SLE患者さんにおける入院のリスク因子とは?【Journal Club 20180516】

Determining risk factors that increase hospitalizations in patients with systemic lupus erythematosus

D Li , HM Madhoun, WN Roberts Jr and W Jarjour
The Ohio State University College of Medicine, Columbus, USA

2018 Jan 1:961203318770534. doi: 10.1177/0961203318770534.

P: SLE患者
E: —
C: —
O: 入院

<セッティング>
The Ohio State University Wexner Medical Center(単施設)

<研究デザインの型:RCT、横断研究、前向きコホートなど>
retrospective cohort study

<Population、およびその定義>
2010-2017年にこの施設に通院するSLE患者
ICD10(M32)が2010-2017年に1回でもあった人→ランダム抽出→リウマチ専門医によりACR criteriaに合致するかを確認

<主な因子、および、その定義>
・年齢、性別、Cr、WBC、Hb、plt、治療薬、受診予約日
・Cr1.2、WBC10000、Hb11、Plt18万がカットオフ(この施設でのカットオフ値を使用)
・受診キャンセル:3つのカテゴリー(0%、0-20%、20%以上)
・免疫調整抑制剤:免疫調整(HCQ)、低リスク免疫抑制剤(レフルノミド、メトトレキサート、PSL20mg以下)、高リスク免疫抑制剤(アザチオプリン、シクロフォスファミド、ミコフェノレイト、リツキシマブ、PSL20㎎以上)

<主なアウトカム、および、その定義>
・アウトカム:入院の発生
・定義:原因に問わず、カルテから抽出

<解析方法>
・単変量:カイ二乗、Welchのt test, Log-rank test
・多変量解析:Weighted Cox regression model
・欠測対処:記載なし
・予測モデル開発:統計的に優位であった項目に、重みづけをしたポイント付けを行い、ROC、AUC計算

<結果>
・SLE症例は、226人、うち入院は66人
・通院コンプライアンスの3群で分けて入院の検討では、コンプライアンスが悪い群での入院が多かった
・多変量の結果、Cr高値、WBC高値、Hb低値、plt低値、高リスク免疫抑制剤、受診コンプライアンス不良が有意な因子として抽出された
・多変量の結果をもとに予測モデルを作成し、3点:高リスク免疫抑制剤、受診コンプライアンス不良(20%以上)、2点:WBC高値、受診コンプライアンス不良(0-20%)、1点:Cr高値、Hb低値、plt低値
・ROCカーブから3点がカットオフ

<メカニズム・この結果の解釈>
・一般的言われる生命予後にかかわる因子と類似しており、
・受診コンプライアンスとの関連は、リテラシー、医療施設とのアクセス、低所得などを反映している可能性がある
・WBC高値が項目に上がっていることについては、PSL量を反映しているのではないかと推測

<Limitation>
・単施設での検討

<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
・受診のコンプライアンスが悪い方が入院しやすいということが臨床的にも合致している。この方々に対しての教育が予後を改善する可能性がある。

<入れるべき必要な因子>
・基礎疾患
・免疫抑制剤の量
・もともとのSLE病勢

<この論文の弱点>
・高リスク免疫抑制剤の中にPSLを入れてしまったため共線性の影響がでてしまった可能性がある。PSLは重要な因子であり、独立させたほうがよかったと思われる。
・血球のカットオフ値が緩すぎる。一般的な異常値をカットオフとした場合には結果が変わる可能性がある

 

<この論文の好ましい点>
・見逃しがちな要素である受診のコンプライアンスに注目している点

 

 

【上級医のコメント】

変数のカットオフ値に問題があること、ステロイドは独立の項目としていれるべきであること、基礎疾患・免疫抑制剤の量・もともとのSLE病勢など必要な変数が入っていないこと、アウトカムに比べ変数の数が多く不安定なモデルになっている可能性があることなどから予測因子モデルとしては使うことができないですね。。しかし、実臨床的にて重要である受診のコンプライアンスを変数としており、重要な点に注目していると考えます。

 

 

担当:矢嶋宣幸

 

 

 

 

 

 

 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

私たちと一緒に学びませんか?

プログラム・募集要項はこちら


昭和大学病院
〒142-8666 東京都品川区旗の台1-5-8
アクセスマップ
電話:03-3784-8000(代表)

[初 診]月曜~土曜 8:00~11:00
[再 診]月曜~土曜 8:00~11:00(予約のない方)
[休診日] 日曜日、祝日、創立記念日(11月15日)、年末年始