undifferentiated arthritis(早期関節リウマチ)における手足関節MRIの有用性に関する大規模前向き研究

Rheumatology (Oxford). 2022 Jan 12 ;keac017              

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Hand and foot MRI in contemporary undifferentiated arthritis: in which patients is MRI valuable to detect rheumatoid arthritis early? – a large prospective study Nikolet K den Hollander et al.

背景

早期関節リウマチの診断で難しいケース

RAの分類基準を満たさず、

1)Seronegative           2)少数関節炎

3)理学的、画像的に腱鞘炎のみ    4)回帰性のパターンのケース

何を根拠に診断、治療を進めるか、エビデンスに乏しく、主治医により判断基準が異なる

本研究の目的

分類基準を満たさないundifferentiaated-arthritis(UA)がRAに伸展する予測はできないか。

UA診断時のMRIの所見がRAへの伸展の予測に寄与するか否かを検討

患者

・The Early Arthritis Clinic(EAC) オランダライデン大学の人口ベース起始コホートに登録された患者から抽出(MRI撮像をプロトコールに加えた2010年以降に登録された患者)

・新規発症、1関節以上、罹病期間2年以内 の患者を抽出

・ベースライン:腫脹圧痛関節数に加え、血液検査、手(および足)の造影MRIを施行していることが条件

・フォロー:ベースライン⇒4カ月⇒12カ月

Criteria-based UA: 1987年、2010年、いずれのRA分類基準も満たさず、代替診断もされていない患者

Expert-opinion based UA: 専門医における臨床的診断(おもに診療所での診断)の患者

除外:MRI撮像時すでにDMARDsが投与されている

アウトカム

Primary outcome:  RAへの伸展(=1987年or 2010年の分類基準を新規に満たすこと)した患者の割合

Secondary Outcome : 上記診断基準を満たす or 満たさずに1年以内にDMARDsを開始したケースの割合

解析

MRI炎症所見(骨炎、滑膜炎、腱鞘炎、3つを合計した炎症スコア)と1年以内のRA発症との関連を単変量および多変量ロジスティック回帰法により分析。UAでは腫脹関節数(単、少数、多)、CRP、ACPA、RFを多変量解析に含めた。予測モデルの性能は、c統計量、AUC、calibration slopeを用いて計算。オーバーフィッティングの可能性を考慮し、bootstrapping法(ランダムサンプル、200回繰り返し)を用いてcalculate optimism-corrected performanceを算出した。

 

結果

■UAの患者の多くがACPA、RFが陰性であった

■RAへの伸展のリスクは

1.Criteria-based UA

□21%がRAへ伸展

□免疫学的異常があれば伸展リスクは高い

□少数関節19%、多関節46%がRAへ移行 単関節では3%

□MRI所見

MRIにおける炎症の存在はRA進展と関連した(OR 2.73 95%Cl 1.39-5.37)

滑膜炎、腱鞘炎はそれぞれ単変量解析で抽出されたが、多変量解析は腱鞘炎のみが独立した因子となった

(OR 3.19; 95%Cl 1.74-5.86)

 ACPA陰性のケースでも、腱鞘炎の存在がRA伸展を予測する(AUC: 0.795)

 

2.Expert-opinion based UA

□criteria-based UAとほぼ同様の結果、MRIの炎症がRAへの伸展と関連した(OR 2.00; 95%Cl 1.23-3.25)

□ACPA/RFともに陰性患者においてMRIの炎症は感度78%、特異度50%でRAへの伸展を予測した

 

■RAの分類基準の達成or DMARDsの開始(secondary outcome)

 □Criteria-based UAで21%だったRAへの伸展の割合が45%まで上昇した

□同様に腱鞘炎の存在のみが独立したリスクとして抽出、とくに、seronegativeな少数関節炎と関連した(Table S6 Figure S3 いずれもSupplementary)

 

この研究の良い点)

サンプルサイズが大きい、MRIをルーティン化するコホートを使用しておりバイアスがかかりずらい

T to Tを意識した研究

Secondary outcomeでDMARDsの開始を入れて過小評価を避けて検討している(より臨床的)

 

臨床への応用)

本邦では比較的MRI検査の敷居が低い。エコーでは感度が問題とされる腱鞘炎(エコーでは感度19~50%)の評価をMRIで積極的に行う根拠の一つ

 

Limitation)

約半数が、臨床的に専門医の判断でUAの診断がなされている点

超音波の同時評価についての記載がない点

登録後、1年間にDMARDsが投与されている患者が多くいる⇒RA伸展の割合、過小評価されている

DMARDs以外の治療、とくにPSLやNSAIDsの修飾の可能性が書かれていない

コホートにおいて、2010年以降、ベースラインMRIを導入しているが、2013年までは足趾の評価は含まれていなかった。そのため足趾の評価は限られた患者にしか行っていない。

(担当:髙橋 良)

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