高齢関節リウマチ患者の生物学的製剤長期使用は重大な感染症のリスクを増加させない【Journal Club 20180124】

Long‑term use of biologic agents does not increase the risk of serious infections in elderly patients with rheumatoid arthritis

Hirotoshi Kawashima
Research Center for Allergy and Clinical Immunology, Asahi General Hospital

2017 Mar;37(3):369-376.


P:65歳以上の関節リウマチ患者183人
E:生物学的製剤使用(+)
C:        (-)
O:重大な感染症の発生率に差が生じるか 


P:65歳以上の生物学的製剤使用患者
E:重大な感染症発生(+)
C:        (-)
O:背景にどんな違いがあるか

1.セッティング:どのような場所で研究したか?
・旭中央病院で治療している65歳以上の関節リウマチ患者
・2006年1月から2012年3月までの間に
・関節リウマチの治療を開始した183人

2.研究デザインの型:RCT、横断研究、前向きコホートなど
・後ろ向きコホート研究
・2006年1月から2012年3月の間に登録
・最長3年間追跡

3.Population、およびその定義
・65歳以上の関節リウマチ患者
・1987年RA分類基準を満たす
・除外基準:記載なし

4.主な要因、および、その定義
・生物学的製剤の使用

5.Control、および、その定義
・生物学的製剤以外の使用

6.主なアウトカム、および、その定義
・入院を要する感染症、入院を延長させる感染症の発生

7.交絡因子、および、その定義
・年齢、生物学的製剤の有無、PSLの有無、DMARDsの有無、肺疾患の有無
(※②の解析で使用)

8.解析
・JMP software version9.0 (SAS Institute Japan, Tokyo, Japan).
・単変量解析:students t検定、Mann–Whitney U検定、スピアマンの順位相関係数、          カイ二乗検定、フィッシャーの正確確率検定
・発生率:人年法
・多変量解析:ロジスティック回帰分析

9.結果(箇条書きで、大事なところのみ)
Table.1:患者背景
生物学的製剤使用64人、非使用119人
2郡間に差はない。
年齢 (73.7 ± 5.1 vs73.7 ± 5.8 years), 性別(女性; 78.1 vs 69.7%) 、罹患期間 (12.7 ± 9.7 vs 10.9 ± 13.3 years)、肺疾患の合併 (32.8 vs 26.1%) 、糖尿病(4.7 vs 6.7%)、MTX使用 (79.7 vs 79.8%) 、PSL量(1.8 ± 2.5 vs 1.9 ± 3.1 mg/day).

Table.2:高齢RA患者における入院を要した重大な感染症の発生率
重大な感染症の発生に差はない(bio 13, non-bio 21)
Number of patients with ≧1 events ( bio 8.0 (95% CI 4.7–13.5), non-bio 6.3 (95%
CI 4.1–9.5)

Figure.1:重大な感染症の発生率のカプランマイヤー曲線
重大な感染症を起こすまでの時間に差はない(Log-rank test P = 0.46)

Table.3:高齢RA患者における重大な感染症のリスク因子
PSL量 (4.7 ± 3.2 vs 1.3 ± 2.0 mg/day,P < 0.001)
PSL使用割合 (90.0 vs 35.2%, P = 0.001)
生物学的製剤使用患者で感染症を発症した群で高かった。

Table.4:高齢RA患者の生物学的製剤使用群と非使用群間の重大な感染症の多変量解析
・PSL (≧5 mg/day)
Bio (OR 29.3, 95% CI 3.6–652.2, P < 0.001)
Non-bio (OR 19.2, 95% CI 4.9–101.0, P < 0.001)

・PSL (1–4 mg/day)
Bio (OR 11.7, 95% CI 1.5–257.1, P = 0.02)
Non-bio (OR 3.6, 95% CI 0.4–24.5, P = 0.21)

10.どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?
・生物学的製剤使用患者では少量PSL(1-4mg/day)でも感染症のリスクとなりうる。

11.Limitation(箇条書きで)
・サンプルサイズが少ない
・その他の交絡因子の存在
・観察期間が短い

12.自分で考えた交絡因子
・罹患期間、生物学的製剤の種類、性別、疾患活動性

13.この論文の弱点(自分で考えたものを記載)
・サンプルサイズが少ない
・若年患者との比較

 

担当:猪狩雄蔵

 

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