SLEに対するバリシチニブ:二重盲検ランダム化、プラセボ対象、フェーズ2試験【Journal Club 20180912】

Baricitinib for systemic lupus erythematosus: a double-blind,randomised, placebo-controlled, phase 2 trial

Wallace DJ1Furie RA2Tanaka Y3Kalunian KC4Mosca M5Petri MA6Dörner T7Cardiel MH8Bruce IN9Gomez E10Carmack T10DeLozier AM10Janes JM10Linnik MD11de Bono S10Silk ME10Hoffman RW10.

THE LANCET 2018;392(222-231)
P:SLE患者
E:Baricitinib
C:placebo
O:第24週の関節炎または発疹の改善を達成した患者の割合

<セッティング>
11ヶ国、78施設(アジア、ヨーロッパ、北アメリカ、南アメリカ)

<研究デザインの型>
RCT

<Population、およびその定義>
★患者:18歳以上、スクリーニングの少なくとも24週間前に全身性エリテマトーデスと診断
SLEのACR基準の4つ以上、または2012年SLICC分類基準を満たす
★ベースラインの条件:抗核抗体(力価≧1:80)、dsDNA(抗dsDNA;≧30IU / mL)、SLEDAI-2Kで定義される活動性関節炎または発疹あり、SLEDAI-2K:4以上
・治験薬:NSAIDs、コルチコステロイド、抗マラリア薬、単一の免疫抑制薬(アザチオプリン、メトトレキセート、またはミコフェノール酸塩など)。
コルチコステロイド:投与量はPSL20mg/日以下、無作為化の2週間前に安定している。無作為化後の用量の増加は認めない。
コルチコステロイド投与量の減量は、ベースラインから第16週まで許容。以降認めない。
抗マラリア薬や免疫抑制薬の増量はいつでも許容。
・除外基準:活動性重度ループス腎炎、活動性重症CNSループス、最近の重篤な感染症

<主な要因、および、その定義>
経口バリシチニブ2mg、経口バリシチニブ4mg:24週間投与

<Control、および、その定義>
経口プラセボ:24週間投与

 <ランダム化の方法>
割りつけ:computer-generated random sequence→プラセボ、バリシチニブ2mg、バリシチニブ4mgに1:1:1。
層別化:疾患重症度(SLEDAI-2Kスコア≦10または≧10)、抗DNA(陽性または陰性)、地域(米国、ヨーロッパ、アジア、その他)

 <主なアウトカム、および、その定義>
・主要アウトカム:第24週にSLEDAI-2Kによって定義された関節炎または発疹の消失の割合
・副次アウトカム
第24週でSLEレスポンダー指数-4(SRI-4)を達成した患者の割合 別紙
探索的評価項目:血漿バリシチニブ濃度 28疼痛関節数、28腫脹関節数、皮膚紅斑性耳疾患領域および重症度指数(CLASI)活性スコア、SDIのベースラインからの変化、SELENA-SLEDAIフレア指数(SSFI)、LLDAS達成患者割合
抗dsDNA、補体(C3、C4)、コルチコステロイド用量
Numerical Rating Scale(NRS):最悪疼痛関節NRS、最悪疼痛NRS、最悪疲労NRS
有害事象の発生率および重症度:ベースラインおよび24週目、および治療終了後30日目まで.

<交絡因子、および、その定義>
RCTのためなし

 <解析方法>
・ITT解析(FAS)
効能および安全性分析には、少なくとも1回の試験薬物の投与を受けたすべての患者を対象。
・サンプルサイズ
治療群あたり約100人の患者。
パワー約81%:主要エンドポイントにおけるバリシチニブ2mg、4mg、プラセボとの間に20%の差異を検出。
期待される治療の差は以下の奏功比に基づく:バリシチニブ2mgまたは4mg:40%、プラセボ:60%
nQuery Advisor(バージョン7.0)、等倍の2グループχ²検定
・ロジスティック回帰を用いて、カテゴリー有効性エンドポイントの治療比較
:治療、領域、ベースライン疾患重症度(SLEDAI-2Kスコア<10対≧10)、およびベースライン抗dsDNA状態(陽性または陰性)
・連続有効性エンドポイントの比較
混合モデルにおけるペアワイズ比較:複数のポストベースライン値を有するアウトカムに対する反復測定値
ANCOVA:単一のポストベースライン値を有するアウトカム
・治療群間でCox比例ハザードモデルを用いて、最初のSSFIまでの時間を比較した
・安全性評価の解析方法
治験薬の少なくとも1回の投与を受け、最初のベースライン後の来院前にフォローアップに迷わなかった患者の安全性を評価した。
有害事象には、治療期間および治療後30日までが含まれ、検査室異常の要約には、治療期間および治療後60日までが含まれた。
すべての有害事象、中断、および他のカテゴリー的安全性データについてフィッシャーの正確性検定を使用した。
ベースライン値と治療法を調整し、ANCOVAを使用して連続安全性データを分析した。
・全ての分析は、両側α= 0.05で評価した。

 <結果(主要)>
table1、Fig1
・観察期間:2016年3月24日から2017年4月27日
・N=314人、女性:294人(94%)、平均年齢:44歳(SD 12)、平均罹病期間11年(SD 9)
・平均SDI:0.5(SD 0.9)、平均SLEDAI-2Kスコア:8.9(SD 3)
・平均疼痛関節数:8.3(SD 6)、平均腫脹関節数:5.3(SD 5)、CLASI指数は:4.2(SD 5)
・割付:プラセボ(n = 105)、バリシチニブ2mg(n = 105)、バリシチニブ4mg(n = 104)
table2、Fig2,3
・24週目のSLEDAI-2K関節炎または発疹の消失
バリシチニブ4mg:104人の患者の70人(67%)が達成(オッズ比[OR] vsプラセボ1.8、95%CI 1.0〜3.3、p= 0.0414)
バリシチニブ2mg:105人の患者の61人(58%)が達成(オッズ比[OR] vsプラセボ1.3、95%CI 0.7〜2.3、p= 0.39)
・第24週SRI-4反応達成割合:
プラセボ群対4mg(67 [64%]; OR2.0,95%CI 1.2-3.6;p=0.0151)
プラセボ群対2mg(54[51%]; OR1.3,95%CI 0.7-2.2;p=0.44)
・有害事象  table3
有害事象:プラセボ群68例(65%)、バリシチニブ2 mg群75例(71%)、バリシチニブ4 mg群76例(73%)。
重篤な有害事象:バリシチニブ4mg:10(10%)、バリシチニブ2mg:11(10%)、プラセボ:5(5%)を受けた患者10名(10%)死亡、悪性腫瘍、または主要な有害な心血管イベントなし
重篤な感染:バリシチニブ4mg:6(6%)、バリシチニブ2 mg:2(2%)、プラセボ:1(1%)

<メカニズム>
バリシチニブは、JAK1及び2を阻害し、シグナル伝達兼転写活性化因子(STAT)のリン酸化及び活性化を抑制することにより、JAK-STATシグナル伝達を阻害→IFNの産生抑制に関与。I型インターフェロン:全身性エリテマトーデスの病因に重要な役割を果たすことが示されている。

 <Limitation>
脱落が各群で18~22例あり。
重症病態が除外されている。
ランダム化後の免疫抑制剤強化の可能性があること。
11施設でありどこまで関節や皮膚の評価方法のレベルが均一であったか。評価者が毎回変わっている可能性がある。
観察期間が短い(RCTの限界)

 <どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
第3相でのより多くの患者での結果がまたれる。

<自分で考えた交絡因子>
RCTのためなし

 <この論文の好ましい点>
FASを使用したITT解析であること。
CLASI、28関節、SRI4、LLDAS、PGA、SFI、BILAG、SLEDAI、SDIなど全てを網羅して取得していること。

担当:柳井亮

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