Effect of subcutaneous tocilizumab treatment on work/housework status in biologic-naïve rheumatoid arthritis patients using inverse probability of treatment weighting: FIRST ACT-SC study
(BIOナイーブRA患者に対するTCZ皮下注射の就労への影響-傾向スコアを用いて-)
著者 Yoshiya Tanaka et al. University of Occupational and Environmental Health, Japan.
Arthritis Res Ther. 2018 Jul 20;20(1):151-165
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<サマリー>
・RA治療において、疾患活動性の改善のみならず、労働生産性、QOLを維持・向上することは重要である。
・TCZ-SCは、労働生産性を維持しつつ、QOLの改善に結びつけられる有効性のある薬剤である。
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P:RA患者
E:TCZ-SC ± csDMARDs
C:csDMARDs
O:WPAI-OWI変化率
<セッティング>
・日本全国82施設(含:昭和大学)
・登録期間:2013/10-2015/9
・収集期間:2013/10-2017/12
<研究デザインの型:RCT、横断研究、前向きコホートなど>
前向きコホート
<Population、およびその定義>
・生物学的製剤未使用のRA
・中等度疾患活動性以上(DAS28-ESR≧3.2)
・就労、家事労働者
・生物学的製剤の治療が妥当であると主治医が判断する患者
・csDAMRDs群は、増量、新たなcsDMARD追加または切り替えの患者
・除外基準:トファシチニブ使用患者、患者同意撤回、副作用、主治医判断で中止した患者、TCZ-SC群の中で他のBIOに変更した患者、csDMARDs群の中で、TCZを含むBIOやトファシチニブを開始した患者
<主な要因、および、その定義>
・初回BIOとして、TCZ-SCを使用したRA患者
<Control、および、その定義>
・csDMARDs使用
<主なアウトカム、および、その定義>
・52週時におけるWPAIを用いた就労者のPercent overall work impairment (OWI)
・その他の評価項目
WPAI: Absenteeism, Presenteeism, activity impairment
疾患活動性:DAS28-ESR、CDAI、SDAI
QOL:HAQ-DI、EQ-5D、K6の変化率
<交絡因子、および、その定義>
・年齢、性別、罹病期間、給料、教育水準、環境、ステロイド・MTX使用状況、RF、CCP抗体、class, stage, DAS28-ESR, CDAI, SDAI, OWIの割合、EQ-5D、HAQ-DI、K6
<解析方法>
・プロペンシティースコアを用いたIPTW法
・サンプルサイズの設計:OWIの変化が30→40%と予想。52週後のOWIの変化は、40%(TCZ群)、15%(csDMARDs群)と予想。10000回のモンテカルロシュミレーション、有意差5%、検出力80%。就労者は各群160例ずつ、離脱率50%と予想して、合計800例、各群400例。就労者は、各群200例以上と計算。
・mITT (modified intention-to-treat)解析施行
・変化量はIPTW(inverse probability of treatment weighting)法にて調整。
・欠測対処:LOCF(last observation carried forward)法にて対処
・交絡調整:上記の因子を、propensity scoreを算出IPTW法にて解析
・感度解析:propensity scoreなどにて調整済?
・統計ソフト:SAS9.3
<結果>
・TCZ群は377例、csDMARDs群は347例(Fig 1)
・主要評価項目:WPAI-OWIの改善は、プロペンシティースコアによるIPTW法による検討では、群間に有意差なし。WPAIの他の項目では、AIでHWのみ有意差あり。
・EQ-5D、K6のHW群のみ有意差あり。
・WPAI-AIの指標においては就労者、家事労働者を含む全体集団では、TCZ-SC群の優越性があり。
・就労者でも有意差はないものの、改善傾向が示された。(Table 2、Fig 2)
<結果の解釈・メカニズム>
・TCZ-SCは、全身の炎症や疲労を抑制することによって生産性を維持・改善しつつQOLを高めた
・ベースラインのHAQ-DIが高値であるほど、TCZ-SCの労働生産性の改善が大きくなることが示唆された。
<Limitation>
・csDMARDsの容量変更や追加の制限なし
・労働に対する拘束力または強制力が影響した可能性
・実臨床での観察研究であり、ベースラインの偏りや盲検化できないことによる心理的影響
<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
・TCZは疾患活動性のみならず、QOLを改善させ、就労状況を改善させる
・疾患活動性が高く、就労に悪影響を及ぼしているRA患者さんには、積極的に治療すべし
<この論文の好ましい点>
・背景のものすごく違っている群をプロペンシティースコアとIPTW法を駆使して調整していること
担当:三輪裕介