ピロリン酸カルシウム沈着の画像における X線撮影の信頼性精度          【Journal Club 20230809】

Reliability and Diagnostic Accuracy of Radiography for the Diagnosis of Calcium Pyrophosphate Deposition: Performance of the Novel Definitions Developed by an International Multidisciplinary Working Group

ピロリン酸カルシウム沈着の画像における X線撮影の信頼性精度:国際的な学際的作業グループによって開発された新しい定義

著者(Silvia Sirotti 1, Fabio Becce 2, Luca M Sconfienza 3, Lene Terslev 4, Esperanza Naredo 5, Pascal Zufferey 6, Carlos Pineda 7, Marwin Gutierrez 7, Antonella Adinolfi 8, Teodora Serban 9, Daryl MacCarter 10, Gael Mouterde 11, Anna Zanetti 12, Anna Scanu 13, Ingrid Möller 14, Ulrike Novo-Rivas 15, Raquel Largo 16, Piercarlo Sarzi-Puttini 1, Abhishek Abhishek 17, Hyon K Choi 18, Nicola Dalbeth 19, Tristan Pascart 20, Sara K Tedeschi 21, Maria-Antonietta D’Agostino 22, Annamaria Iagnocco 23, Helen I Keen 24, Carlo A Scirè 25, Georgios Filippou 26)
出典:Arthritis Rheumatol . 2023 Apr;75(4):630-638.

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<サマリー>
ピロリン酸カルシウム沈着を特定するために学際的ワーキンググループにより開発された放射線画像的定義を用いることで、他のカルシウム含有結晶沈着ではなく、CPPDの沈着であることを特異的に検出できる可能性がある

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P:手術適応の重症変形性膝関節症患者
I(E):膝関節レントゲン検査にて特異的所見がある
C:膝関節レントゲン検査にて特異的所見がない
O:術後膝関節検体におけるCPPD沈着の有無

<背景>
ピロリン酸カルシウム沈着の証明は、滑液分析によってなされる。近年、Dual Energy CTや超音波検査などがCPPD沈着証明のモダリティとしてピックアップされることが多いが、今回簡便かつコストの低い「「X線撮影」」におけるCPPD沈着の精度について、実際の手術検体による評価により検討した論文である。

 <セッティング>
・2019年1月〜2019年9月:米国、イタリア、スペイン、スイス、メキシコ、ルーマニア、フランス

<研究デザインの型:RCT、横断研究、前向きコホートなど>
・OMERACT超音波ワーキンググループに含まれる多施設における横断研究

<Population、およびその定義>
・全関節置換術が必要とされる変形性膝関節症67例が登録されたが、組織検体が得られないことから試験中に16人が除外され、全体で51人が評価された。
・集団の特徴として、65%が女性(44人)、平均年齢71±8歳
・除外基準:他の炎症性関節疾患の既往にある患者。試験に同意が得られない患者。

<主な要因、および、その定義>
・手術6ヶ月以内に両膝のX線撮影[前面及び側面、荷重時及び非荷重時]
・確認部位:内側半月板、外側半月板、脛骨大腿軟骨部位
・CPPD沈着に特徴的な所見とは、ACR/EULAR CPPD分類基準ワーキンググループのメンバー(リウマチ専門医+筋骨格系放射線科医1名)及び外部筋骨格系放射線科5名により定義された、BCP結晶沈着で見られる「より密で貨幣状放射線不透過沈着物」ではなく、CPPD沈着が疑われる、線維軟骨/硝子軟骨・滑膜/関節包・腱/腱付着部に一致した「線状または点状の不透過沈着物」で定義された。

<Control、および、その定義>
X線所見で上記所見がない群

<主なアウトカム、および、その定義>
・実際の結晶沈着の有無は膝関節の組織学検査で証明(サンプルはイタリアに送られるか、もしくはその施設で下記の通り分析)
・半月板もしくは大腿骨顆をNSで血液除去後、-80℃冷凍保存、各検体を10個のセグメントに切断後、エタノール処理、補正偏光顕微鏡でCPPD結晶の証明とした

<交絡因子、および、その定義>
・評価集団が重症OA

<解析方法>
・筋骨格筋系放射線科医2名、リウマチ科医師2名が評価者となり、
・X線所見をCPPD沈着所見の有無を「陽性」・「陰性」で評価
・評価者は、一度目の評価の3週間後に再評価して結果とした
・意見が一致しない場合には、2人の放射線科医により議論され合意決定された(Table3)
・検者間の結果のカテゴリー変数としての一致率(reproducibility)を“κ係数”で評価、一致率の強度はLandis[ランディス]及びKoch[コッホ]の方法論の通りに評価した(Table2)
※0.01~0.20 の範囲のカッパ値はなしまたはわずかな一致、0.21~0.40はまあまあ、0.41~0.60は中程度、0.61~0.80はかなりの一致、0.81~1.00はほぼ完全な一致
・各評価部位における感度、特異度、陽性的中率[精度]、陰性的中率を算出

<結果>
・半月板、大腿四頭筋、膝蓋腱の一致率は十分であるが、軟骨上の一致率はそれらに比べると低いものであった(κ=0.59)。
・放射線科内での一致率は高く、リウマチ専門医科内で中程度であった。(Table2)
・部位別の精度は、内側半月板で67%外側半月板で69%硝子軟骨で73%totalで73%であった。部位に応じた感度幅は32~48%[感度54%]、特異度幅は93~100%[特異度92%]であった。また全体の陽性的中率88%、陰性的中率66%であった。(Table4)

<結果の解釈・メカニズム>
・上記のκ値から、半月板における評価は、読影者の経験に関係なく一致率が高く簡便な評価部位であるが、硝子軟骨周囲の評価は一致しにくい傾向があった
・本研究の感度特異度算出から、特徴的なX線所見を有する場合CPPD沈着を指摘できるものの、ないからと言ってX線検査でCPPD沈着を除外することはできない
・上記感度が低かったが、背景が重症OAであり、特に膝関節軟骨部位などの沈着の同定が困難であり検査に影響した可能性がある(Figure.3が例)

<Limitation>
・関節包・滑膜・腱の検体回収はなく、評価は半月板と硝子軟骨部位のみの評価である
・BCP結晶の実際の検出は含めていない(Xp偽陽性の理由がBCPだったかもしれないが所見そのもののCPPDの感度特異度には影響しないと考えられる)
・疾患背景がOAに限られている

<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
・感度が十分でないことから、結晶の存在の証明にはその他のモダリティの評価も合わせて重要であるが、X線の利点として①安価②検者間誤差が超音波など手技に影響されるものより少ない③異所性石灰化のみでなく、関節全体の骨病変なども同時評価できる
かつ、今回の研究でCPPD沈着を示唆する特異度が高い検査となることが示唆された

<この論文の好ましい点>
・X線の所見とCPPD沈着関連の診断性能を論じた数少ない論文
・OutcomeのCPPD沈着の有無の評価として術後検体を用いている点

担当:清水国香

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