活動性ループス腎炎に対するべリムマブの効果【Journal Club 20210915】

Two-Year, Randomized, Controlled Trial of Belimumab in Lupus Nephritis
著者 Richard Furie, et al.
掲載雑誌/号/ページ N Engl J Med 2020;383:1117-28

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<サマリー>
活動性ループス腎炎の標準治療にべリムマブを加えた群ではプラセボと比較して良好な腎への反応性を認めた。
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<背景>
P:生検で証明された活動性腎炎を合併したSLE患者
I:標準治療(+PSL)+Belimumab投与群
C:標準治療(+PSL)+プラセボ投与群
O:104週時点での腎反応

<セッティング>
2012年7月から2017年7月21か国107施設

<population およびその定義 >
18歳以上で抗核抗体80倍以上、抗ds-DNA抗体のどちらかもしくは両方が陽性であり1997年のACR診断基準を満たすSLE患者で以下を満たす。
・尿蛋白/Cr 1以上
・生検でⅢ型かⅣ型(±Ⅴ型)のループス腎炎、もしくはスクリーニング6か月以内に純粋なⅤ型が証明されている患者
べリムマブとプラセボは1,15,29日後とその後28日ごとに投与

<主なアウトカム、および、その定義>
104週時点で以下の両方を満たすものを有効腎反応とする。
・蛋白尿/Crが0.7以下
・eGFRがフレア前の値より20%以上悪化していないか、1.73m2あたり60ml/分以上であること
・治療失敗によるレスキュー療法の使用がないこと

<研究デザインの型:RCT、横断研究、前向きコホートなど>
多施設2重盲検化RCT。第3相試験
1:1でべリムマブ群とプラセボ群にランダムに割り付けべリムマブ群は10mg/kgを静脈投与。1日目、15日目、29日目、その後28日ごとに投与。標準治療として標準治療はMMFもしくはIVCY→AZA。導入時にステロイドパルスの使用とその後の高用量投与(≦60mg)も可能だが、24週時点で10㎎までの減量できなかった場合は治療失敗と判断。ACE、ARB、HCQも併用可能

<解析方法>
Logistic regression、Cox proportional-hazards regression、rank analysis of covariance

<結果>
448名の患者が224名ずつ、べリムマブ群とプラセボ群に割り振られた。223名のうち146名(65%)、プラセボ群では223名中132名(59%)が100週目まで治験薬を投与された

【table1】患者背景
両群間で違いなし
平均年齢 33.4±10.6
SLEDAIは約12
腎炎の罹病期間は平均0.2年
58%がⅢ、Ⅳ型の単独、26%がⅤ型との合併。残り14%は純粋なⅤ型

【table2】2群の結果
67人(30%) vs. 44人(20%)でべリムマブ投与群で腎反応が良かった。(odds ratio, 1.7; 95% CI, 1.1 to 2.7; P = 0.02)

【Fig 1】
A.有効腎反応の推移
B.有効腎反応確率
C.完全腎反応(尿蛋白/Cr ≦0.5、eGFRがフレア前の値より10%以上悪化していないか、1.73m2あたり90ml/分以上であり、レスキュー治療を受けていない状態)
D.完全腎反応確率
べリムマブ群が早期から有効であった。

【Fig.2】
A.腎関連イベントと死亡確率
べリムマブ群で優位に低下
B.イベントの内訳

【table 3】
有害事象の内訳
何らかの有害事象が2群で95%ほど生じていた。治療関連の重篤な有害事象はそれぞれ23vs25で感染症関連が多かった。
11名が死亡(べリムマブ群6人、プラセボ群5人)
感染症関連が3人ずつであった。ループス腎炎に関連したものはなかった。

<結果の解釈・メカニズム>
自己抗体産生の低下やB細胞活性化因子を中和して、B細胞機能を低下させ、自己抗体産生を減少させ、腎臓における三次リンパ構造の形成を阻害することは腎臓における三次リンパ組織の形成を抑制することはループス腎炎の治療法として今回有効であったと考えられる。

<Limitation>
脱落者が多い(35% vs 31 %)点。
血清クレアチニンが元々低い患者では変化量が小さくてもパーセントは大きくなってもしまうため反応不良と分類されてしまう可能性

<この論文の好ましい点>
2年間もの間、エンドポイントを測定しつづけられたこと。
通常のループス腎炎を対象とした研究と比較してeGFRの改善という点を加えておりより厳しい基準であること。

担当:林智樹

 

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