Clinical and Immunologic Predictors of Scleroderma Renal Crisis in Japanese Systemic Sclerosis Patients With Anti–RNA Polymerase III Autoantibodies
Yasuhito H
Arthritis Rheumatol. 2015 Apr;67(4):1045-52.
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<サマリー>
成人日本人583人の全身性強皮症患者に対して商業利用での抗RNAポリメラーゼⅢ(抗RNAPⅢ)抗体(ELISA)を計測した。37人(6%)が陽性であり、583人中17人(2.8%)が腎クリーゼを発症し、抗RNAPⅢ抗体陽性患者では9/37人とそれ以外と比較して高率だった。特に抗RNAP Ⅰ/Ⅱ/Ⅲ陽性例と抗RNAP III抗体価 ≥157は強皮症の進展に関連した。
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P:ACR分類基準でSSc診断基準を満たした日本人成人
E:抗RNAポリメラーゼⅢ抗体陽性
C:抗RNAポリメラーゼⅢ抗体陰性
O:腎クリーゼ発症
<セッティング>
1995-2012年の金沢大学、社会保険中京病院を受診した患者
<研究デザインの型:RCT、横断研究、前向きコホートなど>
前向きコホート研究
<Population、およびその定義>
・強皮症ACR分類基準を満たす
・CRESTの症状3/5以上
・レイノー症状、異常なnailfold capillaries、強皮症関連抗体陽性 すべて満たす
いずれかを満たす。
<主な要因、および、その定義>
・抗RNAP陽性
<Control、および、その定義>
・抗RNAP陰性
<主なアウトカム、および、その定義>
強皮症性腎クリーゼ
<交絡因子、および、その定義>
なし
<解析方法>
イェイツのカイ2乗検定とフィッシャーの正確確率検査、強皮症での腎クリーゼ発症リスクの解析にUnivariate logistic regression analysis、多変量解析
<結果>
・583人の強皮症患者中37人(6%)がRNAP陽性
・583人中17人(2.9%)が腎クリーゼ(SRC)を発症した。全例びまん型強皮症
・抗RNAP III陽性では抗RNAP III 陰性と比較してSRC発症が多かった。
((9 of 37 [24%])vs 8 of 546 [1%])(OR 21.6 [95% CI 7.8–60.3], P _ 0.00001)
・ACE使用に関わらずSRCでRNAPⅢ陽性例では死亡例なかったが、陰性例では2つの死亡例
・抗RNAP陽性のSRC発症例では8人ステロイド投与されており7人がPSL>15mg/day。SRCに先行して最大量のステロイド投与を受けていた。SRC発症しなかった症例でも23/28人がステロイド投与されており20/23人がPSL>15mg/day以上使用されていた。
・MRSSが抗RNAPⅢ抗体価と正の相関を認めた。
・腎クリーゼのリスク因子の抽出では抗RNAPⅠ/Ⅱ/Ⅲ陽性(OR 16.9 [95% CI 1.8–156.3], P _ 0.0055) と抗RNAPIII抗体価 >157 (OR 33.5 [95% CI 4.2–268.2], P _ 0.0001)、MRSSやステロイド使用量はリスクとならなかった。
<結果の解釈・メカニズム>
・既存の報告で抗RNAPⅢ抗体とSRCの関連は報告されている。SRCは抗RNAP I/II/III (40%)で、抗RNAP I/III (14.3%)より高いという報告もあり。
・SRCの有無に関係なく抗RNAPⅢ陽性例ではステロイドで治療されている
<Limitation>
・ステロイドの他の免疫抑制剤や併用薬について記載なし。
・抗RNAPⅢ抗体、測定時期が診断時
<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
・抗RNAPⅢ抗体陽性症例で抗RNAPⅡ抗体を測定する。
<この論文の好ましい点>
・日本人での検討
担当:林智樹