リウマチ性疾患患者における、PCP予防のための低用量ST合剤の有効性および安全性の検討【Journal Club 20210609】

The efficacy and safety of reduced-dose sulfamethoxazole-trimethoprim for chemoprophylaxis of Pneumocystis pneumonia in patients with rheumatic diseases
Tomoya Harada et al. Division of Respiratory Medicine and Rheumatology, Faculty of Medicine, Tottori University, Tottori, Japan; b Division of Rheumatology, Tottori Prefectural Central Hospital, Tottori, Japan

MODERN RHEUMATOLOGY. 2021.  VOL.31, NO.3, 629-635

Background:
ニューモシスチス肺炎は生命予後に影響をおよぼす日和見感染症である.リウマチ性疾患患者の2-4%に発生し死亡率はHIVに合併する患者より高いことが知られている.ST合剤はPCP予防の第一選択薬であるが薬疹や電解質異常,腎機能障害,肝障害などの有害事象が生じることがありしばしばST合剤の減量や薬剤の変更(吸入が必要なペンタミジンや高価で予防効果が劣るアトバコン)が必要になる.これまでもST合剤の漸増療法や半量投与などの低用量ST合剤予防の安全性と有効性が示されてきたが腎機能障害などの臓器障害患者は除外されていた.
ステロイド治療とST合剤の予防投与をされた日常診療にそくしたリウマチ性疾患患者における、既存予防と減量予防における有害事象や継続率とPCP発生を後ろ向きに調査し比較した.

P: ステロイド療法を受けたリウマチ性疾患患者
E: ST合剤週3回投与
C: ST合剤連日投与
O: PCPの発生と有害事象

1.  セッティングと研究デザインの型:後ろ向き観察研究

2. Population、およびその定義:
 2004年4月~2018年3月の14年間にステロイド治療とST合剤予防投与受けた新規発症もしくは再燃のリウマチ性疾患の15歳以上入院患者
除外基準:ステロイド減量や中止のため180日以内にST合剤の予防投与を中止された患者
                     転院のため追跡できなかった患者
                     以前にST合剤使用歴のある患者

3. 主な要因、および、その定義: 
Dose-reduction group:ST合剤週3回1回1錠もしくは1回1錠の隔日投与
臨床医が疾患,性別,年齢や腎機能、肝機能など患者背景に決定

4. Control、および、その定義: PCPの発生と有害事象
Conventional group:ST合剤連日1錠もしくは1回2錠週3回

5. 主なアウトカム、および、その定義:
【主要評価項目】 ST合剤の継続率と180日継続できた患者の割合
【副次評価項目】 有害事象の発生率とその内容,有害事象による減量患者の割合,180日と2018年10月まで長期観察におけるPCPの発生率,有害事象に関与する因子の解析

6. 交絡因子、および、その定義: なし

7. 解析:単変量:Fisher’s exact test and the Mann–Whitney U test
                多変量:ロジスティクス回帰分析 (By SPSS software version 24)

8. 結果
220人がエントリー基準を満たし,最終的にConventional group:145人,Dose-reduction group:75人が解析された.

ベースラインの患者背景(Table1
Conventional groupでCrが有意に低く,eGFRは有意に高かった.eGFR<60と定義した腎機能障害はDose-reduction groupで優位に多かった(28% vs. 9%, p<0.001).
Conventional groupでPM/DM患者はconventional groupに有意に多く,血管炎患者で有意に少なかった.PSL投与量や免疫抑制剤の使用率,間質影肺炎の頻度や他の疾患については2群の患者背景に差はなかった.

中止率と累積有害事象の発生率(Figure1
Figure1a       中止率はDose-reduction groupで低い傾向にあったが有意差はなかった.(8.0% vs. 14.5%; p=0.165)

Figure1b       累積有害事象の発生率はConventional groupで多かった. (10.7% vs. 24.1%; p=0.024)

有害事象(Table 2
全体で43人に有害事象が発生.
有害事象が多かった患者は高齢で腎機能が低く、DM合併例に多かった.

有害事象(Table 3
年齢とDM, eGFR,と既存予防,減量予防を変数に多変量解析をするとeGFR(odds ratio 0.986),既存予防(odds ratio 4.367)が有意な有害事象のリスク因子として抽出された

2群の有害事象の比較(Table 4
Conventional groupで有害事象は有意に多かった.(10.7% vs. 24.1%; p=0.017).
骨髄抑制と肝障害はConventional groupのみ発生した.
Conventional group の21人が有害事象のためST合剤の中止が必要だったが13人はST合剤の減量で継続可能だった.

PCPの発生率(Table 4
Day180日の時点でPCPの発生はなく,2018年10月までの長期観察期間(2778[34-2971]日)では2人にPCPが発生した.1例はGC減量に伴うST合剤の中止,もう1例はST合剤の継続ができずペンタミジン吸入に変更後に発生していた.

9. 考察
腎機能障害など臓器障害をもつ実臨床のリウマチ性疾患患者においてもST合剤の減量予防投与(ST合剤1回1錠週3回か隔日投与)はPCP発生を予防し有害事象が少ない.
中止率はDose-reduction groupで低い傾向にあったが有意差はなかった.
長期観察においてもST合剤継続例ではPCPは発生していなかった.
発熱や薬疹などアレルギー性の有害事象は低用量でも出現しており中断率に影響した可能性.

Limitation
後ろ向きで単施設での観察研究、選択バイアス、少数での解析,予防投与方法の選択や中断および減量は各臨床医の選択

担当:若林 邦伸

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