ステロイド性骨粗鬆症におけるデノスマブ、系統的レビュー、メタ解析の論文について【Journal Club 20221005】

 

論文名

Denosumab in the treatment of glucocorticoid-induced osteoporosis: a systematic review and meta-analysis

ステロイド性骨粗鬆症におけるデノスマブ、系統的レビュー、メタ解析

Drug Des Devel Ther. 2019; 13: 2843–2852.

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<サマリー>

デノスマブは、ビスフォスフォネート療法またはプラセボと比較して、腰椎および股関節のBMDは有意に増加した(腰椎:2.32%, 95% CI 1.73%-2.91%, P<0.0001、股関節1.52%、95%CI 1.1%-1.94%、P<0.0001)。骨折の発生率に差はなかったが、各試験で報告された骨折の総数が少なく、治療群間の骨折の差を検出するための検出力が不足していた。デノスマブと対照群の間で感染症の発生頻度に差は認められなかった。また、有害事象および重篤な有害事象の発生率も、デノスマブ投与群と対照群との間で同様であった。

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<PICO>

P:全身性グルココルチコイド療法を受けている患者

I:デノスマブ

C:対照群またはプラセボ群

O:BMD、骨折、安全性

 

<対象デザイン>

レビュー論文、症例報告、ケースシリーズは除外

 

<検索>

・期間:2000年1月1日から2017年9月1日まで

・検索エンジン:PubMedおよびCINAHL

・検索語:”denosumab”, “glucocorticoid”, “osteoporosis”, “glucocorticoid induced osteoporosis” および “safety” の用語

・あらゆる言語が対象

・2人の著者が独立して全出版物の抄録を確認し、適格性を判断

・学会抄録:2013年、2014年、2015年、2016年に米国リウマチ学会および米国骨代謝学会で発表された抄録のタイトルを、検索語 “denosumab” および “glucocorticoid” を用いて検索し、Pubmedを検索し、これらの学会で発表された関連する抄録がその後出版されたかどうかを判断した。出版されていない場合は、次に電子メールで著者に連絡し、出版予定日を問い合わせた。

・2019 年 2 月に文献検索を更新

・本研究はPROSPEROに登録した(登録番号CRD42019129233)

 

<データ抽出>

・両著者が発表年、対照群とデノスマブ投与群に割り付けられた被験者数、脊椎と股関節の面内BMDの変化、臨床的および放射線学的骨折、副作用などの試験結果などのデータを、論文から独立に抽出。

・Amgen Pharmaceuticals(Dore_2010、Saag_2018)の支援を受けた2つの臨床試験が、メタ解析に必要な形式(BMDの変化の平均値とSD)でデータを報告していなかったため、これら2つの臨床試験について必要なデータを同社に正式に要請し受領した。

 

<質の評価>

両著者が介入研究のためのDowns and Black品質尺度を用いて独自に評価

 

<解析>

・すべてのデータは平均値とSDでまとめ、Excelファイルに二重入力し、Rソフトウェアバージョン3.1.2とパッケージ “meta “を用いて解析

・BMDに対するデノスマブと対照療法の効果を、Forest plotとランダム効果モデルを用いて比較

・骨折、感染症、有害事象、重篤な有害事象の発生確率を、ランダム効果モデルを用いて、デノスマブと対照療法で比較

・出版バイアスの評価にはFunnel plotを用いた

・研究の異質性の評価にはI2統計量を用いた(25%、50%、75%は異質性が低い、中程度、高い)

・一次解析では、デノスマブとビスフォスフォネート療法を比較した3つの臨床試験に焦点を当てた。プラセボを対照群とした4つ目の試験を加えて、追加解析を行った。

 

<結果>

図1:フローチャート

95件が同定、88件の論文が除外、残りの7本の論文について、適格性を評価し、3つの論文は対照群またはプラセボ群の欠如により除外、論文は4つとなった

 

表 1:デノスマブによるGIOP治療のメタアナリシス対象試験の概要

メタ解析では、デノスマブとビスフォスフォネートに無作為に割り付けられた参加者のBMDの変化を比較した3つの研究21-23に焦点をあてた。

 

図2:デノスマブとビスフォスフォネート治療に無作為に割り付けられた被験者間の脊椎骨密度(BMD)の変化率。

デノスマブ投与群ではビスフォスフォネート投与群に比べて腰椎のBMDが大きく増加し(2.32%, 95% CI 1.73%-2.91%, P<0.0001)、研究の異質性は低かった(I2=0%)

 

図3:デノスマブ群とビスフォスフォネート群に無作為に割り付けられた被験者の股関節の総骨密度(BMD)の変化率。

デノスマブ投与群ではビスフォスフォネート投与群に比べ股関節BMDの増加が大きく(1.52%、95%CI 1.1%-1.94%、P<0.0001)、試験間の不均一性は低かった(I2 0%)

 

図4:デノスマブ群とビスフォスフォネート群に無作為に割り付けられた被験者の大腿骨骨密度(BMD)の変化率。

大腿骨頚部BMDの変化を測定した2つの研究21,22では、デノスマブ投与群とビスフォスフォネート投与群の間に差はなく(1.35%, 95% CI -1.59%-4.30%, P=0.37)、研究間で中程度の異質性(I2 46%)であった。

 

図5:デノスマブまたはビスフォスフォネート療法への無作為化による骨折の相対的リスク。

デノスマブとビスフォスフォネートに無作為に割り付けられた参加者の骨折発生率には差がなく(1.16%、95%CI 0.68%-1.98%、P=0.59)、3試験間の不均一性は低い(I2 0%)ことが示された。

 

図6:治療割り付けによる感染症の相対的リスク

デノスマブ治療またはビスフォスフォネート治療を受けた参加者の間で感染症の発生率に有意差は認められなかった(2.16%、95%CI 0.38%-12.34%、P=0.39)。しかし、3つの研究間で中程度の異質性が認められた(I2 66%)。

 

図 S6治療割り付け別の有害事象の相対リスク

有害事象はデノスマブ投与群とビスフォスフォネート投与群で同等であったが(2.23%, 95% CI 0.70%-7.08%, P=0.17),試験の異質性は高かった(I2 83%).

 

図 S8重篤な有害事象の発生率

デノスマブ投与群とビスフォスフォネート投与群で同等であり(1.11%、95% CI 0.42%-2.93%, P=0.83)、研究の異質性は低かった(I2 18%)。

 

[プラセボを対照群とした4番目の試験20を含むメタアナリシス]

腰椎および股関節のBMDの変化は、ビスフォスフォネートまたはプラセボに割り付けられた被験者と比較して、デノスマブに割り付けられた被験者で有意に高く、治療群間の骨折、感染、有害事象、重篤な有害事象の割合に有意差はなかった(図S10-S21)。

 

Table 2 ヘルスケアへの介入に関するランダム化および非ランダム化研究のためのダウンおよびブラック品質スコア

2つの研究が「良質」、2つの研究が「優質」であることが示された

 

<結果の解釈・メカニズム>

デノスマブによる治療は、ビスフォスフォネート療法またはプラセボと比較して、腰椎および股関節のBMDに有意に大きな増加をもたらした。骨折の発生率に差はなかったが、各試験で報告された骨折の総数が少なく、治療群間の骨折の差を検出するための検出力が不足していた。

デノスマブと対照群の間で感染症の発生頻度に差は認められなかった。また、有害事象および重篤な有害事象の発生率も、デノスマブ投与群と対照群との間で同様であった。

 

<Limitation>

本文記載

・メタ分析に含めるための基準を満たした無作為化対照試験がほとんどなかったため、オープンラベルの試験デザインを含めることになった。

・どの試験もデノスマブと比較群間の骨折の差を検出する検出力を有していなかった。

・すべての研究が12ヶ月という短い期間であったため、GIOPに対するデノスマブの長期的な有効性と安全性については、現時点では言及することができない。

 

<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>

閉経後骨粗鬆症のFREEDOM試験レベルの大規模の長期(3年)の研究がないため、骨折を減らすか、QoLにどう影響するかが不明である。よって、BPよりも優先的に使う根拠はない。ビスフォスフォネートやホルモン同化療法禁忌や副作用がある患者さん、コンプライアンスを確保しなければならない場合、その使用は推奨されるかもしれない。

 

<この論文の好ましい点>

メタ解析の結果を迅速に発表した。

 

 

2022/10/05、担当:柳井亮

 

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