Journal Club【20140528】RAにおけるタクロリムスの安全性と効果は?

「Post-marketing surveillance of the safety and effectiveness of tacrolimus in 3,267 Japanese patients with rheumatoid arthritis.」

Takeuchi T, Kawai S, Yamamoto K, Harigai M, Ishida K, Miyasaka N.

Division of Rheumatology, Department of Internal Medicine, Keio University School of Medicine , Tokyo , Japan.

Mod Rheumatol. 2014 Jan;24(1):8-16.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24261753

 

日本人3267人の関節リウマチ患者におけるタクロリムスの安全性と効果の市販後調査

 

【背景と目的】

・タクロリムス(TAC)は、従来の治療ではコントロール不十分な関節リウマチ(RA)患者に対し、2005年4月日本で適応となった。

・今回RA患者におけるTACの安全性と効果について国際的な市販後調査を行った。

 

【対象と方法】

・2005年4月から2009年3月の期間に日本の406施設から症例を集め、従来のRA治療に不十分な反応であり、期間中に初めてTACで治療を開始した患者を24週間追跡した。

・投与量と方法は、成人患者には1日1回夕食後3mg、高齢者には1.5mg1日1回夕食後から開始し、症状がコントロールできない場合3mgまで増量した。

・有害事象が不明確だったり、途中で来院しなくなったり、複数施設にわたっている症例を除外し、最終的に3172人となった。

 

※有害事象(AE: Adverse Event) : 薬物を投与された被験者に生じたあらゆる好ましくない医療上のできごと。

※薬物有害反応(ADR: Adverse Drug Reaction): 投与量にかかわらず、投与された薬物に対するあらゆる有害で意図しない反応。

 

【結果】

・3172人のうち、有害事象が41.2%、薬物有害反応が36.0%発症した。

・薬物有害反応発症率は、若年者に比べて高齢者が優位に多かった。

・もっとも多い重篤な薬物有害反応は感染症であった。

・MTX併用は、若年者、高齢者ともに薬物有害反応と感染症の発症率をあげなかった。

・65歳以上、腎不全の合併、糖尿病(DM)の合併がすべての薬物有害反応のリスクをあげた。

・効果としては、EULAR基準に基づいて65.4%の患者が中等度または良好な反応を呈した。

 

【ディスカッション】

・本研究の薬物有害反応の発症率は36.0%と従来の臨床試験(36.0-68.4%)と比較して低く、血液検査の頻度の点や、製薬会社によるモニタリング検索の欠如、より低いTAC投与量(初期1.5mg/日、平均1.8mg/日)などが挙げられた。

・DMをもっている患者は優位に薬物有害反応の発症率が高いので、TAC導入前にDMのチェックし、RAの症状が改善している場合ステロイド減量を検討するべきである。この研究での平均ステロイド投与量は従来の研究と同等であった。

・MTX単独療法で効果不十分な患者においてTACを追加することが勧められている。

・この研究の制限としては、DAS28が680人の患者にしか報告されていないこと、この期間中にTACで治療したすべての患者ではないことが挙げられた。

 

【結論】

・TACは、MTXとの併用も含め日本人の活動性のある関節リウマチ患者に有効である可能性がある。

 

【コメント】

・半数例が併用療法症例であり、TACのみでの検討がされていない、コントロールがないstudy、でありさらなる検討は必要と考える。

・COIを加味する必要性があると思われる。

 

担当:齋藤麻由

 

****************************************

 

・昭和大学リウマチ膠原病内科では毎週水曜日にJournal Clubを通じ新しい知見を得る機会を設けています。

 

・昭和大学リウマチ膠原病内科では、若手医局員の教育に注力しております。詳細はこちらをご覧下さい。

 

・昭和大学リウマチ膠原病内科では、研究するための時間を確保するprotect time制度を開始いたしました。こちらをご覧下さい。

 

・昭和大学リウマチ膠原病内科では、他医療機関での研修を年に1週間行っております。こちらをご参照ください。

 

・昭和大学リウマチ膠原病内科では、広い視野を持てる医師を育成したいと考えております。医療コミュニケーション教育理論の勉強会を行っております。

 

・昭和大学リウマチ膠原病内科では、手稲渓仁会病院の岸田先生による感染症専門医による感染症コンサルテーションを年に3−4回行っております。詳細はこちらをご参照ください。

 

・昭和大学リウマチ膠原病内科では、今年度から新たにケースベースの膠原病勉強会を開始いたしました。こちらをご覧下さい。

 

・昭和大学リウマチ膠原病内科にて研修された研修医の先生の感想を掲載しております。こちらをご参照ください。

 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

私たちと一緒に学びませんか?

プログラム・募集要項はこちら


昭和大学病院
〒142-8666 東京都品川区旗の台1-5-8
アクセスマップ
電話:03-3784-8000(代表)

[初 診]月曜~土曜 8:00~11:00
[再 診]月曜~土曜 8:00~11:00(予約のない方)
[休診日] 日曜日、祝日、創立記念日(11月15日)、年末年始