重症市中肺炎へのヒドロコルチゾンの投与       【Journal Club 20230823】

Hydrocortisone in Severe Community-Acquired Pneumonia
重症市中肺炎へのヒドロコルチゾンの投与

著者:Pierre-François Dequin, M.D., Ph.D., Ferhat Meziani, M.D., Ph.D., Jean-Pierre Quenot, M.D., Ph.D., Toufik Kamel, M.D., et al.,
引用文献:N Engl J Med 2023; 388:1931-1941

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<サマリー>
市中肺炎に対するステロイド投与のStudyはしばしば報告されている。
ICU管理を要する重症CAPを対象とし、hydrocortisone vs placebo に割り付けた二重盲検RCTを施行した。Hydrocrotisone群で28日死亡率は低下し、昇圧薬未使用群の昇圧薬開始に関しても有意に低下した。
重症CAPではステロイド投与により予後改善が期待できるかもしれない。

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P:ICU管理が必要なCAP症例
I:hydrocortisone
C:placebo
O:28日死亡率

 <セッティング>
フランスのClinical Research in Intensive Care and Sepsis–Trial Group for Global Evalu- ation and Research in Sepsis (CRICS-TriGGERSep) Networkに参加する31施設のデータから18歳以上のICUに入室した重症市中肺炎の患者を対象とした。

<研究デザインの型:RCT、横断研究、前向きコホートなど>
Double blind randomized controlled study

<Population、およびその定義>
重症例の定義は以下の1つ以上を満たす:
 人工呼吸器管理(PEEP ≥5cmH2O)
 HFNCによる酸素投与: FiO2 ≥50%, P/F <300
 マスクによる酸素投与: P/F <300
 PSI ≥130, Group Vに分類されたCAP
・除外項目: 気管挿管を希望しない患者, インフルエンザ肺炎, 敗血症性ショック症例
・2015年10月28日から2020年3月11日までの800の患者が組み入れられた
・Hydrocortisoneは200mg/d, 4-8日継続し, その後減量
 投与期間は臨床的改善の有無で決められた
 合計8-14日間投与

<主なアウトカム、および、その定義>
Primary outcome:28日死亡率
Secondory outcome:90日死亡、ICU滞在期間、ベースライン時に人工呼吸を受けていなかった患者におけるNIVまたは気管内挿管、ベースライン時にNIVを受けていた患者における気管内挿管、28日目までの昇圧薬の開始、28日目までの人工呼吸器非使用日数および昇圧薬非使用日数、7日目までのP/F比の変化、、SOFA、36項目で測定した90日目までのQO L。
安全性の基準には、28日目までの二次感染や消化管出血、7日目までの1日のインスリン投与量、7日目までの体重増加などが含まれた。

<結果>
患者集団 Table1
 平均年齢67歳 COPD,喘息、糖尿病、免疫抑制に有意差なし
 N=800で死亡率に有意差が出たため中止した。
Primary outcome)
・28日死亡率は, Hydrocortisone投与群では6.2%[3.9-8.6]

・Placebo群では11.9%[8.7-15.1], AD -5.6%[-9.6~-1.7]と有意にHydrocortisone群で低下する

副次的項目)
・人工呼吸器管理がされていなかった患者群では,その後呼吸器管理となったのは18.0% vs 29.5%, HR 0.59[0.40-0.86]
・昇圧薬未使用群では, その後昇圧薬を使用したのは
 15.3% vs 25%. HR 0.59[0.43-0.82]と, これらも有意にHydrocortisone群で重症化リスクの低下が期待できる.
安全基準)
・消化管出血リスクや感染症リスクは両者で有意差なし
・インスリン使用量はステロイド投与群で増加する

<結果の解釈・メカニズム>
・これまでも臨床的な改善効果などは認められていたものの, どのような患者群で投与すべきかが明確ではない問題点があった
 今回のような組み入れ基準においては、少なくとも28日死亡を改善させうる可能性がある。

<Limitation>
・対照群で観察された死亡率11.9%は予想(27%)より低く、これは予想より重症度が低かったことを示しているのかもしれない。
・微生物学的調査は義務づけられておらず、795例中357例(44.9%)では病原体が分離されなかった。
・免疫不全患者の割合が少なく、このような集団では結果を慎重に適用すべきである。
・グルココルチコイドによる高血糖の可逆性を評価していない。同様に、グルココルチコイドの潜在的な神経心理学的および神経筋学的副作用についても特に評価していない。

<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
免疫不全の背景や、長期的副作用を十分に考慮したうえで、重症市中肺炎に対するヒドロコルチゾンを考慮していくプラクティスを適応させて良い可能性がある。

<この論文の好ましい点>
 患者数が多く、および有意差を示せた平ということ

<この論文にて理解できなかった点>
・併存疾患との関連性についてより層別化した議論が欲しい
・ステロイドの長期予後への影響までの考慮は望ましい。

担当:鷲澤恭平

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