Trial of Tocilizumab in Giant-Cell Arteritis (GIACT Trial)
J.H. Stone, K. Tuckwell, S. Dimonaco, M. Klearman, M. Aringer, D. Blockmans, E. Brouwer, M.C. Cid, B. Dasgupta, J. Rech, C. Salvarani, G. Schett, H. Schulze‑Koops, R. Spiera, S.H. Unizony, and N. Collinson
Massachusetts General Hospital,55 Fruit St., Boston,
N Engl J Med. 2017 Jul 27;377(4):317-328
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<サマリー>
側頭動脈炎に対するトシリズマブは、寛解維持の割合が高く、ステロイド累積量が少なく、再発まで期間は長い。
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P:GCA患者
I:TCZ162㎎毎週+PSL減量26週レジメ
TCZ162㎎隔週+PSL減量26週レジメ
プラセボ+PSL減量26週レジメ
プラセボ+PSL減量52週レジメ
O: 52週でのステロイドフリー寛解
<セッティング>
国際共同研究(アメリカ、カナダ、ベルギー、イタリア、英国など)
<研究デザインの型:RCT、横断研究、前向きコホートなど>
RCT
<Population、およびその定義>
GCA(初発、再燃)
50歳以上
6週間以内に活動性あり、ESR上昇あり
生検にて確定診断or大血管炎
PSL20-60㎎を内服中(登録時)
除外基準:6週以内にmPSL100㎎以上点滴
<主な要因およびコントロール、および、その定義>
①TCZ162㎎毎週+PSL減量26週レジメ
②TCZ162㎎隔週+PSL減量26週レジメ
③プラセボ+PSL減量26週レジメ
④プラセボ+PSL減量52週レジメ
<主なアウトカム、および、その定義>
プライマリアウトカム:ステロイドフリー寛解維持
セカンダリアウトカム:
①52週でのPSL蓄積
②寛解後の再発までの時間
③52週までのQOLの変化(SF36,患者VAS)
安全性評価
<解析方法>
ランダム化は、PSL30㎎以下・以上にて層別化
プライマリ解析:2つのTCZ群と26週漸減レジメの比較
セカンダリ解析:2つのTCZ群と52週漸減レジメの比較
ITT解析
pを0.01にて判定(primary、main secondary)
Primaryは、Cochrane-Mantel-Henzel test (ベースライン:PSLにて調整)
52週漸減レジメと非劣勢試験も行った
寛解後の再発までの時間の解析:kaplan-meiyer、COX比例(ベースラインPSLにて調整)
52週でのPSL蓄積:nonparametric van Elteren test
QOL:repeated measure analysis
感度解析:寛解の定義にCRPを含めないで解析
<結果>
86%が試験終了
52週時点で寛解維持は
- TCZ162㎎毎週+PSL減量26週レジメ→56%
- TCZ162㎎隔週+PSL減量26週レジメ→53%
- プラセボ+PSL減量26週レジメ→14%
- プラセボ+PSL減量52週レジメ→18%
プライマリ解析:リスク差は42%(99%CI 18-66)、39%(99%CI 12-99)
(それぞれp<0.001)
セカンダリ解析:リスク差は38%(99%CI 18-59)、35%(99%CI 10-60)
(それぞれp<0.001)
感度解析:プライマリ解析、セカンダリ解析ともに同様の結果
再燃:①23%、②26%、③68%、④49%
再燃までの時間(③とくらべて):
①HR0.23(99%CI 0.11-0.46)
②HR0.28(99%CI 0.12-0.66)
サブグループ解析:(初発例、再発例)
初発例: ① 26週と比較:HR0.25 (99% CI, 0.09-0.70)
52週と比較:HR0.44 (99% CI, 0.14-1.32)
② 26週と比較:HR0.20 (99% CI, 0.05-0.76)
52週と比較:HR 0.35 (99% CI, 0.09-1.42)
再発例:① 26週と比較:HR 0.23 (99% CI, 0.09-0.61)
52週と比較:HR 0.36 (99% CI, 0.13, 1.00)
② 26週と比較:HR 0.42 (99% CI, 0.14-1.28)
52週と比較:HR 0.67 (99% CI, 0.21-2.10)
ステロイド蓄積量:①1862 mg、②1862 mg、③3296 mg、④3818 mg
(それぞれp<0.001)
重篤AE:①15%、②14%、③22%、④25%
<Limitation>
プライマリ解析での初発例、再発例での検討がされていない
生命予後にかかわるのは、大血管病変(動脈瘤、解離)であり、その群での検討が必要。
PSLの投与量に幅があり実際にどの量に設定するかについての情報はえることができない。
Dxから導入までの時期を6週まで許容しているために、どの時期にいれるのが適切かの情報はえることができない。
<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
人種により罹患割合が大きく異なるため、治療に対しても反応が異なる可能性があり
アジア人での検討は必要と考える。
<この論文の好ましい点>
割付の際にもっとも影響するであろうPSL量で層別化したこと。
担当:矢嶋宣幸
<コメント>
2018年にNICEのGCAに対するTCZ使用にたいするガイダンスが発表されており、使用は再発例・難治例にのみ限定されている。ステロイド単剤と比しても1QALYあたり約360万円であり、医療経済的にも妥当である、ことからガイダンスに掲載された根拠である。一方で高安動脈炎に対するTCZは、難治例を対象としてRCTが1本あり、再発まで期間がエンドポイントであった。HR0.41と点推定値はよいものの95%CIがひろく結果は有意ではなかった。サンプルサイズの見積もりが不十分であったのであろうか。この結果をもって諸外国では保険適応は通していないが、日本では保険収載がされており、そのプロセスがどのようであったかは興味がある。