炎症性筋炎に対する悪性腫瘍スクリーニングの指針【Journal club 2023/11/22】

International Guideline for Idiopathic Inflammatory Myopathy-Associated Cancer Screening: an International Myositis Assessment and Clinical Studies Group (IMACS) initiative

炎症性筋炎に対する悪性腫瘍スクリーニングの指針(IMACS)

著者Alexander G S Oldroyd , Jeffrey P Callen , Hector Chinoy , Lorinda Chung, David Fiorentino , Patrick Gordon , Pedro M Machado, Neil McHugh , Albert Selva-O’Callaghan , Jens Schmidt , Sarah L Tansley , Ruth Ann Vleugels , Victoria P Werth ; International Myositis Assessment and Clinical Studies Group Cancer Screening Expert Group; Rohit Aggarwal 
Nat Rev Rheumatol 2023 Nov 9.

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<サマリー>
成人発症炎症性筋炎における悪性腫瘍はリスクと評価される。悪性腫瘍のリスクを層別化し、適切な検索内容の国際的指針を示した。

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<指針>
筋炎のタイプ, 自己抗体, 臨床所見から悪性腫瘍リスクを評価し, それぞれに応じてスクリーニングの内容, 頻度を規定している

□ 通常リスク群では特発性炎症性筋症診断時に基本的スクリーニングを行う.
□ 中リスク群では特発性炎症性筋症診断時に基本的+強化スクリーニングを行う.
□ 高リスク群では特発性炎症性筋症診断時に基本的+強化スクリーニングを行い, その後は年1回基本的スクリーニングを3年間継続する.

<作成方法>
・IMACSに所属する複数人の専門家(筋炎専門家、腫瘍に関連した筋炎の専門家)での協議のもと推奨
・以下のメタアナリシスのsystematic literature reviewの元、作成
Oldroyd, A. G. S. et al. A systematic review and meta-analysis to inform cancer screening guidelines in idiopathic inflammatory myopathies. Rheumatology 60, 2615–2628(2021).
・推奨度 
リスクと比較して明白にメリットがある場合には、”strong”と記載、リスクを勘案しての推奨の場合、”conditional”と記載
・evidence level
high A, moderate B low C, very low Dに分類

<推奨>
18のrecommendationが提示された。
1)若年発症 炎症性筋炎では、ルーチンでの悪性腫瘍検索は不要である
 Evidence level B
2)封入体筋炎(IBM)が証明された場合、ルーチンの悪性腫瘍検索は不要である。
 Evidence level B
3)全ての炎症性筋疾患患者において、国、人種、年齢、性別に応じた基本的な癌スクリーニングプログラムは受けるべきでる。       Evidence level B
    Strong recommendation
4)全ての炎症性筋疾患患者において、筋炎特異的自己抗体および筋炎関連自己抗体の測定により、悪性腫瘍リスクを評価をするべきである
 Evidence level C
 Strong recommendation
5−8)悪性腫瘍の潜在的リスクは、自己抗体の種類、臨床所見で階層化されるべきである
 推奨度B
 Strong recommendation
9) basic cancer screeningに含まれるべきもの
・包括的な問診
・包括的な身体所見
・血液検査:血算、肝酵素・機能、ESR, CRP、蛋白電気泳動、フリーライトチェーンの測定
・尿検査
・胸部単純写真
 Evidence level C
 Strong recommendation
10)enhanced cancer screeningに含まれるべきもの
・頸部〜骨盤のCT検査, 子宮頸癌検査, マンモグラフィー,
血液検査: PSA, CA-125
骨盤・経腟超音波検査(卵巣癌検索),
便潜血検査.
 Evidence不足している
13)
成人発症炎症性筋疾患で、ハイリスクである場合、
初診時にbasic cancer screeningとenhanced cancer screeningを施行されるべき
3年後にはbasic cancer screeningを施行されるべき
 Strong recommendationであるが、Evidence不足している
14)
成人発症炎症性筋疾患で、ハイリスクである場合、
診断時に悪性疾患が同定できていない場合 FDG PET-CTの撮影を考慮するべきである
 Conditional recommendation
 Evidence level C
15)
成人発症炎症性筋疾患で、抗TIF-1γ抗体が陽性の皮膚筋炎で、40歳以上であり、さらに他のハイリスク因子がある場合
単独の検索方法として、FDG PET-CTは考慮すべきである
 Conditional recommendation
    Evidence level  C
16)内視鏡について
成人発症炎症性筋疾患で、ハイリスクである場合、かつ診断時に悪性疾患が同定できていない場合、上下部内視鏡を考慮するべきである
   Conditional recommendation
   Evidence level  C
17)咽喉頭ファイバーについて
成人発症炎症性筋疾患で、地域特性上鼻咽頭癌のリスクが高い場合、ファイバー検査の施行が考慮されるべきである
※アジア人では上咽頭癌リスクが高いため, 咽頭ファイバーによる検査も推奨される.
18)成人発症炎症性筋疾患で、「red flag」の症状と所見がある場合、リスクカテゴリーに関わらず、腫瘍検索を考慮するべきである
・意図しない体重減少
・悪性腫瘍の家族歴
・喫煙歴
・説明のつかない発熱、夜間盗汗

<limitation>
・そもそも悪性腫瘍スクリーニングに関するエビデンスには欠けている。
・専門家集団の出身は米国、欧州に偏っている
今後他の地域の専門医も含めていく必要あり
・定期的スクリーニングにおける指針の根拠の確立が必要
特にC T検査の頻度と時期などの指針が不明確
・このガイドラインの掲示によって、偽陽性となる検査結果が増す可能性がある

<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
概ね日常診療に即した検索内容と考えられ、我々の検索方針に合致する内容と考えられる。
他の疾患における悪性腫瘍スクリーニングにおいても役に立つと考えられる。

<この論文の好ましい点>
わかりやすい図表を用いて、指針として明示されており、簡易的に確認しやすい。

担当:鷲澤恭平

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