慢性腎臓病の進行に対するアロプリノールの効果【Journal Club 20210728】

Effects of Allopurinol on the Progression of Chronic Kidney Disease
Sunil V. Badve, Ph.D., Elaine M. Pascoe, M.Biostat., Anushree Tiku, M.B., B.S., Neil Boudville, D.Med., Fiona G. Brown, Ph.D., Alan Cass, Ph.D., Philip Clarke, Ph.D., Nicola Dalbeth, M.D., Richard O. Day, M.D., Janak R. de Zoysa, M.B., Ch.B., Bettina Douglas, M.N., Randall Faull, Ph.D., et al.,for the CKD-FIX Study Investigators

June 25, 2020 N Engl J Med 2020; 382:2504-2513
DOI: 10.1056/NEJMoa1915833

Summary;
慢性腎臓病患者のうち、進行リスクが高い患者において、アロプリノールによる尿酸値低下治療は、プラセボ群と比較して腎機能障害の進行を抑制することはできなかった。

背景;
これまでの研究で、高尿酸血症は慢性腎臓病の発症、末期腎不全への進行、心血管イベントの増加と関連が認められ、痛風の治療・予防目的以外にも、基礎疾患を持つ患者は治療が推奨されている。しかし、慢性腎臓病において、薬物介入による尿酸低下療法の効果は、短期間かつ規模の小さい報告が多く、より大規模かつ追跡期間の長い研究が必要と考えられていた。そこで、慢性腎臓病患者を対象に尿酸降下療法が104週間の追跡にてeG F Rの低下を抑制するという仮説の検証が行われた。

P:stage3または4の慢性腎臓病患者のうち進行リスクの高い患者
I :アロプロノール投与
C:プラセボ投与
O:104週までのeGFRの変化

〈研究デザイン〉
多施設 前向き研究 二重盲検 ランダム化比較試験

〈セッティング〉
オーストラリアおよびニュージーランドの31施設において、stage3または4の慢性腎臓病(eGFR15~59ml/min/1.73m2)の成人患者のうち、尿中Alb/Cr比>265または過去12ヶ月間にeGFR 3.0 ml/min/1.73m2の低下を認めた患者369名を対象。

〈除外基準〉
・痛風、痛風結節、尿酸腎症、尿路結石の既往
・アロプリノール過敏症の既往
・腎移植レシピエント
・皮膚以外の悪性腫瘍患者
・過去3ヶ月間の未解決の急性腎障害
・妊娠または授乳
・アザチオプリン、6―メルカプトプリン、テオフィリン、シクロスポリン、シクロホスファミド、プロペネシド、フェニトイン、クロルプロパミド投薬中

〈方法〉
対象患者をアロプリノール群とプラセボ群1:1で無作為に割り付け、最初の12週間を用量漸増期、その後の92週間を追跡期とし、合計104週間の追跡が行われました。薬剤1錠(アロプリノール100mg or プラセボ)から投与を開始し、用量増量基準に基づき、適宜3錠(300mg)まで増量した。血清尿酸値に基づく投与量調節は、試験期間中いかなる場合も行わなかった。

(用量増量基準)
・新規の皮疹や副作用を認めない
・Hb>8.0 g/dL、好中球数>2000/μL、好酸球数<600/μL or <前値の20%(前値が600/μL以上の場合)、血小板数>10×10⁴/μL
・ALT(ASTでも代用可)<正常上限3倍
・血清Crの前値に対して20%を超える上昇
・容量を増やすことが安全であると医師の判断すること

〈エンドポイント〉
主要評価項目:eGERの変化
副次的評価項目:eGFRの40%以上の低下、末期腎不全、あらゆる原因による死亡、血圧、アルブミン尿、血清尿酸値、心血管イベント、入院、QOLスコア

〈統計解析〉
主要評価項目:線形混合モデル 

〈結果〉
・主要評価項目としてeGFRの変化はアロプリノール群とプラセボ群の間に有意差は認められなかった。開始時のeGFRはアロプリノール群で31.6 ml/min/1.73m2プラセボ群で31.9ml/min/1.73m2であった。
・副次的評価項目の血清尿酸値については、開始時は両群ともに平均8.2mg/dLであり、アロプリノール群は12週時点で平均5.1mg/dLへ低下し、プラセボ群は8.2mg/dLままで推移した。(図2)  アロプリノール群182名は用量漸増期終了時点で、126名(69%)、17名(9%)、9名(5%)がそれぞれ3錠、2錠、1錠を内服していた。
・患者特性は腎臓病の主要原因を除いて、両群間でバランスがとれていた。
・患者特性としては平均年齢62歳、白人、糖尿病性腎症が最も多かった。
・重篤な有害事象については両群間で同程度の頻度で発生した。

【Discussion】
・中等度に進行した慢性腎臓病患者を対象としたため、腎機能低下の抑制効果が得られなかった可能性がある。
・対象として尿酸値を設定しなかったため、高尿酸血症の患者もいれば、正常範囲の患者もいたため、効果が認められなかった可能性がある。

【Limitation】
・試験を中止した患者の割合が多く、中止率30%に対応するために必要なサンプル数は1006人であった
・腎機能として血清クレアチニン値より算出するeGFRを用いた

【本研究の優れている点】
・比較的サンプルサイズが大きく、期間が長いこと、多施設による研究であったこと。
・十分量のアロプリノールを用いて尿酸値を低下させたこと。
・ハイリスク群に対象を絞ったことで、進行する腎機能障害が存在するなかでの比較がなされたこと。

【本研究の好ましくない点】
・アジア人が少なかったこと

【理解できなかった点】
・検定方法について

担当:蕗田 淳平

 

 

 

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