Oral fidaxomicin versus vancomycin for the treatment of Clostridioides difficile infection: A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials
クロストリジオイデス・ディフィシル感染症の治療における経口フィダキソマイシン対バンコマイシン: システマティックレビューとメタアナリシス
Sho Tashiro ,Takayuki Mihara, Moe Sasaki, Chiaki Shimamura, Rina Shimamura, Shiho Suzuki, Maiko Yoshikawa, Tatsuki Hasegawamm, Yuki Enoki, Kazuaki Taguchi, Kazuaki Matsumoto, Hiroki Ohge, Hiromichi Suzuki, Atsushi Nakamura, Nobuaki Mori, Yoshitomo Morinaga, Yuka Yamagishi, Sadako Yoshizawa, Katsunori Yanagihara, Hiroshige Mikamo, Hiroyuki Kunishima
Division of Pharmacodynamics, Keio University Faculty of Pharmacy, Tokyo, Japan.
J Infect Chemother. 2022 Nov;28(11):1536-1545.
<背景>
CDIの治療においては新規クラスの抗菌薬(フィダキソマイシン)の有効性が多数報告され、欧米のガイドラインにおいては第一選択薬に位置付けられるようになるという変遷があった。日本のガイドライン2022においても重症例、再発例において推奨度が上がり、今後日常診療においてフィダキソマイシンの使用頻度が増加していくものと考えられる。
今回の論文は2018年のメタアナリシスに新たに2つのRCTを加えて評価した2022年のメタアナリシス
フィダキソマイシンfidaxomicin (ダフクリア錠)について
・18員環マクロライド骨格を持つ新規クラスの抗菌薬。
・C.difficileのRNAポリメラーゼを阻害し、殺菌的に作用する。芽胞形成の抑制作用、トキシン産生の抑制作用などを有し、CDIに対して高い効果が期待されている。
・スペクトラムが狭域、グラム陰性菌にはほぼ活性がなく、グラム陽性菌の一部のみに有効であるため、腸内細菌叢への影響が小さいことが期待され、再発率の低下やVCM耐性腸球菌(VRE)の出現の低下などが期待されている。(CDIへの経口VCM使用はMNZ
と比較してVREの増加は認めなかったとする報告もあり、効果不明)
・VCM同様に高分子であり、全身に移行しないため安全性が比較的高い。
・これまでの多数の大規模臨床研究が実施され、VCMに対して高い再発率の低下を認めている。初期の治癒率についてもほぼ同等かわずかに優位な報告が多い。
<PICO>
P:CDI患者
I:フィダキソマイシンの投与
C:経口バンコマイシンの投与
O:治癒率や再発率
<文献検索>
2021年10月15日時点
電子データベース (PubMed、Cochrane Library、Web of Science、Clinicaltrials.gov)
キーワード“Clostridioides difficile infection,” “antibiotic-associated diarrhea,” “pseudomembranous colitis,” “fidaxomicin,” and “vancomycin”.
<研究の選択>
対象
(1)FDXとVCMがCDI患者に投与された
(2)FDXとVCMの有効性と安全性に関する臨床転帰の比較データが十分に入手可能
(3)16 歳以上
(4) RCT
除外基準
FDX または VCM の非標準的な単剤療法や併用療法、高用量、漸減 など
<アウトカム>
・主要評価項目は、全体的な治癒率(臨床的治癒の達成後に再発がない)
・副次評価項目は、臨床治癒、再発、有害事象
・重症度、過去のCDIエピソード、株の種類、併用抗生物質の有無、年齢(65歳未満および65歳以上)によって層別化
<バイアスと出版バイアスのリスクの評価>
・2 人の著者が独立してバイアスのリスクを評価し、意見の相違は議論によって解決されました。評価は、the Cochrane Handbook for Systematic Reviews of Interventions and Assessment Criteriaに従って実施 。
・他のバイアスのリスクは、製薬会社から財政的支援を受けているかどうか評価出版バイアスは、funnel plotと、Egger検定などで評価
<結果>
・全体的な治癒率(主要項目)はFDX が VCM よりも有意に高い (RR = 1.18、95% CI = 1.09 ~ 1.26、P < 0.00001、I 2 = 0%)
・臨床治癒率はFDX と VCM で同等でした (RR = 1.02、95% CI = 0.98 ~ 1.06、P = 0.31、I 2 = 0%) 【図B】
・再発率はFDX は VCM よりも有意に低い(RR = 0.59、95% CI = 0.47 ~ 0.75、P < 0.0001、I 2 = 0%) 【図C】
・サブグループ解析
・非重症 CDI 症例において、FDX は VCM よりも大幅に高い全体的治癒率に寄与。重度の CDI 症例では有意ではなかった。
・FDX は、初期 CDI 症例では VCM よりも有意に高い全体治癒率に寄与。再発 CDI 症例では有意ではなかった。
・非BI/NAP1/027感染症、抗生物質を併用していない患者、年齢<65歳、年齢> 65歳以上の各サブグループにおいて、FDX群における全体的な治癒率が有意に高かった。BI/NAP1/027感染の各サブグループおよび併用抗生物質で治療された患者には有意差はなかった。
・安全性
・FDX群とVCM群の間で、いかなる有害事象にも有意差は認めなかった。
<研究結果のサマリー>
FDX は VCM よりも全体的な治癒率が高く、再発率が低い結果であり、臨床治癒率と有害事象に関して同様の有効性と安全性が確認された。総合すると、FDX は VCM よりも優れており、既報に矛盾しない結果であった。
<Limitation>
・サブグループ分析に含まれる患者の数が少なかったこと、特に BI/NAP1/027 感染において有意差を検出できなかった。
・研究の多くが米国、カナダ、ヨーロッパで実施されていること
・各研究では有効性評価の時点と追跡期間は異なること
<本研究の優れている点>
・組み込まれたRCTの数が多くなり、日本のRCTも組み込まれていること
<本研究の好ましくない点>
・通常のフィダキソマイシンの単剤治療の比較では、臨床治癒が得られない難治例や頻回再発例の治療についての打開策にはならなかった。これらの症例は併用療法や漸減療法、糞便移植など引き続き工夫の検討が必要である
文責:蕗田淳平