Trial of Anifrolumab in Active Systemic Lupus Erythematosus(TULIP2試験)
AnifrolumabのSLEに対する効果
Eric F. Morand, M.B., B.S., Ph.D., Richard Furie, M.D., Yoshiya Tanaka, M.D., Ph.D., Ian N. Bruce, M.D., Anca D. Askanase, M.D., M.P.H., Christophe Richez, M.D., Ph.D., Sang-Cheol Bae, M.D., Ph.D., M.P.H., Philip Z. Brohawn, M.B.A., Lilia Pineda, M.D., Anna Berglind, Ph.D., and Raj Tummala, M.D. for the TULIP-2 Trial Investigators*
the Centre for Inflammatory Disease, Monash University, Melbourne, VIC, Australia
N Engl J Med 2020; 382:211-221
——————————————————-
<サマリー>
中-高疾患活動性SLE患者さんに対しType1インターフェロン受容体サブユニット1に対する抗体製剤のanifrolumabが有効であった
P:中-高疾患活動性のSLE患者さん
I:anifrolumab
C:プラセボ
O:プライマリアウトカム:SLE疾患活動性(BICLA反応)
——————————————————-
<背景・目的>
・Anifrolumab は、Ⅰ型インターフェロン受容体のサブユニット1に結合する完全ヒトモノクローナル抗体であり、IFN-alpha、IFN-beta、IFN-omegaなど、全てのType1インターフェロンを阻害
・305人のSLE患者をanifrolumab 300 mg/月点滴静注、anifrolumab 1000 mg/月点滴静注、placeboの3群に割り付けた第2層試験。SRI4達成率はanifrolumab300㎎:34.3%( vs placebo p=0..14), anifrolumab1000㎎:28.8%(P = 0.063)(Arthritis Rheumatol2017 Feb;69(2):376-386)
・TULIP 1試験では、60人のSLE患者を無作為化し(1:2:2)、anifrolumab150mg または300mgのanifrolumab投与群とプラセボ投与群にわけ、SRI4で疾患活動性の低下を測定→有意差なしすることによりanifrolumab の有効性を評価しました。
・その他のIFN関連の製剤としてはIFN-α抗体製剤であるrontalizimab、sifalimumabがある
<セッティング>
・16か国、119施設
<研究デザインの型>
・二重盲検ランダム化比較試験(第3相試験)
・1:1に割付
・割付はSLEDAI2K(10点以上以下)、PSL量(10㎎以上以下)、Type1IFN遺伝子特徴(高、低)にて層別化し実施
<Population、およびその定義>
・1997年ACRを満たすSLE患者
・18歳以上70歳
・中-高疾患活動性
SLEDAI2Kにて6点以上(ただし発熱、ループス頭痛、器質性脳障害を除く)+clinical SLEDAI2K(検査データを含まないSLEDAI)にて4点以上
以下のいずれかを満たすこと
・高疾患活動性+1つ以上の臓器障害(BILAG A1つ以上か、BILAG B2つ以上)
・中疾患活動性+2つ以上の臓器障害(条件は上記と同じ)
Physician Global Scale(PGA)が1点以上
・スクリーニング時に以下の条件を満たす
・抗核抗体陽性、抗dsDNA抗体陽性か抗Sm抗体陽性
・PSL、抗マラリア薬、アザチオプリン、ミゾリビン、MMF、MTXの1つ以上の投与
・除外基準:重症ループス腎炎、NPSLE
<主な介入、および、その定義>
・anifrolumab300㎎点滴、4週間ごと(48週間)
*PSL減量は許容(PSL10㎎以上であれば8-40週までに7.5㎎以下への減量許容)
<主なコントロール、および、その定義>
・プラセボ
<主なアウトカム、および、その定義>
・プライマリアウトカム:
52週後のBICLA反応があった割合
*定義:
①疾患活動性の低下(以下のいずれか)
ベースラインBILAG A→BILAG B or Cへ改善
ベースラインBILAG B→BILAG C or Dへ改善
②臓器障害の悪化がない:新規の1つ以上のBILAG Aがない、OR 新規の2つ以上のBILAG Bがない
③疾患活動性の悪化がない:SLEDAI-2Kの悪化がない、OR PGA0.3点以上の悪化がない
*プロトコール改定:SRI4からBICLA反応へ変更
・セカンダリアウトカム
①Type1IFN遺伝子特徴高値群のみでの52週時BICLA反応
②PSL10㎎以上から7.5㎎以下への減量
③Cutaneous Lupus Erythematosus Disease Area and Severity
Index(CLASI)の50%改善(ベースライン10以上からの患者にて)
④圧痛主張間接の50%改善(ベースラインで腫脹圧痛6関節以上の患者にて)
⑤再発率(再発定義:新規の1つ以上のBILAG A、OR、新規の2つ以上のBILAG B)
その他:52週時点でのSRI4-SRI8、再燃までの時間、52週まで持続したBICLA反応までの時間、
・安全評価
AE(特に、重症感染症、日和見感染症、アナフィラキシー、ガン、帯状疱疹、インフルエンザ、血管炎、心血管イベント、)、検査結果、バイタルサイン、
<解析方法>
・modified IIT解析(一回でもanifrolumab/placeboの投与を受けた患者は含む)
・stratified Cochran-Mantel-Haenszel test
*Random化の際に層別した変数を用いて解析(SLEDAI2K、PSL量、Type1IFN遺伝子特徴)
・欠測値対処
プライマリエンドポイント:途中で中止した人は、すべてのvisitはBICLA反応なしと記載、
1回のみ欠測はLOCF、連続した欠測は反応なしと記載
*multiple imputationは感度解析として使用
セカンダリエンドポイント:上記とほぼ同様、 例外:再燃は負の二項分布の回帰モデル
・フォローアップ時間は、曝露時間が異なる患者の調整のため、offset変数として組み込んだ
・familywise type1 error(多重検定)を調整するために、事前に決められた重み付けを使用したweighted Holm法を用いた
<結果>
・試験期間:2015/7-2018/9
・649人がスクリーニング→365人がランダム化
・181人:anifrolumab群、183人:placebo
・3人は介入を受けず:180人:anifrolumab群、182人:placeboがmITT解析へ
・試験完遂:anifrolumab群→85%、placebo→71.4%
・中断例:
anifrolumab群:5人副作用、2人状態悪化、2人効果不十分、2人追跡不能、7人同意撤回、9人その他の理由
placebo:14人副作用、4人状態悪化、12人効果不十分、3人追跡不能、1人薬剤内服不遵守、16人同意撤回、2人その他の理由
・患者背景はほぼ同じ
・症状として多かったのは、粘膜皮膚、筋骨格、免疫異常
・80.7%:PSL内服、47%:PSL10mg以上内服、48.1%:免疫抑制剤内服
・プライマリエンドポイント
anifrolumab群→180人(47.8%)、placebo→57人(31.5%)
➡リスク差:16.3%(95%CI:6.3-26.3%、P=0.001)
感度解析(MI使用):同様の結果
・セカンダリエンドポイント
①Type1IFN遺伝子特徴高値群のみでの52週時BICLA反応
Type1IFN遺伝子特徴高値→83.1%(301人/362人)
52週時BICLA反応あり:Anifrolumab群→30.7% (46 of 151)
Placebo→48.0% (72 of 150)
→adjusted difference, 17.3% (95%CI: 6.5-28.2; P = 0.002)
②PSL10㎎以上から7.5㎎以下への減量
10mg以上は全体で47.0%(170 of 362人)
7.5㎎への減量:Anifrolumab群→51.5% (45 of 87)
Placebo→30.2% (25 of 83)
→adjusted difference, 21.2 % (95%CI: 6.8-35.7; P = 0.01)
③Cutaneous Lupus Erythematosus Disease Area and Severity
Index(CLASI)の50%改善(ベースライン10以上からの患者にて)
Anifrolumab群→49.0% (24 of 49)
Placebo→25.0% (10 of 40)
→adjusted difference, 24.0%(95%CI 4.3-43.6; P = 0.04)
④圧痛主張間接の50%改善(ベースラインで腫脹圧痛6関節以上の患者にて)
Anifrolumab群→42.2% (30 of 71)
Placebo→ 37.5% (34 of 90)
→adjusted difference, 4.7%(95%CI –10.6-20.0; adjusted P=0.55)
⑤再発率
Anifrolumab群→0.43
Placebo→0.64
→adjusted rate ratio, 0.67(95% CI, 0.48-0.94; adjusted P=0.08)
その他:再燃までの時間:anifrolumab 群が有意に遅い
(hazard ratio, 0.65、95% CI, 0.46-0.91)
・薬力学的検討
type1IFN遺伝子特徴高値群でanifrolumab投与を受けた群(150/180人)では、インターフェロン遺伝子発現の中和がより速かった。placeboでは見られなかった。
Antidrug抗体は170人中1人で出現した。
・安全性
Anifrolumab群の159人(88.3%)で出現、palaceboの153人(84.1%)で出現
Anifrolumab群で最も多いのは、上気道感染、咽頭炎、投与時反応、気管支炎、帯状疱疹であり、重症AEは8.3%(肺炎、SLE悪化)
placeboで重症AEは17%(肺炎、SLE悪化)
・帯状疱疹:Anifrolumab群→7.2%、placebo→1.1%
・非日和見感染:Anifrolumab群→2.8%、placebo→5.5%
・帯状疱疹:Anifrolumab群→1.1%、placebo→0.5%
<Limitation>
・途中で、primary outcomeを変更したこと。
<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
・Type1IFN遺伝子特徴高値で特に有効である可能性がある
・新たな系統の薬剤が使用できること
<この論文の強み>
・多国籍での試験であること
<この論文の好ましい点>
・途中で、primary outcomeを変更したものの、丁寧な説明がなされていること
<コメント>
SLEの治験でのアウトカムの設定は難しい。この試験は、TULIP1の結果をうけて、SRI4からBICLA responseへ変更されている。SRIはそれぞれの臓器障害の完全な改善を必要とする一方で、BICLAは部分改善もピックアップすることができる特性がある。SLEの臨床研究でのアウトカムの固定にはまだまだ時間がかかるであろう。
文責:矢嶋宣幸