関節リウマチにおけるうつ病および不安障害のスクリーニング尺度の妥当性と信頼性【Journal Club 20221207】

Validity and Reliability of Screening Measures for Depression and Anxiety Disorders in Rheumatoid Arthritis

関節リウマチにおけるうつ病および不安障害のスクリーニング尺度の妥当性と信頼性

 

著者 Carol A. Hitchon et al. University of Manitoba: Winnipeg, MB, CA

Arthritis Care & Research Vol. 72, No. 8, August 2020, pp 1130–1139

 

P:関節リウマチ患者

E:構造化面接と質問紙法による調査

C:ない

O:質問紙法の妥当性

 

結論。RA患者において、うつ病のスクリーニング検査は良好な診断性能を有している

 

<セッティング>

・カナダ マニトバ大学(および地域のリウマチ科、地域の家庭医)

 

<研究デザインの型:RCT、横断研究、前向きコホートなど>

・横断研究

 

<Population、およびその定義>

・RA患者(ACR/EULAR分類基準を満たす)

・18歳以上

・英語での質問紙表の記入とインタビューが可能

 

<主な要因、および、その定義>

・構造化面接(SCID-1に準拠)

・面接者:臨床心理学の大学院生、看護師、研究コーデネーター

・うつ病の質問紙(PHQ-9, PHQ-2, HADS, Kessler-6, PROMIS)(Table 1)

・不安の質問紙(GAD-7, GAD-2, OASIS, PROMIS)(Table 1)

 

<Control、および、その定義>

・なし

 

<主なアウトカム、および、その定義>

・うつ病、不安の質問紙の妥当性

 

<交絡因子、および、その定義>

(RAが先か、うつ病・不安障害が先か)

 

<解析方法>

・SCID-1による構造化面接の診断を基準として、各尺度のカットポイントに基づき感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率、95%CIの正確度を計算

・ROC分析を用いて分析

・構造的妥当性:痛み、疲労、年齢との関連を調査

・信頼性:クロンバックのαを用いて評価

・テスト、リテスト信頼性:時間経過でうつ病、不安障害のスコアの再現性評価

・使用ソフト。SAS ver9.4

 

<結果>

・154人が登録。153人がSCID-1を完了。150人が登録後2週以内にSCID-1を完了。

・患者背景は(Table 2)。

・115人が2週後に再び行い、テストリテストの信頼性を評価

・うつ病:SCID-1の結果、11.3%がうつ病と分類された。

質問紙では、HADS-D(11)を除き、SCID-1を上回った

・不安障害:SCID-1の結果、19.3%が不安障害、7.3%が全般性不安障害と分類

HADS-A(11)を除き、SCID-1を上回った。

・うつ病:特異度、感度はTable 3、AUCはFig1A

AUCはPHQ-2、PROMIS、PHQ-9、Kessler-6で差はない。HADS-Dのみで少し落ちる

カットポイントはHADS-D:7、PROMIS:57.7、Kessler-6:11

・不安障害:特異度、感度はTable 3、AUCはFig1B

AUCはOASIS、PROMIS、GAD-2、GAD-7、HADS-Aで差はない。

カットポイントはGAD-7:9、HADS-A:9、PROMIS:55.4

・構造的妥当性(Table 4)

Kessler-6以外はうつ病、不安障害の点数が高いことは痛みと疲労の点数が高いことと中等度の関連あり。年齢は関連なし

・信頼性。うつ:0.84-0.97、不安:0.69-0.93(Table 5)

・テストリテスト。うつ:0.84-0.88、不安:0.69-0.83(Table 5)

 

<メカニズム>

・RA患者はMSやIBDなど他の慢性免疫疾患と同様にうつ病と不安障害の割合が高い 

 

<Limitation>

・同じ地域にある大学の外来、地域のリウマチ科、家庭医から募集した

・女性、白人多数、高学歴、疾患活動性は中等度

・医療費が公費負担(BIO使用率も高い)

・SCID-1の評価が1回

・PPVが低い。高い得点の時には臨床的に確認する必要性がある。

 

<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>

・質問紙票でのうつ病のスクリーニングは比較的有用。しかし、どれが最適かは不明

・現在の質問紙を超えるスーパー質問紙の開発、血液検査なども用いた複合指標の開発が望まれる。

 

<自分で考えた交絡因子>

・構造化面接者間バイアス(一応、トレーニングされていると記載されているが・・)

 

<この論文の弱点>

・COVID-19の流行前の研究である。

(COVIDの流行により、一般人のうつ病、不安障害の割合が2倍以上に増えた報告あり)

・構造化面接を行う人が臨床心理学の大学院生、看護師、研究コーデネーター。

(基礎疾患のある人のうつ病、不安障害の診断はベテラン精神科医でないと難しい)

・英語ができない人がエントリーされていない

 

<この論文の好ましい点>

・うつ病と不安障害の2つの疾患を調査したこと。

・SCID-1を用いた構造化面接を行ったこと

 

<この論文にて理解できなかった点> 

・数ある質問紙票の中からこれらの質問紙票を選択した理由。

・結局、どの質問紙票が最適かわからない。

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