Covid 19感染により自己炎症性疾患の発症は増えるか?【Jounal club 2023/10/18】】

■背景と目的
SARS-CoV-2は自己寛容の破綻、免疫交差反応を介して自己免疫反応を誘発は、円形脱毛症、尋常性白斑、SLE、血管炎、MIS-Aなどを発症に関連が考えられる疾患症例が報告されている。COVID-19といくつかの自己免疫疾患との類似性が示唆されているが、包括的評価はまだ確立されていない。全国規模の集団ベースの研究で、COVID-19後の自己免疫疾患および膠原病の発生率とリスクを推定することを目的とした。

■研究デザイン:Retrospective population-based study

■方法
韓国疾病予防管理庁(KDCA)の政府管理のCOVID-19国民健康保険サービス(NHIS)登録からの全国的、人口ベースのデータを使用した。NHIS COVID-19登録にはCOVID-19が確認された個人の診断日、感染経路、死亡転帰に関する情報があり照合できる。韓国には、韓国全人口の99%以上をカバーする単一の医療保険制度(NHIS)があり、加入患者の社会経済的状態、入院および外来治療、疾患の診断、処置、処方に関する包括的な情報を提供している。
2020年10月8日から2021年12月31日の間にCOVID-19の確定診断を受けた581500人のうち、共変量コントロールのために一般健康診断を受けた人のデータのみを抽出した(354886人)。
2020年の韓国全人口から、SARS-CoV-2感染の証拠がない9875232人を一次対照コホート(韓国全人口の約20%)として生年と性別で層別化。
次に、一般健康診断データがある者(6160655人)、かつ2020年10月8日までに生存していた者(6160499人)のみからデータを抽出。対照群がCOVID-19群と同様の観察期間を持つようにするため、COVID-19群における調査開始日の分布に従って対照参加者の調査開始日を無作為に割り当てた。研究集団は、研究指標日から各疾患の診断、移住、死亡、または研究期間の終了(2021年12月31日)まで追跡された。
共変量 研究対象集団の人口統計、社会経済的状態、生活習慣要因、合併症はNHISデータベースから入手。
過去の文献や生物学的妥当性に基づいて、疾患転帰と関連する可能性のある共変量を設定。事前に定義した共変量は以下
・年齢 ・性別 ・所得水準 ・保険の種類 ・居住地域 ・身長 ・体重 ・肥満度 ・ウエスト周囲径 ・喫煙状況 ・年間平均医療機関受診回数 ・収縮期血圧 ・拡張期血圧 ・ヘモグロビン ・空腹時血糖 ・肝酵素値(AST/ALT/γGTP) ・Cr  ・COVID-19ワクチン接種状況(1回以上 vs.なし) ・高血圧 ・糖尿病 ・脂質異常症 ・COPD   ・慢性腎疾患 ・軽症肝疾  ・アトピー性皮膚炎 ・アレルギー性鼻炎 ・喘息 ・B型/C型肝炎感染 ・HIV感染

■統計解析
個人の傾向スコアは、共変量に基づいてCOVID-19コホートに属する確率として推定され、逆確率重み付け法で算出(COVID-19コホートに属する確率/(1-COVID-19コホートに属する確率)。逆確率重み付け法適用前後の共変量のバランスは標準化平均差を用いて評価次に、COVID-19コホートと対照コホートについて、逆確率加重に用いたすべての共変量を調整した後、多変量Cox比例ハザード解析を用いてリスクを導き出した。

■結果
研究集団
 合計COVID-19群354 527人(平均年齢52.24歳、女性50.50%)
 対照群6 134 940人(平均年齢52.05歳、女性50.12%)
COVID-19と対照コホートの追跡期間の平均は119.70日であった。(それぞれ119.70日、121.40日)
COVID-19患者では以下の疾患発症が有意に高い。
 ・円形脱毛症・全頭脱毛症 ・ANCA関連血管炎・クローン病・サルコイドーシス
SLEのリスクはCOVID-19のコホートでは低かった
年齢40歳、性別、COVID-19の重症度に応じたサブグループにおける疾患転帰の発症リスクを検討した。
 ・女性のみのサブグループでは、COVID-19コホートにおける円形脱毛症、全頭脱毛症、白斑、ANCA関連血管炎、クローン病、サルコイドーシスのリスクが上昇し
 ・男性のみのサブグループでは、全頭脱毛症、乾癬、クローン病、成人発症スティル病、全身性硬化症、強直性脊椎炎のリスクが上昇した。
 ・年齢層別化では、円形脱毛症、全身性脱毛症、ANCA関連血管炎のリスクは40歳以上で高く、クローン病、関節リウマチ、成人発症スティル病、サルコイドーシスのリスクは40歳未満で高かった。
COVID-19の重症度に基づいた評価
 いずれのサブグループでもSLEのリスクは低く、非ICU群ではSJSと強直性脊椎炎のリスクは低下していたにもかかわらず、全体の発症リスクはCOVID-19の急性期の重症度とともに顕著に上昇した。
 ・COVID-19ワクチン接種の有無で層別化すると、円形脱毛症、全身性脱毛症、クローン病などの自己免疫疾患のリスクは、ワクチン未接種群で高かった。

■Limiteation
・韓国人(アジア人)のみの研究 ⇒逆にアジア人の特徴はよく表す可能性がある
・観察期間がSLE発症を捉えるには十分でなかった可能性。(SLEの累積発症率が、COVID-19の診断から100日近く遅れて発症)
 さらに、SLEはCOVID-19の重症度と関連している可能性がある。重症のCOVID-19症例では死亡率が高いため、SLEリスクの減少に偏っている可能性がある。
・検査で診断されていないCOVID-19患者が対象群にいた可能性
・一部の希少疾患は発症が少なく、解釈が不正確になっている可能性

 

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