Effectiveness and Safety of Treatments to Prevent Fractures in People With Low Bone Mass or Primary Osteoporosis/ A Living Systematic Review and Network Meta-analysis for the American College of Physicians
Ayers C, Kansagara D, Lazur B, Fu R, Kwon A, Harrod C. Ann Intern Med. 2023;10.7326/M22-0684. doi:10.7326/M22-0684
まとめ 低骨量または原発性骨粗鬆症患者における骨折予防治療の有効性と安全性を評価したLiving SR、NMA。2014年から2022年2月まで実施。ビスフォスフォネート、デノスマブ,アバロパラチド,テリパラチド,ロモソズマブ→アレンドロネートは,閉経後女性骨粗鬆症患者の臨床的骨折を減少させる.アバロパラチドとテリパラチドはWAEを増加。ビスフォスフォネートの長期使用はAFFとONJのリスクを増加させるが、発生はまれ。
プロトコール 本レビューは、米国内科学会(ACP)の臨床ガイドライン委員会(CGC)による骨粗鬆症の治療に関する臨床実践ガイドラインの更新のために実施された。PROSPEROに登録され(CRD42021236220)、技術専門家委員会(TEP)がプロトコルと解析に関与。
検索 Ovid MEDLINE、Ovid Evidence Based Medicine (EBM)、Cochrane CENTRAL、Cochrane Database of Systematic Reviews、2014年-2022年2月のClinicalTrials.gov
検索式 司書と協議し作成、Peer Review of Search Strategiesガイドラインを用いて別の司書がピアレビューを行った。
対象 二次生骨粗鬆症(例:ステロイド性)ではない低骨量または骨粗鬆症の女性または男性 。
薬剤 ビスフォスフォネート(アレンドロネート、イバンドロネート、リセドロネート、ゾレドロネート)、副甲状腺ホルモン(PTH、アバロパラチド、テリパラチド)、RANK-L(デノスマブ)、(SERM、ラロキシフェンとバゼドキセン)、スクレロスチン阻害剤(ロモソズマブ)
骨折 RCT で、追跡期間が 12 ヵ月以上のものを対象。
有害事象(AE) RCT/観察研究:試験で報告された重篤な有害事象(SAE)及び有害事象による中止(WAE)、顎骨壊死(ONJ)、非定型大腿骨骨折(AFF)及び心房細動(AF)などを対象
デザイン 英語で報告された、1つ以上の薬剤介入を薬剤同士またはプラセボと比較した無作為化対照試験(RCT)。症例対照研究とコホート研究:大規模で(n > = 1000)、ONJ、AFFs、または AF を評価するものであれば対象。
文献の選択 独立した2人のレビュワーが判断し、意見の相違は3人目が解決した。
データ抽出と質評価 1名のレビュワーが抽出し、2名目のレビュワーが正確性を確認。2名のレビュワーが、RCTはCochrane RoB 2.0、コホートとケースコントロールはSIGN(Scottish Intercollegiate Guidelines Network)チェックリストを用いて独立評価し、意見の相違は第3のレビュワーが解決。
データ統合と解析 ペアワイズメタ解析(RCTからの全アウトカムと観察研究からの特定の有害性)およびNMA(RCTのみ)を用いて定量的統合を実施。すべてのアウトカムは二値、リスク比(RR)とリスク差を効果指標とした。その他のアウトカムはすべてナラティブに統合。ペアワイズメタ解析では、プロファイル尤度法(profile likelihood method)に基づくランダム効果モデルを用いて、各アウトカムを組み合わせた。治療法および試験期間(12~36カ月未満または36カ月以上)で解析を層別化した。統計的異質性の評価はCochran χ2およびI2統計量を用いた。閉経後女性、骨粗鬆症の男性、骨量の少ない人を分けて解析。NMAについては、直接推定値と間接推定値の比較、ノード分割法(node-splitting method)、inconsistency modelによるoverall testにより、ネットワークの一貫性を検証した。NMAを骨粗鬆症の閉経後女性のみに限定したのは、transitivityの仮定の妥当性を向上させるため(NMAの前提としては介入の効果を変化させる因子が研究間で差がないこと、すなわち移行性transitivityが成立することが必要。)。治療ネットワークにおいてclosed loopsを形成し、consistency(一貫性)の仮定を検証するために利用できるデータは限られていたが、inconsistencyの証拠はなかった。そこで、consistencyモデルを用いて直接・間接エビデンスを結合する多変量ランダム効果NMAを実施した。
統計ソフト 解析は、Stata/SE 16.1 (StataCorp)を用いて実施。
GRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation) 骨折と害のアウトカムにエビデンスの確かさ(CoE)の評価を、ペアワイズ(直接)推定値とNMA推定値に割り振った。効果量を解釈する際、ペアワイズ推定値のCoEが高い場合を除き、NMA推定値を優先した。このシステマティックレビューは、定期的な文献検索と新しい研究の出現に伴う更新により、リビングレビューとして維持される予定。
結果 5143件の引用文献をスクリーニングし、RCT34件(16-115)、観察研究36件。ほとんどの研究は、低BMD Tスコア及び/又は脆弱性骨折の既往により骨粗鬆症の診断基準を満たした閉経後女性を対象としたもの。
表1 骨粗鬆症閉経後女性における重要なアウトカムまとめ(試験期間および比較対象別)に結果のまとめあり。以下要点のみ。
Hip
プラセボと比較して、ビスフォスフォネートは24ヶ月間(RR, 0.65 [95% CI, 0.43 to 0.97]; 中程度のCoE)、36~48ヶ月間(RR, 0.64 [CI, 0.50 to 0.82]; 高いCoE)股関節骨折のリスクを減少させた。デノスマブ36カ月投与でも股関節骨折リスクは低下したが(RR, 0.61 [CI, 0.37 to 0.98]; 中等度CoE)、テリパラチド24カ月投与とSERMs36カ月投与では低下しなかった(低CoE、)。 年齢と骨折歴により骨折リスクが非常に高い女性において、ロモソズマブとアレンドロネートの順次使用は、アレンドロネート単独使用よりも24ヶ月間の股関節骨折リスク低減効果が高かった(RR, 0.62 [CI, 0.42 to 0.91]; 中等度 CoE)
Osteonecrosis of the Jaw
ビスフォスフォネートをプラセボまたは未投与者と比較した 14 件の研究の中で、ビスフォスフォネート使用による ONJ のリスク増加に関する CoE は低く、特に 2~3 年間の曝露後では、AFF と同様に ONJ 発生はまれであることがわかった(未調整発生率、ビスフォスフォネート使用者の 0.01%~0.3% )。注目すべきは、十分なデータのある5つの観察研究(116、124、133、140、144)の調整メタアナリシスで、ビスフォスフォネートに暴露された人は、暴露されていない人に比べてONJのリスクが3倍以上有意に高いことである(調整済みRR、3.37 [CI, 1.91~5.24] )。韓国で行われた1つの追加的な注釈研究では、ビスフォスフォネートの使用期間が2年以上の場合、1年未満の場合と比較して同様に高いオッズ(調整オッズ比、3.26 [CI, 1.23~8.62] )が認められたが、1~2年の暴露者では差がなかった。
限界
・一般化可能性:ほとんどの研究は、骨粗鬆症を有する閉経後の白人またはアジア系女性集団を対象としており、他の人種および民族グループ、骨量の少ない人々、および男性について分析した研究はほとんどない。
・ONJや顎骨壊死のエビデンスの不足している。
学んだ事
・ガイドラインの推奨にNMAの結果が採用される流れである
・効果量を解釈する際、ペアワイズ推定値の方がCoEが高い場合を除き、NMA推定値を優先している
・ロモソズマブ →アレンドロネートの有効性がBPよりも高い可能性がある
・(考察で記載)ロモソズマブ はMACE増加の可能性がありFDAの勧告がある
担当:柳井 亮