Relationship of systemic type I interferon activity with clinical phenotypes, disease activity, and damage accrual in systemic lupus erythematosus in treatment-naive patients: a retrospective longitudinal analysis
Kazusa Miyachi, Taro Iwamoto, Shotaro Kojima, Tomoaki Ida, Junya Suzuki, Takuya Yamamoto, Norihiro Mimura, Takahiro Sugiyama, Shigeru Tanaka, Shunsuke Furuta, Kei Ikeda, Kotaro Suzuki, Timothy B. Niewold & Hiroshi Nakajima
Arthritis Research & Therapy volume 25, Article number: 26 (2023)
「治療歴のないSLE患者における全身性I型インターフェロン(IFN)活性と臨床表現型、疾患活動性、および臓器障害発生との関係:後ろ向き縦断的分析」
サマリー:治療歴のないSLE患者において血清IFN活性は特徴的に高く、発熱、血液異常、粘膜皮膚症状との関連がみられた。ベースラインでの血清IFN活性は疾患活動性と相関し、導入療法および維持療法後の疾患活動性の低下に伴って低下した。
P:初発のリウマチ膠原病疾患の患者(および健常人)
E:SLE患者
C:SLE以外の疾患の患者(および健常人)
O:血清IFN活性
→副次的項目としてSLEの疾患活動性と血清IFN活性の関連を調査した。
【introduction】
・I型インターフェロン(IFN)がSLEの病因に重要な役割を果たしていることを示唆する証拠が蓄積されている。
・IFN受容体に対するモノクローナル抗体であるアニフロルマブは、中等度から重度のSLEに有効であることが示されている。
→しかし、先行研究の多くは横断研究であり、既に治療介入がなされているSLE患者を対象としている。
→初発SLE患者を対象とした縦断研究を行い、また血清IFN活性と寛解導入療法・維持療法後の臓器障害の関連についても調査した。
【patients and methods】
<研究デザインおよび患者対象>
(おそらく千葉大学での単施設あるいは少数の施設での)治療前の血清サンプルを取得している、ACR-1997の基準を満たした初発SLE患者で、寛解導入療法の直前(第1ポイント)と維持療法後(第2ポイント)で臨床データを収集した。追跡期間の中央値は9.6年。
比較対象として、関節リウマチ(RA)20人、全身性硬化症(SSc)21人、顕微鏡的多発血管炎(MPA)18人と健常人33人でも治療前の血清サンプルを取得した。
<データ収集>
・発症年齢、性別、観察期間などの基礎データ
・SLEの初期臓器症状:ACR-1997とACR/EULAR-2019の双方で評価された。
・疾患活動性:SLEDAI-2K
・抗核抗体、抗ds-DNA抗体、抗Ro/La抗体、抗U1-RNP抗体、抗Sm抗体、ループスアンチコアグラント、および抗カルジオリピン抗体
・ループス腎炎:0.5g/24時間以上のタンパク尿、またはACR/EULAR-2019の腎ドメインに従い、生検によって証明されたもの サブタイプについては腎生検レビューで確認した。
・寛解導入および維持に使用された薬物の情報
・臓器障害:SDI
・疾患フレア:SELENA SLEDAI
・血清IFN活性はWISH上皮細胞株細胞(WISH細胞、ATCC #CCL-25)を用いたバイオアッセイで測定した。
患者の血清を6時間インキュベートさせ、誘導されたIIG(IFIT1、MX1、PKR)の発現レベルを逆転写PCRで測定し、ハウスキーピング遺伝子GAPDHとの相対量をもとにスコアリングした。
<統計手法>
主成分分析(PCA)はprcompコマンドおよびfactoextra(バージョン1.0.7)を用いて実施した。
連続変数は中央値と四分位範囲(IQR)で表し、Mann-Whitney U検定で比較した。
カテゴリ変数は、数値とパーセンテージで記述し、χ二乗検定またはFisherの正確確率検定で比較した。
マルチグループ比較は、Bonferroni補正を伴うKruskal-Wallis検定によって行われた。
相関分析は、Spearmanの順位相関または線形回帰のいずれかによって行われた。
臓器損傷発生の独立した要因を検出するために、ロジスティック回帰を実施した。
有意な値として0.05<pを採用した。
【結果】
・血清IFN活性はSLE患者において非常に高い
SLE患者は有意に高い血清IFN活性を示し(中央値97.6(IQR22.8-173.3)、n = 40、p < 0.001)
RA、SSc、MPAではそれぞれ0.0 (0.0–0.1)、0.0 (0.0–0.3)、0.0 (0.0–0.0)であった。(Fig. 1)
・血清IFN活性とACR/EULAR-2019合計スコアは正の相関をもつ
→各ドメインの中で、どれが血清IFN活性と関連するかを主成分分析(PCA)により検討した。
PCA:多数の次元をもつデータを少ない次元のデータにまとめる。分散がなるべく大きくなるように仮の次元PC1とPC2を定め、新たな変数をもとに他の変数との関連を調べる。
本研究では血清IFN活性はPC1と関連せずPC2と関連:同方向のベクトルを示すドメインとして
発熱、血液異常、粘膜皮膚、筋骨格、抗リン脂質抗体、補体、SLE特異的抗体ドメインが見出された。(Fig. 2B)
・血清IFN活性とACR/EULAR-2019の各ドメインの関連を調査すると
発熱、口腔潰瘍、急性皮膚ループス、白血球減少で血清IFN活性が有意に高く、胸膜炎や心膜炎では有意に低かった。腎領域ではサブセットも含めて有意差はみられなかった。
・血清IFN活性と疾患活動性の関連
血清IFN活性とSLEDAI-2Kスコアは、弱く正の相関あり(r = 0.31、p = 0.049)
IFN活性の低下は、導入および維持療法後のSLEDAI-2Kスコアの改善と有意に相関していた(R2= 0.112, p = 0.034)
・血清IFN活性と臓器損傷の関連
SDI=0と1以上での単変量解析では関連あり しかしロジスティック回帰分析では有意差つかず。
IVCY使用と臓器障害の関連は検出された。
【discussion】
・血清IFN測定は難しく、これまでは治療介入がなされた患者で横断的に調べられていたのみであった。
・以前の研究では、発熱、血球減少、急性皮膚ループスなどの諸症状と血清IFN活性の関連は示されていなかった。(治療介入後の患者を対象としていたため、有意な差を生じなかった可能性)
・本研究では、I型IFNに極めて感度の高いWISH細胞を用いたバイオイムノアッセイを行った。
→SLEにおけるⅠ型IFNの重要性については既知であるものの、疾患活動性・臓器障害などの諸要素についても血清IFN活性と関連することが改めて示された形となった。
<Limitation>
サンプルサイズが比較的小さいこと
追跡期間(中央値9.6年)は、臓器障害の発生に影響を与えた可能性のある疾患活動性の変動をとらえるには十分でなかった可能性がある。
HCQの使用率が低く、直近の治療戦略が十分に反映されていない。(日本では2015年にHCQが承認されたが、本研究ではHCQ承認以前の症例が多いようである。)
<どのように活かすか>
疾患活動性のモニタリングとしての血清IFN活性の測定には議論の余地があるが、寛解導入前の血清IFN活性測定は疾患活動性・臓器予後予測につながる可能性がある。
発熱・血液異常・急性皮膚ループスなどのドメインは、疾患活動性・臓器予後予測のサロゲートマーカーとなりうるかもしれない?
<論文を読んで難しかった点>
主成分分析(PCA)の手法については勉強しながら解釈したので、十分な理解ができていないかもしれない。
担当:井上 良