スタチンは炎症性筋炎の発症と関連する?【Journal Club 20180808】

Association of Statin Exposure With Histologically Confirmed Idiopathic Inflammatory Myositis in an Australian Population

Gillian E. Caughey, Genevieve M., Saffron Ronson, MichaelWard, Timothy Beukelman, Catherine L. Hill, Vidya Limaye

Discipline of Pharmacology, Adelaide Medical School, University of Adelaide, Adelaide, Australia

JAMA Internal Medicine 2018 Jul 30. doi: 10.1001/jamainternmed.2018.2859. [Epub ahead of print]

 

P: 40歳以上の南オーストラリアに居住している方

E: スタチン内服

C: スタチン非内服

O: 炎症性筋炎(IIM)の発症

 

<セッティング>

40歳以上の南オーストラリアに居住している方

Case:The South Australian Myositis Database:1990-2014

Control:The North West Adelaide Health study:2004-2006

<研究デザインの型>

Retrospective Case control study

<Population、およびその定義>

40歳以上の南オーストラリアに居住している方

除外:薬剤情報が欠如している症例

The North West Adelaide Health studyからcontrolを取得(2004-2006年)

Case:control =1:3、年齢(±2歳)、性別にてマッチング

Sample size:OR2、スタチン投与20%、α=0.05、β=0.9、case:control=1:3

→case150、control450

 

<主な要因、および、その定義>

スタチンの内服

Case群:自己記入式質問:IIM診断時

Control群:国の調剤記録

 

<Control、および、その定義>

スタチン非内服

 

<主な因子、および、その定義>

・合併症(DM,心血管病、痛風、骨粗鬆症)

↑ validated pharmaceutical-based comorbidity index Rx-Risk-Vから定義して収集

 

<主なアウトカム、および、その定義>

・アウトカム:炎症性筋炎の発生、壊死性筋炎を除外してメイン解析

・定義:IIM(多発性筋炎、皮膚筋炎、封入体筋炎、壊死性筋炎、非特異的慢性炎症性筋炎)

組織学的に証明されているIIMのレジストリを使用(The South Australian Myositis Database)

 

<解析方法>

・単変量:unpaired and 2-tailed t tests and χ2 tests

・多変量解析:conditional logistic regression analysis

交絡:糖尿病、心血管病

・欠測対処:記載なし

・感度解析: controlとcaseのマッチングを2年以内に限定した群にて解析

 

<結果>

・IIM症例は、221人

・Case:平均年齢62.2歳、女性は132例(59.7%)

・Control:平均年齢62.1歳、女性は395例(59.7%)

・スタチンへの曝露は、Case群68例(30.8%)、Control群142例(21.5%)

・IIMのタイプ別では、多発性筋炎89例中スタチン曝露は27例(30.3%)、封入体筋炎66例中スタチン曝露は20例(30.3%)、皮膚筋炎23例中スタチン曝露は19例(82.6%)。壊死性筋炎24例中スタチン曝露は12例(50%)【Fig1】

・DMと心血管病にて調整した多変量解析では、スタチンとIIMとの関連はOR1.79。壊死性筋炎を除いての検討でもOR1.92【table2】

・感度解析:controlをcaseが診断された2年に限定してマッチングしての解析→スタチンとIIMとの関連はOR1.86、壊死性筋炎を除いての検討でもOR1.89【table2】

 

<メカニズム>

・抗HMG-CoA還元酵素抗体、HLA-DR11が関連?

 

<Limitation>

・スタチンの種類、量、期間に関しては記載がないこと→かなり頻度がすくない事例であるため

量依存の関係は認められないのでは??

・スタチン曝露のピックアップの行い方が、case群とcontrol群で異なること→

先行研究にて自己記入と処方データからのデータの差がなかったので問題なし

 

<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>

・IIM患者でのスタチン使用について論じたものではなく、筋炎患者でのスタチンの是非については

判断できない。

・スタチン種類別のIIMの発症については今後の研究が待たれる

 

<この論文の弱点・不明な点>

・筋生検が、どのくらいの頻度で、どのような症例を対象としているかが不明であり、選択            バイアスの存在が否定できない

・スタチン内服中の患者は、筋症状に対して注意するために、より筋炎が抽出されやすく、

その結果今回の差がついた可能性がある(発見徴候バイアス)。

・悪性腫瘍の情報が記載されていない。交絡とはならないが、基礎情報としては必要である。

・DM、心血管病が調整因子であった。しかしこれらがIIMと関連する可能性は低いと考える。

 

担当:矢嶋宣幸

 

<コメント>

先行研究では、壊死性筋炎との報告がなされ、抗HMG-CoA還元酵素に対する抗体の存在、スタチンにより筋組織などに上記抗体の発現の誘導、再生筋繊維に上記抗体の高発現、などの関与が推定された(N Engl J Med 2016;374:664-9)。IIMとスタチンとの関連については、今回の論文と同じチームによりIIMでの上記抗体の検討があった(Muscle Nerve. 2015;52(2):196-203)。 この論文は大規模なIIMとスタチンとの関連を示した初めての論文である。

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