Pregnancy outcome predictors in antiphospholipid syndrome : A systematic review and meta-analysis
Isabel Johanna Walter et al.
抗リン脂質抗体症候群における妊娠転帰の予測因子、系統的レビュー、メタ解析
Autoimmunity Reviews volume20, issue10, October 2021
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<サマリー>
APSにおける妊娠転帰予測因子の解析
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<セッティング>
2022年6月13日までのPubMedとEmbaseで検出された文献から2人のレヴュアーにより抽出
2006年の札幌基準(シドニー改変)を満たすAPS
サンプルサイズ20未満・多胎妊娠のみ・複合要因をアウトカムとしたものを除く
上記を満たした27の文献
<研究デザインの型>
系統的レビューとメタ解析
<Population、およびその定義>
2人のレヴュアーにより盲検化された標準的な方法で研究の選択した
リスクの解析、バイアスの評価を行い、一致しなかったものは第3者に依頼した
CHARMS-PF チェックリストに基づいてデータ抽出シートが作成された
カテゴリ予測因子のイベント率は単変量オッズ比で抽出した
連続予測因子は標準偏差または中央値と四分位範囲の平均として抽出した
バイアス評価のリスクは、QUIPSを用いた
<解析方法>
メタアナリシスは、少なくとも2つの研究が独立して同じ予測因子と結果のオッズ比または分割表を報告している場合に用いた
分割表にゼロセルが含まれる場合は、Haldane-Anscombe補正を用いた
95%予測区間の算出には、REMLを用いたランダム効果モデルによるメタアナリシスを用いた
研究間の異質性の量は、I2(0-100%)を用いたが、コクランハンドブックによる、I2≧75%以上は異質性が高いため、75%以下の場合のみ選出した
異質性の原因検索のため、APS診断基準・SLEの合併・LMWH治療で層別化したサブグループ分析をした
メタアナリシスに10以上の研究が含まれる場合、出版バイアスはファネルプロットの目視検査を連続アウトカムにはEgger検定を、二項アウトカムにはHarbord検定を用いた
<結果>
流産の定義は一定でないため除外したリスクファクターをプールしないことを選択した
抗カルジオリピンIgM/IgGが個別に挙げられているものはIgGを選択した
- 生児出生
動静脈・小血管の血栓症の既往、APS関連抗体2種陽性、抗体3種陽性は低下させたが、自己免疫疾患の合併、LA陽性、aCL陽性、AB2GP1陽性、抗核抗体陽性はいずれも潜在的なリスクと同定した
胎児死亡や周産期死亡率は定義が統一されていないため同定しなかった
- 子癇前症
抗体3種陽性・LA陽性はリスクとされたが、動静脈・小血管の血栓症の既往、AB2GP1陽性は潜在的なリスクと同定した
他の要因は不均一性が高く同定しなかった
- 在胎不当過少児/胎児発育不全
胎児発育不全については定義が曖昧なためまとめた
動静脈・小血管の血栓症の既往、APS関連抗体2種陽性、抗体3種陽性、LA陽性はリスクと同定された
aCL陽性、IgM AB2GP1陽性は有意差がなかった
- 早産
APS関連抗体2種陽性、、LA陽性はリスクと同定された
動静脈・小血管の血栓症の既往に関連はなかった
- 新生児死亡率
動静脈・小血管の血栓症の既往に関連はあったが、抗体2種陽性と1種陽性に差はなかった
- 血栓イベント
動静脈・小血管の血栓症の既往に関連はあった
SLEの合併の有無、LMWHの使用、APS診断基準によるサブグループ解析は、各メタ分析の研究が少なく検討できなかった
プールされた解析のいずれにも10以上の研究が含まれておらず、報告バイアスの存在は評価できなかった
バイアスについては、ドメイン1:選択バイアス、ドメイン5:報告バイアス、ドメイン6:その他(統計分析)で特に高いと考えられる
ドメイン1:組入基準と除外基準が明確に説明されていなかった
ドメイン5・6:イベント発生率が報告されているか、単変量解析が実施されていたが、他の予測因子を調整したものは以前の文献に基づいての選択ではなく、単変数分析によって特定し、統計的に有意な予測因子を保持することができていなかった
<結果の解釈・メカニズム>
血栓症の既往、抗体2種陽性、3種陽性、および LA陽性は、妊娠の有害転帰の予測因子として特定された
血栓症の既往と3種陽性は産科合併症のリスクが最も高く、ORは2から6であった
LA陽性は過去には関連性がないとされた報告もある
自己免疫疾患の合併は関連があると報告されたものもあるが、本研究では有意なものではなかった
産科疾患の罹患率は主に胎盤の炎症、栄養芽層の増殖と機能の阻害、および補体の活性化に由来するとされ、免疫細胞と補体の活性化も、血栓性APSには重要な役割を果たしていると考えられる
胎盤梗塞はAPSでより引き起こされやすいが、胎児ロスはその限りではない
らせん動脈や胎盤血栓症が全てのAPSで認められたわけでないことからも、血栓症のみが産科合併症の誘因ではないと思われる
APSの臨床研究に対する標準的なアウトカムの設定がなされていないことがわかった
<Limitation>
メタ分析の一部は、不均一性があったが、含まれる研究の数が限られており、サブグループ解析を用いて各研究の違いを究明できなかったため、不均一性を伴う結果の解釈には注意が必要である
メタ解析のいずれも10以上の研究がなく、報告バイアスの存在が不明
<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
血栓症の既往や複数の抗体陽性の場合、標準治療を遂行する
CROWNやCOMETはアウトカムの設定に寄与する可能性がある
担当:徳永剛広