全身性エリテマトーデス患者における移行期医療の再入院率やQOLへの影響:RCT【Journal Club 20181003】

Effects of transitional care on self-care, readmission rates, and quality of life in adult patients with systemic lupus erythematosus:a randomized controlled trial

全身性エリテマトーデス患者における移行期医療の再入院率やQOLへの影響:RCT)

著者 Xia Xie, Yuqing Song, Hui Yang, Anliu Nie, Hong Chen*† and Ji-ping Li†

2018 Aug 16;20(1):184-191.

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<サマリー>全身性エリテマトーデスにおいてセルフケア能力の低下,頻回の再燃は重大な問題点である.
海外の文献で16.5%のSLE患者は30日以内に,35%が1年以内に再燃や新規症状による再入院をしている.今回訪問看護などで広く使用されているオマハシステム(心不全や糖尿病で有効性が明らかにされている)を入院中から退院後のSLE患者に用いて,再入院率,セルフケア能力,QOLの改善が見られるかを検討し,介入群の方が有意差を持って上記アウトカムの改善が見られることが証明された.

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P:Department of Rheumatology of the West China Hospital ,Sichuan Universityに入院したSLE患者
I:入院中から退院して移行期医療を受けたもの
C:通常通りの医療を受けたもの
O:再入院率,セルフケア能力,QOL

 <セッティング>
2016年6月〜12月の間にSichuan University West China Hospitalを退院したSLE患者

<研究デザインの型:RCT、横断研究、前向きコホートなど>
単施設 測定者盲検化 並行群間試験 RCT

<Population、およびその定義>
サンプルサイズは導入時と12週後のself-careを解析したパイロットスタディを元に計算した
αレベル5%,power80%を達成する各群56名,drop out率を20%とし,136名を採用した
Inclusion criteria
18歳以上でSLEと診断を受け,原病の発症または再燃で入院加療を要したもの
検者の判断でコミュニケーション能力が十分なもので電話を持っており,研究の同意が得られた者.
Exclusion criteria
その他の介入研究に参加している者

<主な介入、および、その定義>
移行期医療 Omaha Systemを用いた 以下オマハシステムとは・・・
(患者の現在抱える問題,それに対する介入,問題解決のアウトカムを明らかにする評価方法)
「問題」,「介入」,問題別評定」の3つの要素から構成される.
*「問題」は生理的問題,心理社会学的問題,健康関連問題,環境的問題の4領域からなりその下位に計42の問題.
*「介入」は(教育,指導,そしてカウンセリング),(治療,処置),(ケースマネジメント),(調査)の4つのカテゴリ
*「問題別評定」は「理解」,「態度」,「状態」の3つの領域を5段階のリットカート尺度で問題毎に評価する

本研究では (Table S1参照)

23のSLEに関連した「問題」,生理的問題(皮膚,痛み,口腔内環境,感染管理,神経筋骨格系,呼吸,循環,泌尿器,排泄)を9つ,心理社会学的問題(メンタルヘルス,怠慢,社会的接触,対人関係)の4つ,健康関連問題(睡眠と休息パターン,服薬状況,栄養,身体的活動,嗜好品の使用,清潔・整容,家族計画,ヘルスケアの管理)の8つ,環境的問題は(衛生,隣人・職場の安全)2つを採用した.
個々の「問題」は理解,態度,状態を5段階のリッカート尺度を用いて評定された.それぞれの問題に対する介入はOmaha system 評価法に則り2名のリウマチ専門医,3名の看護師によって評価された.
退院してから1,4,8,12週後に介入,評定が行われた.2,3,6,10週後には電話でのカウンセリングも実施された.

<Control、および、その定義>
患者は簡潔な医療指導と健康アドバイスを退院時に施行された

<主なアウトカム、および、その定義>
主要評価項目
退院3ヶ月後の
再入院率,Exercise of Self Care Agency Scale(ESCA), 臨床アウトカム,Sf-36(HrQOL)

*ESCAとは
セルフケア能力(看護学用語)を測定するための指標で43項目より成り,それぞれに5段階尺度で回答する.
(0~172点満点)で点数が高いほどセルフケア能力が高いことを示す.

その他測定項目
年齢,性別,教育レベル,婚姻状態,雇用状態,健康保険,罹病期間の情報は2名の盲検化された調査員によって収集された.
また,同調査員によってベースの疾患活動性(SLEDAI-2K)と退院後30日,60日,90日内の再入院をカルテをもとに情報蒐集された.

<交絡因子、および、その定義>
RCTのためなし

<解析方法>
Mean SD, %を用いた.患者背景はchi二乗検定,student t検定を用いた.再入院率の解析にもchi二乗検定を用いた.ESCAとSF-36は共分散分析を用いて解析した.

<結果>
・Fig1.Patient flowから64名介入群と61名の通常群であった.PPS(プロトコール遵守集団)と思われる.
・Table2)患者背景 患者の平均年齢は37.1(±14.1)歳で88%が女性であった.73.6%が既婚で52%が高卒以上,78.4%が非雇用者で,65.6%が医療保険に入っており,半分以上が罹病期間3年未満であった.SLEDAI-2Kの平均は10.3で,過去1年の入院歴を64.8%で認めた.52%がGCとHCQ,20%がGCとISDであった.
・Table3,4)介入群は有意差を持ってセルフケア能力,QOL(SF―36)が高く,再入院率は低いという結果であった.

<結果の解釈・メカニズム>
問題点を明確にすることにより患者のやる気を引き出し,リテラシーの向上につながったと思われる.オマハシステムと電話での

フォローによって医療従事者と患者間の信頼関係がより強力になった.QOLに関しては過去の文献からも向上するものと,低下するものの報告があり,患者のニーズに合わせて行く必要性はある.

<Limitation>
・単施設での研究
・短期的なアウトカムのみの検証であること
・コストのデータはないこと(医療費を削減したという結果は言えない)
・海外のデータであり日本の方がコンプライアンスは優れていることが予想される(再入院率などを鑑みると).
そのため日本人にとってこの介入が有効か(そもそも介入しなくても同じ結果になる)

<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
・網羅的にアプリなどで問題点,介入点などを抽出できるシステムのきっかけになる可能性

<この論文の好ましい点>
・仮説を宣言している点
・論文が読みやすい

 

担当:小黒奈緒

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