Rivaroxaban Versus Vitamin K Antagonist in Antiphospholipid Syndrome
抗リン脂質抗体症候群の患者さんには、イグザレルトとワーファリンの二次予防効果は同じ?安全性は?
Josep Ordi-Ros, MD, PhD; Luis Sáez-Comet, MD, PhD; Mercedes Pérez-Conesa, MD; Xavier Vidal, MD, PhD; Antoni Riera-Mestre, MD, PhD; Antoni Castro-Salomó, MD, PhD; Jordi Cuquet-Pedragosa, MD; Vera Ortiz-Santamaria, MD; Montserrat Mauri-Plana, MD, PhD; Cristina Solé, PhD; Josefina Cortés-Hernández, MD, PhD
Vall d’Hebrón Research Institute, Barcelona, Spain
Ann Intern Med. 2019;171(10):685-694.
PMID: 31610549 DOI: 10.7326/M19-0291
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<サマリー>
抗リン脂質抗体症候群の患者さんに対して、塞栓症状を予防するために、リバロキサバンとワーファリンで効果に差がないかを検討した非劣勢RCT。3年間で塞栓発生の非劣勢を示すことはできなかった。出血のリスクは変わらなかった。
P:抗リン脂質抗体症候群患者
I:リバロキサバン(商品名:イグザレルト)
C:ワーファリン
O:プライマリアウトカム:塞栓症状
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<背景・目的>
抗リン脂質抗体症候群(APS)の塞栓症の二次予防に対しては、ワーファリンが一般的に用いられてきた。しかしながら、適切なINRコントロールでも年間2-5%が塞栓症を再発している。リバロキサバンはAPSの二次予防に対しては、報告されている成績は一定でない。最近、静脈血栓の既往のあるAPSを対象としたワーファリン(INR2-3)とリバロキサバンを比較した2つのRCTでは、予防効果が示唆されたが、3つのAPS抗体陽性者では塞栓再発が増えた。
今回の研究では、動脈塞栓もしくは静脈塞栓の既往をもつAPS患者さんを対象として、ワーファリン(INR2-3)とリバロキサバンを比較して効果・副作用を検討する非劣勢RCTを行った。
<セッティング>
・スペインの6大学病院
<研究デザインの型>
・多施設、オープンラベル、ランダム化比較試験、非劣勢試験
<Population、およびその定義>
・抗リン脂質抗体症候群患者(塞栓症状の既往、抗リン脂質抗体が2回陽性)
・除外基準:出血性素因、3カ月以内に脳出血・脳梗塞・消化管出血、妊娠/授乳中、腎障害(eGFR 30ml/m2/1.73m2以下)、ALP高値、肝硬変(Child Pugh B以上)、ワーファリン内服不良、シトクロムP4503A4阻害剤
<主な曝露、および、その定義>
・リバロキサバン(20㎎、腎機能障害あり→15㎎)
*両群ともにアスピリン、抗マラリア薬、免疫抑制剤の追加は主治医の判断にゆだねられる
*割付は、SLE有無、施設を層別して実施
<主なコントロール、および、その定義>
・ワーファリン(目標INR2.0-3.0、血栓再発者→目標INR3.1-4)
*両群ともにアスピリン、抗マラリア薬、免疫抑制剤の追加は主治医の判断にゆだねられる
<主なアウトカム、および、その定義>
・プライマリアウトカム(有効性):新規の塞栓症状・・画像で診断できたもの
・プライマリアウトカム(副作用):重大な出血・・独立した組織により判断
・セカンダリアウトカム:塞栓までの時間、塞栓のタイプ(動脈か静脈か)、バイオマーカー、心血管死、軽度な出血
・アウトカムが疑わしい患者は、アウトカムを盲検化した組織により決定した
*中止基準:重大な副作用、塞栓症状、中止が必要と判断される患者の状態の変化、同意撤回、妊娠、プロトコール不順守
<収集した因子、および、その定義>
・血液検査(血算、生化、尿検査、抗体など)
・Global Anti-Phospholipid Syndrome Score
<解析方法>
・マージン設定:AFに対するワーファリンの脳梗塞予防のmeta-analysisかの結果から1.4と算出
・非劣勢試験であり、per Protocol populationを使用
・メインアウトカム:リスク比、95%CI
・セカンダリアウトカム
生存時間解析:Cox比例ハザードモデル
サブグループ解析:ポアソン回帰モデルを用いて生存解析
出血:フィッシャ-正確検定
・欠測対処:記載なし
<結果>
・190症例が組み込まれ、それぞれのグループで6.3%が脱落【figure1】
・追跡期間は、リバロキサバン群で33.1カ月、ワーファリン群で34.1カ月
・塞栓再発は、リバロキサバン群で11人(11.6%)、ワーファリン群で 6人(6.3%) (リスク比 1.83 [95%CI, 0.71-4.76])☚95%CIが0.71-4.76と1.4を上回っているため非劣勢は達成できず【table2】
・重大な出血は、リバロキサバン群で 6人(6.3%)、ワーファリン群で7人(7.4%) (リスク比 0.86 [95%CI, 0.30-2.46]).【table3】
・すべてを含んだ出血は、リバロキサバン群で31人(32.6%) 、ワーファリン群で26人(27.4%)で差はなかった (リスク比, 1.19 [CI, 0.77-1.85])
・脳梗塞発症は、リバロキサバン群で9例、ワーファリン群ではゼロであり、リバロキサバン群で多かった (リスク比, 19.00 [CI, 1.12-321.9]).
・塞栓再発発症までの時間は、差がなかった(ハザード比1.94 (CI, 0.72-5.24) 【figure2】
・死亡はリバロキサバン群で5例、ワーファリン群では3例であり、差はなかった (リスク比, 1.67 [CI, 0.41-6.78])
・ポストホック解析:リバロキサバン群で動脈塞栓の既往・網状皮斑・APS関連心新患がある患者にて塞栓の再発が多い可能性【figure3】
<結果の解釈・メカニズム>
・オープンラベルRCTではあるものの、評価には影響しないプライマリアウトカムであり解釈に影響はでない
・Post Hoc解析の結果は、重要視はしてはいけない。
・動脈塞栓がリバロスタチンで多い可能性があることについては、以下のメカニズムが考えられる
①血中濃度の個体差 ②動脈塞栓を予防するにはより高い抗Xa活性が必要 ③内服アドヒアランスの不良 ④ワーファリンと比較しターゲットとするファクターが少なく、半減期が短かさ
<Limitation>
・リバロキサバン群で抗凝固作用の強さは計測できていない
・サブグループ解析のパワー不足
・post hoc解析をconclusionには記載できない
・リバロキサバン群で動脈塞栓の既往・網状皮斑・APS関連心新患がある患者にて塞栓の再発が多い可能性の結果の解釈には注意を要する
<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
・現時点では、ワーファリンを使用するのが無難。リバロキサバンはEULARのAPSガイドラインに記載があるようにワーファリンにてINRがコントロールつかない患者、アレルギーなどで使用できない患者、で考慮してもよいと思われる。(Tektonidou MG, et al. Ann Rheum Dis 2019;78:1296–1304)
<この論文の強み>
・動脈塞栓の既往があるAPS患者を含めて検討した初めてのRCT
<この論文の好ましい点>
・リバロキサバン群では内服アドヒアランスの確認をしていた点(自己記入式質問紙+残薬確認)
・lost of followがないように、イベント発生時に決まった救急施設に受診ように患者に指導をしていた点
<この論文のよくなかった点>
・塞栓に影響するSLEの合併割合、HCQやスタチンの使用状況が記載されていない
・アスピリンを層別化して割付をすべきであった(結果的には、バランスはとれていたが、、)
文責:矢嶋宣幸