関節リウマチ患者におけるインターロイキン6、インターロイキン17、疾患関連因子および背景因子とうつ病との関連       【Journal Club 20230830】

Interleukin 6, interleukin 17, disease-related and contextual factor association with depression, and its severity in patients with rheumatoid arthritis
関節リウマチ患者におけるインターロイキン6、インターロイキン17、疾患関連因子および背景因子とうつ病との関連、およびその重症度の関連
著者 Eman Salah Albeltagy1 & Shaimaa Younes Abd Elaziz2 & Sarah Younes Abozaid3 & Hala Mohamed El Zomor4 &Sally Said Abd Elhamed1
雑誌名 Clinical Rheumatology (2021) 40:895–904 (IF:3.650)

P:RA患者
E:うつ病あり 
C:うつ病なし
O:各種因子の違い

 <セッティング>
・RA患者164人
・実施施設:アル・ザラー大学病院内科とリウマチ科とリハビリテーション科の患者
・実施期間:2019年4月から2019年12月まで

<研究デザインの型:RCT、横断研究、前向きコホートなど>
・横断研究>症例集積研究

<Population、およびその定義>
・RA患者。164人。下記の除外基準をクリアした120人を解析

・除外基準
  18歳未満
  検査データ欠損例
  他の膠原病疾患の病歴あり
  PSL>7.5㎎を慢性的に使用している患者
  甲状腺機能障害
  RA発症前に精神発育遅滞、言語障害、なんらかの精神疾患の病歴がある人(うつ病含む)
・倫理。カイロ アル・アズハル女子医科大学倫理委員会

<主なアウトカム、および、その定義>
・アンケート調査
社会背景因子。婚姻状況、居住地、学歴、雇用状況、家族状況。
RA関連。罹病期間、使用薬剤、RF、併存疾患、VAS、DAS-28、HAQ
うつ病関連。BDI(ベックうつ病指標)アラビア語版(クロンバックα=0.82-0.93)
バイオマーカー。ESR、CRP、RF、IL-6、IL-17

<解析方法>
・BDI:0-13正常、14-19軽度、20-28中等度、29-63重度。
・統計ソフト。SPSSを使用
・解析はT検定、マンホイットニ―検定、χ2検定、ANOVA、クルスカルワーリス検定、ピアソンの相関検定、ロジスティクス回帰分析

<結果>
・164人中120人を解析
(正常39人、軽度うつ病9人、中等度うつ病37人、重度うつ病35人)
・全般解析。女性91.7%。平均年齢45歳。結婚率55.8%、無職85.0%、地方在住54.2%、無教育14.2%、初等教育22.5%、中等教育20.8%、高等教育14.2%、大学19.2%(Table1)
・RA関連。罹病期間12.57年、DAS:4.46、HAQ:1.55。治療はDMARD85.8%、BIO32.5%、ステロイド76.7%、NSAID48.3%。合併症は高血圧が48.3%で最多。(Table 2)
・うつ病関連。BDIとの相関。ESR、CRP、HAQ、DAS28、VAS、IL-6、IL-17は相関あり。年齢、罹病期間に関連なし。(Table 3)
・うつ病に関連する因子。単変量解析では、VASのみ関連あり。(Table 4)
・うつ病の重症度に関連する要因。DAS-28、VAS、HAQ、ESR、CRP、IL-6、IL-17。(Table 5)

<議論>
・RA患者の67.5%がうつ病を合併していた。エジプトの既報(15%、45%)、米国(33%)、チュニジア(45%)、モロッコ(2%)、カナダ(4%)とばらつきが大きい。通常のエジプト人は6.8%。
・その要因は、エジプト人コミュニティではうつ病や精神疾患をタブー視していること。学歴も低く、職に就けず、収入も少なく、十分なRA治療を受けられず、家庭環境が悪化し、RAの疾患活動性も高い。IL-6やIL-17によって示される炎症反応も高い。これらの悪循環サイクルに陥っている可能性がある。

<Limitation>
・サンプルサイズが小さい。特に男性が10人と少ない。

<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
・リウマチの疾患活動性を制御することが、合併するうつ病への対策にもなる可能性
・発展途上国におけるリウマチ診療の実態を理解する

<この論文の好ましい点>
・エジプトにおけるリウマチ診療の実態、合併する抑うつ状態の実態、関連するIL-6、IL-17との関連をみたこと。
・Bio-Psycho-Socialモデルの典型例。

<この論文にて理解できなかった点>
・PSL>7.5㎎を慢性的に使用している患者を除外したこと。実態調査であれば、除外しないほうがよい。
・うつ病の評価指標をBDIのみ使用していること。通常のカットオフ値とRAでのカットオフ値が異なる可能性がある。

担当:三輪裕介

 

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