強皮症のおけるトシリズマブ皮下注の有効性と安全性:第Ⅱ相無作為化比較試験オープンラベル期間(faSScinate)【Journal Club 20181107】

Safety and efficacy of subcutaneous tocilizumab in systemic sclerosis: results from the open-label period of a phase II randomised controlled trial (faSScinate).

著者名Khanna D et al. University of Michigan Scleroderma Program, Ann Arbor, Michigan, USA.

2018 Feb;77(2):212-220

Background: 強皮症の肺病変は直接死因になりうる重要な合併症だが有効な治療は確立されていない。IL-6は強皮症に病態に関与することが報告されている。強皮症患者の内皮細胞および皮膚線維芽細胞ではIL-6の発現が亢進。強皮症、特に初期のびまん性の皮膚病変をもつ患者では血清IL-6値が上昇。IL-6が病気の進行および転帰のマーカーなるとの報告。IL-6はCRP値と相関し、dcSScではCRPが上昇。強皮症にTCZを使用した予備試験の結果では皮膚硬化と関節炎が改善した。faSScinate試験(TCZとプラセボの安全性と有効性を比較した、48Wまでの二重盲検ランダム化比較試験)は既に論文化され、TCZは臨床的に皮膚硬化に有効そうだが統計的有意差はつかなかったと報告している。48W後にオープンラベルとし、プラセボ群にTCZを投与後の96Wでの有効性、安全性を評価する。

P: 強皮症患者
E: トシリズマブ継続(weekly 162mg s.c.
C: プラセボ → 48W後にトシリズマブ開始
O:  modified Rodnan Skin Score (mRSS) %predicted FVC)

<セッティングと研究デザインの型>
多施設
無作二重盲検プラセボ対照比較(48Wまで) 第Ⅱ相臨床試験試験
オープンラベル延長期(48-96W)
カナダ、フランス、ドイツ、英国、米国の35施設

<Population、およびその定義>
18歳以上、1980ACR分類基準、Raynaud現象の徴候または症状から5年未満、肘・膝より近位部に皮膚硬化を認めmRSS:15-40。活動性がある〔直近1-6ヶ月以内にmRSS3点以上の増加、1年以内のSSc発症、体幹部のmRSS2以上増加または新規皮膚硬化(2つ以上の領域でmRSS1以上増加)、初発例では皮膚の厚みの増加、≥1 tendon friction rub +CRP≧1mg/dL/ESR≧28mm/h/Plt≧33万。

<主な要因、および、その定義>
Weekly TCZ 162mg s.c.

<Control、および、その定義>
48Wまでプラセボ→48Wから96WまでTCZ
Escape therapy(MTX, HCQ, MMF ):24週以降に強皮症が増悪した場合に可

<主なアウトカム、および、その定義>
Baselineに比較した96W時のmRSSの平均変化(10%, 40%, 60%)
Minimal clinically important difference (MCIS≧4.7)を満たす患者の割合
% predicted FVC、% predicted DLco、医師全般的評価VAS、患者全般的評価VAS、HAQ-DI、Functional Assessment Chronic Illness Therapy(FACTT)-疲労スコア, Pruritus 5-Dかゆみスケール、安全性評価(有害事象、重症有害事象:100患者人年あたりの割合)

<交絡因子、および、その定義>
なし

<解析>
modified ITT解析
48W以降はオープンラベルになっており正式には2群を比較にはならないが、二貢検定のためPearson Clopper 法で95% CIを計算し、有害事象はポアソン分布でCIを計算し評価した。

<結果>
Figure 1
二重盲検の48Wではプラセボ群31例、TCZ群30例
患者は最終的にプラセボ→TCZ群が24例、TCZ継続群17例が96週まで試験を継続
Escape therapy(MTX, HCQ, MMF 24週以降に可)はプラセボ群で18人(12人が二重盲検下、6人がオープンラベル下)、9人(5人が二重盲検下、4人がオープンラベル下)がTCZ群で受けた

Table 1 : Baselineの患者背景は二重盲検下、オープンラベル下ともほぼ一緒

Figure 2:皮膚硬化 平均[SD; 95%CI]
・48WにおけるベースラインからのmRSSの変化はプラセボ群で-3.1[6.3 (-5.4 to -0.9)]、TCZ群で-5.6[9.1(-8.9 to -2.4)]
・96WにおけるベースラインからのmRSSの変化はプラセボ→TCZ群で-9.4[5.6 (-8.9 to -2.4)]、TCZ継続群で-9.1[8.7(-12.5 to -5.6)]であった

Table 2:医師および患者の臨床的評価

・48から96WにおいてmRSS≧20%, ≧40%, ≧60%の改善、Minimal clinically important difference (MCIS≧4.7)を満たす患者の割合はTCZ継続群で段階的改善を得れた。
・TCZ群で48WにおいてHAQ-DI, 医師全般評価、患者全般評価の減少、倦怠感スコアの増加を認め、オープンレベル後も改善を維持した。さらにプラセボ→TCZ群ではオープンラベル後により大きな改善を認めた。

Figure 3:%pFVC
・46Wの時点でのプラセボ群83%、TCZ群54%に%pFVCの減少を認めたが、96Wではプラセボ→TCZ群で42%、TCZ継続群で46%と%pFVCが減少した患者割合の減少を認めた。
・オープンラベル後TCZで治療された両群では10%を超える減少した患者は認めなかった。
・96Wにおける減少例はプラセボ→TCZ群で10/24 [42% (95%CI 22% to 63%)]、TCZ継続群で12/26 [46% (95%CI 27% to 67%)]

Table 3:有害事象 重症感染症(rate/100 Pts-year (95%CI))
重症有害事象の割合は48Wにおいてプラセボ群76.1(50.6-110.0)、TCZ群で66.7(42.3-100.1)だったが48-96Wではプラセボ→TCZ群36.0(18.0-64.4)、TCZ継続群で16.5(5.4-38.5)であった。
全経過中、感染症が最も多い有害事象だった。プラエボ→TCZ群ではTCZ治療へ切り替え後に重篤な感染が増加(特に変更後の数カ月)したが、TCZ継続群では認めなかった。
48W プラセボ群で10.9 (3.0 to 27.9)、TCZ継続群で34.8 (18.0 to 60.8)
96W プラセボ→TCZ群で19.6 (7.2 to 42.7)、TCZ継続群で0.0 (0.0 to 12.2)

<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
発症初期の炎症がある、浮腫期の強皮症患者にはTCZが有効な可能性が示唆される。肺の拘束性障害にも有効である可能性も示唆される。

<Limitation>
もともと48Wの試験をオープンラベルとし、その後は全例TCZ投与されていたため厳密な統計的比較は困難。中断率が高い。選択バイアス(48Wまでの有害事象での患者脱落で健康な患者が選択、TCZ投与の公開)。

<この論文の弱点>
TCZの皮膚硬化改善へのFVCの改善を示しているが強皮症関連肺病変に特化した試験ではない。長期的な治療効果の判断は難しい。

<好ましい点>
患者数を増やして第Ⅲ相臨床試験を施行し2018ACRで48Wまでの結果を公表。
皮膚硬化(mRSS)はTCZ群優位で改善を得ていたが有意差つかなかった(p=0.093)。%pFVCについては低下患者の割合はTCZ群で少なく(50.5% vs 70.3%)、経時的なBaselineからの変化はプラセボ群に対し有意に少なかった(-0.4 vs -4.6, p=0.0002)。

 

担当:若林邦伸

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