巨細胞性動脈炎に対するDWI scrolling artery sign(DSAS)の診断精度研究【Journal club 2024/5/30】

巨細胞性動脈炎に対するDWI scrolling artery sign(DSAS)の診断精度研究

DWI scrolling artery sign for the diagnosis of giant cell arteritis: a pattern recognition approach
Luca Seitz, Susana Bucher, Lukas Bütikofer, Britta Maurer, Harald M Bonel, Fabian Lötscher, Pascal Seitz
Department of Rheumatology and Immunology, Inselspital, University Hospital Bern, University of Bern, Bern, Switzerland
RMD Open . 2024 Mar 22;10(1):e003652
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<サマリー>
巨細胞性動脈炎が疑われた156人の患者に対しMRIでのDWI評価のもとDSAS(“DWI-Scrolling-Artery-Sign(DSAS)”が専門家、初心者それぞれで評価された。専門家の評価では感度73.6%, 特異度94.2%, 初心者では感度59.8%, 95.7%であった。DSASはGCAにおいて良好かつ迅速性のある診断技術として用いられる可能性がある
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<セッティング>
・University Hospital Bern, Switzerlandの患者

<研究デザインの型:RCT、横断研究、前向きコホートなど>
・後向き観察研究

<Population、およびその定義>
・50歳以上のG C Aが疑われた、ないしGCAの再燃が疑われ患者
・2018年1月1から2021年12月31日までに撮影された患者
・除外基準:DWIまたはT1-BBが撮影されていない患者、GCA以外の血管炎の患者、再燃疑い例に限り、治療後4ヶ月以内にCRPが正常化した例
・臨床診断は初期診断から6ヶ月経過したのちの後方診断で分類した

<画像について>
・硬口蓋から頭頂までのaxial画像を用いた。
・93%の患者で以下の条件で撮影された
  acquisition matrix 192×192
  field of view 220×220mm
  voxel size 1.15×1.15×4.0 mm, flip angle 180°;
  median of TR (repetition time)
  TE (echo time) was 5750ms and 61ms,

 DWI
 T1BB(fat-suppressed T1-weighted black-blood sequence
  脂肪抑制T1、血流による信号異常を抑制し、血管構造を描出する)

<読影>
・臨床情報をブラインドされた状況で、2名の膠原病医、放射線専門医が読影した。
・その後、MRI読影を一度もしたことない医学生の読影も加わった。

<MRI異常の評価>
・DSASの定義:スクロールするときに血管壁の周を示すような、,皮下組織における高輝度DWI信号の存在。皮下組織に限定し、筋組織、骨組織は含まない。
・DWIでは、上記grade 2以上で陽性ととる
・T1BB
  浅側頭動脈、前頭枝、頭頂枝、後頭枝、後頭動脈の区画に分割 
  1区画以上で壁の異常があれば、血管炎に矛盾がないと評価した。

<解析方法>
・連続変数に対して、マンホイットニーの U検定、カテゴリー変数に対してフィッシャーの正確 確率検定 を使用した。
・感度と特異度の比較はMcNemarの検定を用いて行った。
・ROC曲線のAUCは95%信頼区間を設定した。

<結果>
 ・208人の患者のうち、52人は除外された。(GCA以外の血管炎、MRI撮影状況)
 ・156人のエントリーのうち、GCAの診断に至らなかったのは69人で、PMR 23例、一次性頭痛10例、非動脈性の虚血性視神経症 9例、多発関節炎 9例、網膜動脈閉塞症2例、側頭動脈の発達 2例、感染症2例、リンパ腫2例、サルコイドーシス2例、8例はその他疾患であった。
 ・96.8%が新規発症のGCAを疑われており、3.2%は再燃が疑われていた。 
 ・17.9%が頭頸部以外の症状のみであったが、128人(82.1%)は頭頸部の症状(新規頭痛、頭頂部硬結、顎破行、視力低下など)を訴えていた。
 ・DSASでは129/156が正確な診断をされた。
   感度73.6%, (95% CI 63.4 to 81.7%)
   特異度94.2% (95% CI 86.0 to 97.7%).
 ・頭頸部の症状を訴える患者では
   109/128人が正確な診断をされた。
   感度80%, (95% CI 69.6 to 87.5%)
   特異度92.5% (95% CI 82.1 to 97.0%).
・いずれでもT1BBでは感度特異度ともに低かった。
・GCAと診断された87例農地、37.9%は3-4区画でDSASは陽性で、16.1%は2区画で陽性であった。
・GCAではない患者でのDSAS陽性例は4例のみであり、それらで2区画以上でDSASを認めた例はなかった。
・DSASは前頭枝が後頭枝より多く所見が見られた。
・DSAS陽性の区画の数でROC曲線を評価すると、2区画以上でのDSAS陽性で98.6%の特異度を得た。
・医学生との比較に関しては 137/156人で所見の見解が一致した。
・52/156人でMR Iより前にG C加療を受けていた。うち45人は頭頸部症状を訴えていた。
・明らかな診断能の変化は同定されなかった。

<結果の解釈・メカニズム>
DSASはGCAの一定の診断精度をもつ可能性がある

<Limitation>
・試験期間が維持治療期間に比較して短い。
・サンプルサイズが小さい。

<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
・正確な診断ができずステロイド開始をやむをえない状況での、診断妥当性の再考に有用となる可能性がある。

<この論文の好ましい点>
・より低侵襲な検査内容での診断技術を追求し、新たな診断基準の可能性に寄与しうる

文責:鷲澤恭平

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