Tofacitinib or Adalimumab versus Placebo for Psoriatic Arthritis
Philip Mease, M.D., Stephen Hall, M.D., Oliver FitzGerald, M.D., Désirée van der Heijde, Ph.D., Joseph F. Merola, M.D., Francisco Avila-Zapata, M.D., Dorota Cieślak, Ph.D., Daniela Graham, M.D., Cunshan Wang, Ph.D., Sujatha Menon, Ph.D., Thijs Hendrikx, Ph.D., and Keith S. Kanik, M.D.
Swedish Medical Center and University of Washington, Seattle, Washington, USA.
N Engl J Med. 2017 Oct 19;377(16):1537-1550
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<サマリー>
csDMARD無効の乾癬性関節炎患者に対するtofacitinibの効果を検討した
プラセボと比較しtofacitinibはACR20改善、HAQ-DIの減少に効果を認めた。
安全性について、tofacitinibは感染症や悪性腫瘍の発症に関与する可能性が示唆された。
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P:csDMARD無効の乾癬性関節炎患者
E:tofacitinib 5mg or 10mg 投与
C:プラセボ
O:3か月後のACR20改善、HAQ-DIの減少
<セッティング>
126施設
2014年1月から2015年12月まで試験が行われた。
<研究デザインの型:RCT、横断研究、前向きコホートなど>
ランダム化プラセボ対照二重盲検、第Ⅲ相試験
<Population、およびその定義>
■inclusion
18歳以上、CASPAR分類基準を満たす乾癬性関節炎患者
診断から6か月以上経過
activeな関節炎と尋常性乾癬
csDMARD 無効、TNF阻害薬未使用
TNF阻害薬以外のbio製剤を使用した場合は、6ヵ月以上休薬していること
■exclusion
重篤な臓器障害:心、肺、腎、肝、血液、内分泌、神経
結核感染(潜在性含む)
帯状疱疹
試験開始6か月以前に入院での非経口抗生剤投与を要した
PsA以外のリウマチ膠原病疾患
<主な要因、および、その定義>
登録された患者を2:2:2:1:1にランダムに割り付け
1. tofacitinib 5mg 1日2回 経口内服
2. tofacitinib 10mg 1日2回 経口内服
<Control、および、その定義>
3. adalimumab 40mg 2週に1回 皮下注射
4. プラセボ投与3か月後にtofacitinib 5mg 1日2回 経口内服
5. プラセボ投与3か月後にtofacitinib 10mg 1日2回 経口内服
<主なアウトカム、および、その定義>
■primary end point
試験開始3か月、12か月時点のACR20改善、HAQ-DIの減少
■secondary end point
PASI75、Leeds enthesitis index score、dactylitis severerity score、SF36、FACIT-F、ACR50、ACR70、modified total sharp score
有害事象の検討
<交絡因子、および、その定義>
なし
<解析方法>
全ての患者はランダム化され、tofacitinib、adalimumab、placeboの投与を少なくとも1回受けた患者は統計に含まれた。
Adalimumabはactive controlとして位置づけされ、tofacitinibとの比較は行わなかった。
5%レベルのタイプ1エラーをコントロールするためにsequential hierarchical testingを行った。
<結果>
422人がランダムに割り付けられ373人が試験を完遂した。
【primary end point】
■試験開始3か月時点のACR20改善
5mg tofacitinib グループ:50%(P=0.01)
10mg tofacitinib グループ:61%(P<0.001) プラセボグループ:33%
■試験開始3か月時点と開始時のHAQ-DIの差
5mg tofacitinib グループ:-0.35(P=0.006)
10mg tofacitinib グループ:-0.40(P<0.001)、プラセボグループ:-0.18
※adalimumab:ACR20 52%、HAQ-DI -0.38
【secondary end point】
■試験開始3か月時点のACR50改善
5mg tofacitinib グループ:28%(P<0.001)
10mg tofacitinib グループ:40%(P<0.001) プラセボグループ:10%
プラセボ vs tofacitinib 10mg
Dactylitis Severity Score、FACIT-F、SF-36の変化はプラセボと比較してprimary end pointと同様の方向であった。これらの結果の有意性については検討されていない。
12か月まで観察されたsecondary end pointのベースラインからの変化は3か月目の数値と同じであった。
■安全性
3か月間の観察で有害事象の割合
5mg tofacitinib 39%、10mg tofacitinib 45%、adalimumab 46%、placebo 35%
12か月間の観察で重篤な有害事象の割合
5mg tofacitinib 7%、10mg tofacitinib 4%、adalimumab 8%
帯状疱疹、悪性腫瘍の発生はいずれもtofacitinibを投与された患者によるものあった。
<結果の解釈・メカニズム>
Tofacitinib 5mg, 10mgによる治療効果をプラセボと比較することによって、csDMARDで治療効果がなかったPsAに対するtofacitinibの有用性が示された。
安全性について、tofacitinib群で帯状疱疹、悪性腫瘍の発症がみられたが機序は不明である。
<Limitation>
他の生物学的製剤との比較
TNF阻害薬の効果が乏しい症例に有効かどうか
<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
既存のcsDMARDで治療効果のないPsA患者に対してtofacitinibは治療選択となる可能性がある。
しかし、帯状疱疹、悪性腫瘍の発症リスクがあがることについては注意を要する。
Tofacitinib投与群のなかで感染症の発症に寄与する因子の検討
<この論文の好ましい点>
End pointの明記
治療効果だけではなく安全性にも注目した点
担当:猪狩雄蔵