『Expression of pro-inflammatory TACE-TNF-α-amphiregulin axis in Sjögren’s syndrome salivary glands.』
Margherita Sisto・Sabrina Lisi・Dario Domenico Lofrumento・Giuseppe Ingravallo・
Vincenzo Mitolo・Massimo D’Amore
Department of Human Anatomy and Histology, laboratory of Cell Biology, University of Bari Medical School
Histochem Cell Biol (2010) 134:345-353
<背景および目的>
TACE-TNF-α-AREG axisは炎症や自己免疫疾患において重要な病因の役割を担っていることが知られている.
シェーグレン症候群患者の生検組織において,Furinの発現に付随するTACE,AREGにおける研究はないため,その関連を明らかにする.
<補足>
・EGF family:上皮細胞成長因子(EGF),TNFα,Amphiregulinなどのサイトカインが分類される.
・Amphiregulin(AREG):ケラチノサイトや上皮細胞,線維芽細胞などの増殖刺激を行う.その一方である種の癌細胞株増殖を阻害することが報告されている.
・Furin:TACEはprodomainを含む約120kDaの非活性型として産生された後,furinによりprodomainの切断を受けることによって約100kDaの活性型となり,細胞膜表面に運ばれ基質と接触し,酵素としての機能を発揮する.
<結果および考察> 右記
・シェーグレン症候群患者の唾液腺生検においてFurin,TACE,AREGの発現を認めた.
・Furin-TACE-TNF-α-AREG axisは重要なparacrine pathwayである.
・TACEが上皮のAREGを放出し,それとともに,正常細胞の多くの反応を調整している.
・最近の研究から,AREGは“活性化した”上皮細胞が,複雑なシグナルネットワークをつくり,自己免疫の状態の形成や維持につながる炎症反応を導く可能性を持っている,と考えられている.
<まとめ> 右記
今回の結果から,AREG高値がシェーグレン症候群含む自己免疫疾患と関連があるという仮説が立てられる.
炎症や自己免疫疾患などの病態において,Furin-TACE-TNF-α-AREG signalingの統制解除を理解することは有用であるかもしれない.そして治療様式の臨床的な有用性の基礎の理解につながるだろう.
上級医のコメント
TACE (ADAM17)の発現だけでなく、活性化の指標となりうるfulinについてその発現について興味深い論文であった。現在われわれの進めている関節リウマチや炎症性筋疾患においても今後ADAM17の活性化を検討していくことへも生かしていけると考えられる。
担当:前岡 愛里