巨細胞性動脈炎における診断時のFDG-PET取り込みと動脈径の変化の関連【Journal club 2023/11/29】

巨細胞性動脈炎における診断時のFDG-PET取り込みと動脈径の変化の関連

Association Between Vascular 18F-Fluorodeoxyglucose Uptake at Diagnosis and Change in Aortic Dimensions in Giant Cell Arteritis 

Moreel L, Coudyzer W, Boeckxstaens L, Betrains A, Molenberghs G, Vanderschueren S, Claus E, Van Laere K, Blockmans D

Department of General Internal Medicine, University Hospitals Leuven, and Department of Microbiology, Immunology, and Transplantation, KU Leuven, Leuven, Belgium

Ann Intern Med. 2023 Oct;176(10):1321-1329. doi: 10.7326/M23-0679

 


サマリー:

GCA患者の診断時にPET検査でFDG取り込みを認めることは胸部大動脈瘤発症の独立した予測因子である。診断時にPET画像診断を行うことは、大動脈瘤形成リスクの推定に役立つ可能性がある。

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<背景>

GCA患者では胸部動脈瘤発生のリスクが高いことが知られている。胸部大動脈瘤の発生予測因子については一貫した結果が報告されていないが、以前のレトロスペクティブ研究では、診断時の大血管におけるFDGの取り込みが大動脈合併症のリスクを高めることが示されている。

 

<セッティング>
 ルーヴェン大学病院

<研究デザインの型>
 前向きコホート研究

<Population、およびその定義>
・2012年から2020年の間に、ルーヴェン大学病院総合内科の医師が評価したGCA患者で、グルココルチコイド投与開始後3日以内にPET検査を受けたGCA患者106例。2012年以前にGCAと診断され、診断時のPET検査と毎年の大動脈CT検査が可能な患者も対象。
・GCAの診断:経験豊富な臨床医の判断に基づき、入手可能なすべての情報(臨床的、生化学的、放射線学的、PET、側頭動脈生検の結果および追跡期間中の変化)を考慮した。

<主なアウトカム、その定義>
・7つの血管領域(胸部、腹部大動脈、鎖骨下動脈、腋窩動脈、頸動脈、腸骨動脈、大腿動脈)において、FDGの取り込みを0(FDG取り込みなし)、1(ごくわずかだが無視できないFDG取り込み)、2(明らかにFDG取り込みが増加)、または3(非常に顕著なFDG取り込み)としてスコア化した。FDG取り込みがグレード2以上でPET検査は陽性と判定。さらに、0(7つの血管領域のいずれにも血管のFDG取り込みがない)から21(7つのセグメントすべてで血管のFDG取り込みがスコア3)まで、血管の総スコア(TVS)を算出した。

<解析方法>
・診断時にPET画像とCT画像を撮影し、最長10年間にわたり1年ごとにCT画像を撮影した。
・CT検査:基本的に非造影検査。大動脈径は、上行大動脈、大動脈弓、下行胸部大動脈、副腎上大動脈、副腎横大動脈、副腎下大動脈で測定され、胸部および腹部の大動脈容積が測定された。
・電子カルテから以下の情報を収集:診断日、年齢、性別、身長、体重、心拍数、血圧、症状、症状持続期間、心血管危険因子と投薬、赤血球沈降速度、CRP値(mg/L)、診断時の側頭動脈生検結果、追跡期間、 グルココルチコイドの総投与週数および最初の2年間の累積投与量、免疫抑制剤の使用、再発、大動脈合併症(拡張または解離)、血管狭窄、血管手術、心筋梗塞、脳血管障害、前部虚血性視神経症、死亡率。
・心血管危険因子の補正:AORTAスコアを用いた(年齢、性別、心拍数、血圧、身長、体重、および糖尿病を特定するための血糖降下薬、降圧薬、スタチンまたはフィブラートの使用に基づいて上行大動脈径を推定)
・血管のFDG取り込みと大動脈寸法の関連は、ランダム切片と勾配を用いた線形混合効果モデルにより推定した。
・喫煙、症状の持続期間、ベースラインの赤血球沈降速度およびCRPレベル、グルココルチコイド治療期間、免疫抑制剤の使用、および再発率を追加調整

<結果>
・(Figure1):2012年以前に診断された患者は35人、2012年から2020年の間に診断された患者は132人であった。徐外基準を適用した結果、106例が組み入れられた。
・(Table1):患者の平均年齢70歳、女性66%。75例(71%)がPET検査陽性であった。
 PET検査の結果が陽性であった患者は、陰性患者と比較して若年(69歳対74歳)であり、女性に多かった(76%対42%)。診断までの症状持続期間は、陽性の患者で長かった(8週間 vs 3週間)。陰性患者では、頭蓋症状の頻度が高かった(90% vs 69%)のに対し、陽性患者では、全身症状の頻度が高かった(95% vs 71%)。心血管危険因子、TAB陽性患者の割合、炎症マーカーについては、PET陽性群と陰性群で差はなかった。
・(table2):PET陽性群と陰性群における5年間の進行の比較
陽性群は陰性群と比較し上行大動脈の直径(5年進行の差、1.58mm[95%CI、0.41~2.74mm])、下行大動脈の直径(1.32mm[CI、0.38~2.26mm])、および胸部大動脈の容積(20.5cm³[CI、4.5~36.5cm³])の増加が大きい。腹部大動脈に関しては容積・直径とも有意差なし。Figure2,3 10年後の結果も上記同様。
・23人の患者が大動脈瘤を発症し、7人の患者では最初のCTで大動脈瘤が認められた。23人の患者のうち、診断から大動脈瘤発生までの期間の中央値は、いずれの動脈瘤でも35ヵ月(IQR、14〜60ヵ月)、胸部大動脈瘤では33ヵ月(IQR、13〜60ヵ月)であった。下行大動脈に18例、上行大動脈に6例、大動脈弓に5例、腹部大動脈に5例の動脈瘤があった。
・TVSが高値であった2例は、上行大動脈瘤のために手術が必要であった。病理組織学的検査では、両患者で外膜に退行性変化、嚢胞性中膜壊死、軽度のリンパ球性炎症が、1人の患者では中膜に認められた。
・年齢、性別、心血管危険因子、症状期間、診断時の症状、炎症マーカー、側頭動脈生検の結果、グルココルチコイドの使用期間、最初の2年間のグルココルチコイドの累積投与量、免疫抑制剤の使用、再発率、追跡期間中の心血管イベント、死亡率に差はなかった。

<結果の解釈・メカニズム>
・診断時にPET検査の結果が陽性であったGCA患者では、陰性であった患者と比較して、上行・下行大動脈径および胸部大動脈容積の増大が大きかった。腹部大動脈容積には差がなかった。さらに、TVSが高いほど胸部大動脈径と容積が年々増加した。これらの結果は以前に報告された後ろ向き研究と同様である。
・GCA患者における動脈瘤形成の機序は不明であり、持続的な不顕性血管炎が大動脈壁の損傷に繋がるとする見解もあるが、手術後の大動脈の病理組織学的検査では、ほとんどが中膜の弾性線維の広範な破壊を認め、中膜および/または外膜の炎症は軽度で散在しているだけである。
・胸部動脈瘤の発症の有無にかかわらず、患者の特徴、心血管危険因子、診断時の症状、治療、再発率に差はなかった。
 →炎症の持続性よりもむしろ初期炎症の強さと程度がその後の大動脈拡張のリスクを決定することを示唆している。
・本研究では血管内FDG取り込みが胸部大動脈瘤発症の独立した予測因子であり、胸部大動脈瘤15例のうち14例はPET検査の結果が陽性であった患者で発生した。GCA患者、特に血管炎症の強度が高く範囲が広い患者では、大動脈寸法の経過観察が必要と考えられる。
・PET検査の結果が陽性であった患者は、年齢が若く、女性に多く、診断までの症状期間が長い、全身症状が多い、FDGの取り込みがみられなかった患者では、頭蓋症状がより多いなどの特徴は見られたが、これらの結果は将来の大動脈瘤リスクを推定するには十分でなく、GCA患者において診断時にPET画像診断を行うことが望ましいと考えられる。

<Limitation>

・組み入れ期間が長かったため、PET検査の品質の変化がある。
・追跡期間が長かったため、かなりの数のCT検査が欠落していた。
・単一施設の研究である。
・治療は医師の裁量に委ねられていたため、治療の違いが所見に影響を与えた可能性は否定できない(ただし、PSL治療期間、免疫抑制剤使用について追加調整を行った感度分析でも同様の結果であった)

 

文責:小西典子

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