Bimekizumab in patients with active psoriatic arthritis and previous inadequate response or intolerance to tumour necrosis factor-α inhibitors: a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 3 trial (BE COMPLETE)
Merola JF, et al. Lancet. 2022 Dec 5.
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<サマリー>
Bimekizumabは、IL-17FおよびIL-17Aを選択的に阻害するモノクローナル抗体である。Bimekizumab 投与によりTNFα阻害剤の効果が不十分または不耐性の関節症患者において、プラセボと比較して16週目の関節および皮膚の有効性アウトカムに優れた改善がみられた。
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P:乾癬性関節炎の患者
I:ビメキズマブ投与
C:プラセボ投与
O:関節・皮膚症状の改善
<背景>
乾癬性関節炎で特にTNFα阻害剤に対して十分な効果が得られない、あるいは忍容性の低い関節症患者は臨床的に注目されている。後続のTNFα阻害剤や異なる治療クラスへ変更した場合、治療効果は低くなることが知られている。IL-17AおよびIL-12/23阻害剤の効果は、TNFα阻害剤の治療で十分な効果が得られなかった患者や反応がなくなった患者では低いという研究結果もある。IL-17は乾癬疾患の病因に強く関与しており、Bimekizumabは、IL-17FおよびIL-17Aを選択的に阻害するモノクローナルIgG1抗体である。両方を阻害することにより、IL-17Aのみを阻害するよりも効果的に治療効果が得られる可能性があることを示唆している。TNFα阻害剤に効果不十分または不耐性の患者を対象にBimekizumabの有効性および安全性を並行して評価した。
<セッティング>
・11カ国(オーストラリア、カナダ、チェコ共和国、ドイツ、ハンガリー、イタリア、日本、ポーランド、ロシア、英国、米国)の病院、診療所、医院、研究センターなど92施設で実施。
・患者を2対1に無作為に割り付け、4週間ごとにBimekizumab 160mgまたはプラセボを皮下投与する。無作為化は、地域およびTNFα阻害剤の投与歴(1~2種類のTNFα阻害剤で効果不十分、またはTNFα阻害剤に対する不耐性)により層別化した。
<研究デザインの型>
多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験
<対象患者・組み入れ基準>
・クリーニングの少なくとも6カ月前から乾癬性関節炎の分類基準を満たす成人発症(18歳以上)の乾癬性関節炎患者
・ベースラインの圧痛関節数(TJC)が3以上、腫脹関節数(SJC)が3以上、少なくとも一つの活動性乾癬病変または乾癬の病歴
・治験担当医師の評価により乾癬性関節炎または乾癬に対して1剤または2剤のTNFα阻害剤による治療で十分な効果が得られなかった、または忍容性が低かった患者
・NSAIDs、経口ステロイド、安定した量のDMARDsは許可された。
<除外基準>
・TNFα阻害剤を除く、関節症性乾癬または乾癬の治療のための生物学的製剤に現在または過去に曝露されたことのある患者
・妊娠、感染症、悪性腫瘍
・乾癬以外の炎症性疾患 など
<方法>
ベースラインから16週目まで、4週間ごとに来院した。Bimekizumabとプラセボの注射は、ベースライン時およびその後4週間ごとに行われた。ビメキズマブは160mg/mLのビメキズマブを含む1mLプレフィルドシリンジで投与された。プラセボは0-9%塩化ナトリウム水溶液1mLプレフィルドシリンジで投与された。両剤とも腹部外側壁,大腿部,上腕部外側に皮下注射でローテーション投与した。
有効性および安全性の評価は、ベースライン時およびその後4週間ごとの各訪問時に行われ、すべての評価はマスクされた評価者により行われた。
<エンドポイント>
□主要評価項目
・16週目にACR基準で50%以上の奏効に達した患者の割合(ACR50)で、Bimekizumab群とプラセボ群を比較。
□副次的評価項目
・健康評価質問票(HAQ-DI)総合スコアのベースラインからの変化
・ベースライン時の体表面積(BSA)が3%以上の乾癬患者における乾癬面積・重症度指数(PASI90)の90%以上の改善達成患者の割合
・16週目には、ACR基準で20%以上の奏効を示した患者の割合(ACR20)、ACR基準で70%以上の奏効を示した患者の割合(ACR70)、ベースラインでBSA3%以上の乾癬を有する患者のサブセットにおけるPASI75%以上の奏効の患者の割合(PASI75)も評価。
□安全性
・治療上問題となる有害事象(TEAE)、治療上問題となる重篤な有害事象(SAE)、および治療中止に至ったTEAEの発生件数
・感染症、好中球減少、過敏症(アナフィラキシーを含む)、自殺念慮および行動、主要な有害心血管イベント、肝機能検査変化または酵素上昇、悪性腫瘍、炎症性腸疾患 などが事前に規定
<解析方法>
無作為に割り付けられたすべての試験参加者からなる無作為化セット(intention-to-treat集団)において、主要評価項目およびランク付けされた副次評価項目に加え、人口統計学およびベースラインの疾患特性を解析した。安全性の解析は、第0~16週にBimekizumabまたはプラセボを1回以上投与された患者を対象とした。治療、地域、およびTNFα阻害剤の使用歴(で調整したロジスティック回帰を用いて、これらのエンドポイントのオッズ比(OR)、CI、およびp値を作成した。連続的なアウトカムについては,multiple imputation を用いて欠損データをインプットした。
<result>
□対象患者のフローチャート(Figure1)
2019年3月28日から2022年2月14日の間に、556名の患者がスクリーニングされ、400名の患者がランダムに割り付けられ、267名がBimekizumab 160mgを4週間ごとに皮下投与、133名がプラセボを4週間ごとに皮下投与された。合計で388名(97%)の患者が16週目まで試験を完了した。
□ベースラインの患者特性(Table1)
・人口統計学的特徴と疾患特性は治療群間でバランスがとれており、活動性の高い中等度から重度の乾癬性関節炎患者であった。関節炎と診断されてからの平均期間は9-5年(SD 9-3)。400人中264人(66%)は、少なくとも3%のBSAに影響を及ぼす乾癬を有し、このサブグループの平均PASIスコアは9-6(SD 8-4)であった。
・306名(77%)は1種類のTNFα阻害剤で効果不十分、45名(11%)は2種類のTNFα阻害剤で効果不十分、49名(12%)はTNFα阻害剤に対して不耐性を示した。202名(51%)の患者がベースライン時に1種類以上のDMARDsを使用しており、170名(43%)がMTX投与を受けていた。
□アウトカム(Figure2,Table2)
・Bimekizumab群では16週目に主要評価項目であるACR50を達成した患者の割合が高かった(267例中116例[43%] vs 133例中9例[7%]、p<0-0001)
・Bimekizumab群では、16週目にACR20およびACR70に到達した患者の割合が数値的に高かった(ACR20:267例中179例[67%] vs 133例中21例[16%]、ACR70:267例中71例[27%] vs 133例中1例[1%])。
・Bimekizumab単回投与後4週目の時点で、ACR20、ACR50、ACR70の奏効率はプラセボ群よりBimekizumab群で数値的に高かった(ACR20:267人中114人[43%]対133人中9人[7%]、ACR50:267人中43人[16%]対133人中2人[2%)、ACR70:267人中15人[6%]対133人中0%)。
・皮膚症状:ベースライン時にBSAが3%以上の乾癬患者において、16週目のPASI100の評価はBimekizumab群176例中103例(59%)に対してプラセボ群88例中4例(5%)であった。
・16週目において、Bimekizumab群はプラセボ群と比較して、HAQ-DIおよびSF-36 PCSスコアに統計的に有意な改善を示した。
□安全性(Table3)
・TEAE:Bimekizumab群267例中108例(40%)、プラセボ群132例中44例(33%)に少なくとも1つのTEAEが認められた。
・SAE:Bimekizumab群267例中5例(2%)(腸閉塞、気管支炎、COVID-19肺炎、関節損傷、中毒性脳症が各1例)、プラセボ群では0例であった。
・中止症例:Bimekizumab群267例中2例(1%)(口内炎、口腔カンジダ症各1例)、プラセボ群では0例。死亡例無し。
・注射部位反応の発生率:Bimekizumab群では267例中3例(1%)に、プラセボ群0例。
・悪性腫瘍は1例(プラセボ群の基底細胞がん)であり、主要な有害心血管イベント、ぶどう膜炎、炎症性腸疾患、自殺念慮および自殺行動の報告例はなかった。
<Discussion>
・まとめ
本試験において、BimekizumabはTNFα阻害剤に対して不十分な反応または不耐性を示す乾癬性関節炎の患者に対して、プラセボと比較して優れた効果を示した。16週目の主要評価項目およびすべての副次評価項目で関節・皮膚症状の改善を示した。
・Bimekizumabの治療効果は迅速で、関節・皮膚症状ともに4週目という早い段階でプラセボと比較して高い反応性あり、日常生活における症状緩和という意味でも価値があると思われる。
・TNFα阻害剤の効果が不十分あるいは忍容性のない患者集団におけるBimekizumabの有効性は、TNFα阻害剤やIL-17Aのみを標的とする他の治療では抑制できないIL-17F依存性のシグナルが疾患活動性に影響するという考え方ができ、さらなる検証が必要となると思われる。
・安全性
軽度から中等度の真菌感染症がBimekizumab群ではプラセボ群より多く発生した。
重篤な真菌感染症や全身性真菌感染症はなく、感染症の再発もまれであった。
炎症性腸疾患やぶどう膜炎の症例は報告なかった。注射部位反応の発生率も低く、忍容性に優れていた。
<Limitation>
・活動性の併存疾患を有する患者を含んでいないため実臨床での適用性が低い可能性がある。
・本試験では、Bimekizumabの有効性および安全性を他の乾癬性関節炎の治療薬と直接比較していない。
<この論文の好ましい点、どのようにして臨床に活かすか>
・主要評価項目、副次的評価項目のどちらでも優位性が示されている。
・今後他の生物学的製剤との比較試験を行い非劣性や優位性が確認できれば治療抵抗性の乾癬性関節炎の治療選択肢が増える可能性がある。