Journal Club【2015902】壊死性筋炎の臨床像と治療予後について

JAMA Neurol. Published online July 20, 2015. doi:10.1001/jamaneurol.2015.1207

Clinical Features and Treatment Outcomes of Necrotizing Autoimmune Myopathy

Charles D et al.

 

 http://archneur.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=2398134

 

【導入】

壊死性筋炎(Necrotizing autoimmune myopathy (NAM))は病理学的に筋繊維の壊死像と炎症がない、または軽微であることが特徴的である。

スタチン製剤関連、結合組織病、悪性腫瘍に伴うものがあり、特にSRP抗体やHMGCR抗体といった特異抗体に伴うものがある。

しかし現在のところ、壊死性筋炎の病因や治療効果に関するデータは限定的である。

 

【目的】

臨床的・血清学的・電気生理学的に壊死性筋炎を特徴づけること、臨床経過を予測すること

 

【方法】

2004年から2013年の間に臨床的・病理学的に壊死性筋炎と診断されたアメリカのメイヨークリニックの成人患者63人の医療記録をレトロスペクティブに検討した。

(全例で筋生検を施行し、診断している)

患者は病因と自己抗体によって4つの集団に振り分け、臨床的、電気生理学的、病理学的特徴を集め、他の振り分けた集団と比較した。

治療の反応の予測因子をロジスティック回帰分析で評価した。

 

【結果】

下肢優位の極度の筋力低下(46人 [73%]). 遠位筋の筋力低下(26 [41%]), 嚥下障害(22人 [35%]), and 呼吸苦(23 人[37%]) は比較的多かった。

22人の患者はスタチンが発症起因となり、6人は悪性腫瘍、3人が結合組織病(強皮症2人、シェーグレン症候群1人)であった。

CK値は平均5326 U/Lだった

13人(24%)が SRP-IgG陽性、17人(34%), HMGCR-IgG陽性であった。

(4人に1人がSRP抗体陽性、3人に1人がHMGCR抗体陽性であった。)

HMGCR抗体陽性例はスタチン関連筋炎で多かった。

ステロイド単剤加療では多くの患者で不十分であった。

32人中30人が2剤もしくはそれ以上の免疫抑制療法を要した。

経過中、29人中16人(55%)が免疫抑制薬の漸減・中止に伴い、再発した。

予後良好予測因子としては、男性、発症の3ヶ月以内に2剤もしくはそれ以上の免疫抑制療法の施行が挙げられた。

早期のIVIGの使用が、6ヶ月後の筋力を優位に改善した。

 

【考察】

これまでの報告からも壊死性筋炎は亜急性な経過、著名な筋力低下、近位筋優位の筋力低下、CK高値が特徴的である。

但し、1年以上の慢性な経過の報告もいくつかある。

 

緩徐発症の場合は筋ジストロフィー様のこともあり、鑑別を有する

遠位筋まで侵されることもよくある。

 

SRP抗体陰性、HMGCR抗体陰性の壊死性筋炎は悪性腫瘍合併例が多く、腫瘍のスクリーニング検索が好ましい。

壊死性筋炎では心筋異常も多い。間質性肺炎は少ない。

再燃が多く、55%が経過中に再燃。

免疫抑制薬の中止も難しい(本研究では一人だけ中止した、これは多発性筋炎や皮膚筋炎より少ない)

著者は治療は個人個人で変えるべきであると前置きした上で、壊死性筋炎において少なくとも3ヶ月の間、ステロイド、免疫抑制薬、IVIGを併用し、維持療法にも免疫抑制薬の併用が望ましい、としている。

 

【結論】

悪性腫瘍の除外はすべきである。

重症化が予想され、早期の積極的な免疫抑制療法が必要である。

 

【限界】

後ろ向き研究である。

対象群がない。

フォローできていない症例も多く、データ欠損が多い。

 

担当:石井 翔

 

 

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