年のAnn Intern MedでSLE関連の論文で使用されています。VanderWeele TJ, Ding P. Sensitivity Analysis in Observational Research: Introducing the E-Value. Ann Intern Med. 2017;167(4):268-274.
背景目的:米国におけるループス腎炎(LN)によるESRD(LN-ESRD)患者における腎移植の生存率への潜在的な影響を評価する全国規模のコホート研究で、LNによる末期腎不全(ESRD)患者は、早期に死亡する割合が高いかを検討しています。
P:腎移植の待機者であるLN-ESRDの患者
E:初回の腎移植は、時間的に変化する曝露として解析
O:主要アウトカム 全死因死亡率および原因別死亡率
解析:時間依存のCox回帰分析を用いて、主要解析における腎移植に関連するこれらの転帰のハザード比(HR)を推定しています。
結果 :研究期間中、9659人のLN-ESSRD患者が腎移植の待機者となり、そのうち5738人(59%)が移植を受け、多くは女性(82%)、非白人(60%)でした。移植は、待機患者における全死因死亡率の低下と関連していました(調整済みHR、0.30[95%CI、0.27~0.33])。
限界 :測定不能な因子が観察された関連に寄与している可能性があります。しかし、E-value解析は結果の頑健性を示唆しています。
結果の本文では「未測定の交絡に対する関連の頑健性を評価する感度分析において、腎移植に関連する全死因死亡率の0.30という観察されたHRは、曝露(腎移植)と結果(全死因死亡率)の両方に少なくとも6.1のHRで関連している未測定の交絡因子で説明できると判断した。対応するCIは、少なくとも5.5のHRで移植と全死亡の両方に関連する未測定の交絡因子によるヌルを含むように移動することができる。」と記載されています。
計算ソフト(https://www.evalue-calculator.com/evalue/)で上記論文のE-valueを計算してみました。
→添付画像
*チョコスタはリウマチ膠原病領域のトップジャーナル「ARD、A&R、Lancet Rheumatology、Rheumatology(Oxford)」から優先的に論文をピックアップ、なければ「SEMINARS IN ARTHRITIS AND RHEUMATISM、Therapeutic Advances in Musculoskeletal Disease、ARTHRITIS RESEARCH & THERAPY、Rheumatic & Musculoskeletal Disease(RMD) Open、ARTHRITIS CARE & RESEARCH、Journal of Rheumatology」からピックアップします。また世界の5大雑誌(New England Journal of Medicine、The Lancet、JAMA (Journal of the American Medical Association)、BMJ (British Medical Journal)、Annals of Internal Medicine)からもピックアップします。
文責:柳井亮