炎症性筋疾患に伴う間質性肺疾患(ILD)に対する治療の検討【Journal Club 20211027】

Treatment of idiopathic inflammatory myositis associated interstitial lung
disease: A systematic review and meta-analysis
炎症性筋疾患に伴う間質性肺疾患(ILD)に対する治療の検討:システマティックレビューとメタアナリシス
Autoimmunity Reviews 18(2019)113-112

<サマリー>
炎症性筋疾患(IIM)の予後に大きな影響を及ぼすILDに対して適切な治療を確立することは
1)疾患の珍しさ,  2)同疾患の中でも多様な転機を辿る,3)評価・治療方法が確立されていないという3つの点から難しい.
今回システマティックレビューとメタアナリシスを行うことで,治療法の適切さを評価していく.

<study selection>
2017年7月までにMEDLINEに掲載されている研究を網羅的に検索した.論文は英語またはフランス語で記載されたものに限った.
成人でIIMに関与するILDを発症しステロイドまたは免疫抑制剤で治療を行ったもので,死亡率または呼吸機能の改善をアウトカムとしているRCT,ケースコントロール研究,コホート研究を含めた.
データの選択は2人の著者によって行われた.

<研究デザインの型>システマティックレビューとメタアナリシス
RP-ILD,C-ILD2つのメタアナリシスを行った.
その後治療法毎にサブグループ解析を行った.

<Population、およびその定義>
IIMの診断はPeter and Bohanの基準とSontheimer基準に基づいた.ARS症候群の診断は抗ARS抗体の有無が確認された.

<主なアウトカム、および、その定義>
RP-ILDに関して 3ヶ月間の生存率 C-ILDに関しては呼吸機能の改善率(FVC10%以上またはDLCO15%以上)

<交絡因子、および、その定義>
異質性の原因として(年齢,IIMsubtype,出版年,薬剤投与量)などが考慮された.

<解析方法>
I 2 解析は50%以上を異質性があると判断された.改善率はLogrithmic mixed effects meta -regressionで解析された.
P値<0.05が統計学的に優位と判断された.

<結果>
Table1と2にそれぞれ328名のC-ILD(15研究),225名のRP-ILD(16研究)の患者背景が記された.
ステロイド単剤:9研究,CyA併用:14研究,タクロリムス:2研究,アザチオプリン:4研究,シクロホスファミド:9研究,IVIG:1研究,RTX:4研究が評価された.
2つの研究はステロイド,CyA,IVCYの併用が評価された.日本の研究が11,フランス7,イタリア2,そのほかが7であった.サンプルサイズは2~87例で,平均年齢53.5±5.5歳,男性30.5%であった.
ILDは222例が皮膚筋炎,183例が多発性筋炎,85例がCADMであった.12研究(250名)はARS症候群に着目された.
Figure2 改善率は78.6%でI 2 =62%で異質性を認めた.
Figure3 C-ILD 出版バイアスは認めなかった.
Figure4 サブグループ解析ではステロイド単剤,CyA,CY,AZP,TAC,RTXはCyAを除いて異質性なく改善を認めた.
RP-ILDは225例の患者を解析され,3ヶ月間の生存率は平均67.7%であった.異質性はI 2 =41%であった.
Figure7  サブグループ解析ではステロイド単剤,CyA,CY,AZP,TAC,RTXはCyA,CYを除いて異質性なく改善を認めた.

<結果の解釈・メカニズム>
C-ILDにおいてはステロイド単剤で80%以上の改善を認めた.コントロール研究がないため特定の薬剤=CYに関しては効果を実証できなかった.CYは重症疾患に対して,3 rd line移行の使用が多く半分以上の有効性を認めた.
RP-ILDでは免疫抑制剤の併用が推奨された.生存率はあまりに低いため3剤併用でのRCTが必要と思われた.3剤併用療法はこれまでの免疫抑制剤(cyまたはAZPまたはcyAとステロイド併用)の生存率と比較して50%vs25%と高い生存率を認めた.
このメタアナリシス ではCyAと比較してタクロリムスが同様に有効な薬剤であることが判明した.

<Limitation>
MEDLINEの検索のみに限られている点.異質性の原因が特定できていない.MDA-5抗体などが特定される前の研究が多く,疾患特異抗体の詳細がわからない.

<この論文の好ましい点>
希少疾患である筋炎の特定の合併症であるILDに着目してメタアナリシスを行っている点.

<この論文にて理解できなかった点> 
効果量指標として改善率を用いている点

担当:小黒 奈緒

 

 

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