関節リウマチ患者におけるInformal caregiverの介護負担【Journal Club 20230208】

Arthritis & Rheumatism 2004; Vol51                     

Burden of Caregiving: Evidence of Objective Burden, Subjective Burden, and Quality of Life Impacts on Informal Caregivers of Patients with Rheumatoid Arthritis

背景

RA患者の44%は再燃の経過などから機能障害を起こし,16%がライフイベントに影響を及ぼし,患者の余命やQOL,心理社会・経済的な負担をきたす.RAの進行により他者への介助の依存が増え,介護サービスも増加する.介護者の中でも医療従事者ではない家族や友人などのInformal caregiverの生活にも大きな影響を与える.介護の幅は時間から体力的な疲労,介護による緊張による抑うつも報告されている.

本研究の目的

リウマチ領域のInformal caregiverの介護負担を調べた研究は少なく,客観的負担,主観的負担,QOLを測定し,介護負担の性質と度合いの理解を深めることを目的とする.

 

P: 介護を受けているRA患者の家族

E: 

C: 

O:  客観的介護負担,主観的介護負担,健康関連QOL

研究デザイン および患者

オランダのRA+study多施設コホートに登録されたRA患者681名の内,介護を受けている患者349名の家族に質問紙票が渡された.

客観的負担の評価として,指定のタスク(食事の準備,掃除など)を行なっているか,どれだけ時間を費やしているか(何分〜何時間/日),介護による時間・経済的投資(直接的か所得減少による間接的)の変化を調べた.

愛する人の介護を楽しむ人もいれば,困難で重い責務と考える人もおり,捉え方は人それぞれのためIngormal caregiverの主観的評価は客観的負担の影響をどのように受け止めているか調べている.尺度としてCaregiver Reaction Assessment :CRA(各ドメイン1〜4)介護者の状況(日常生活への影響,ケアに関する受け止め,家族のサポート,健康問題,経済的な影響)などを5段階で評価した24項目を評価した.特点が高いほど負担が大きい.CRAの他に0から100までのVASでの自己負担評価(SRB)も用いた.

健康関連QOLの評価としてEuroQOL(0~1点)=EQ-5D+EQ-VASを用いた.EQ5DもPROでありEQ-5Dは、機動性、セルフケア、日常生活、痛み・不定愁訴、気分・不安の5つの健康状態を表す多肢選択式の質問からなっている.

解析として

客観的介護負担と主観的介護負担の関連,及び介護負担とQOLの関連を解析した.

結果

■349名に質問紙票が配られ153枚が返送された.有効回答率として43.84%であった.

■Table1.RA患者のInformal caregiverの大半は患者と同世帯に住む男性パートナーであった.介護者の平均年齢は62歳,介護者は平均11年以上介護を継続している.女性の介護者は男性より長年介護している.多くの介護者が仕事をリタイアしており,中程度の教養がある.RA患者の平均年齢も62歳でありEuroQOLで評価した健康関連QOLは同年代60〜65歳と比較し有意に低かった(refference score0.79男性,0.82女性).26%が家族介護の他に訪問介護を受けていた.訪問介護のほとんどは家事援助37名,週平均4.5時間で個人介護は6名で週2.5時間であった.6.1%は在宅介護の待機者であった.

■客観的介護負担 73%の介護者は日常的な介護をしており,17.6%の介護者は被介護者と同居していない.Table2に示されるように介護者の多くは患者の火事を引き継いで掃除や食事の準備を行なっており日常的に多い時間を要している.家事を担う1週間の時間(表2の毎日の家事:上から4つ,週ごとの家事:上から3つ)は15時間(男性12時間,女性26時間)であった.日常生活の活動に費やす時間は12.4(男性13,女性10.5時間)であり,男女で介護者が行う作業に違いが見られた.トイレ介助などの直接介助はほどんどの患者が必要しておらず,家事や買い物,園芸や医療機関の送迎,予約などのサポートも介護活動になっていた.

■Table3に介護に関連する時間投資と費用の変化に関する情報を集めた.80%以上の介護者が患者が病気になる前と比較して家事活動に費やす時間が増え,ほぼ半数が患者の身の回りの世話に費やす時間を増やした.介護のための時間を確保するために6.1%が有給の仕事をやめた.平均して週に11時間お有給労働の減少が報告されている.有給休暇で介護していた日田が4.8%無休休暇中に介護していた人が4.8%であった.81%が介護のために余暇時間や趣味の時間を減らしている.(週平均7.6時間)

 自宅介護により住宅改修や補助器具,通院費,などコストの負担増加を経験しており43.5%に達した.追加コストとして平均月額100ユーロかかった.

 

■Table4 主観的介護負担の結果を示す.CRAのセルフエスティームはポジティブな要素で高いほど介護負担が少ない.それ以外の4つのドメインは高いほど負担が大きい.スケジュールの乱れや家族のサポート不足が負担が大きい傾向があった.CRAは全ての項目で男性よりも女性介護者の負担が高いが有意な差はなかった.

■Table5  患者のQOLは主観的介護負担に有意に影響する(QOLが低いほど負担が高い),在宅介護の待機や所得の減少も主観的介護負担の増加につながっていた.また,介護時間に費やす時間が長いと主観的負担が増加した.

■Table6 QOLの結果.Informal caregiverはQOLの観点では平均集団以上であった.QOLが0.5未満の患者ににケアを提供する介護者のサブグループの解析がなされた.男女問わず全ての介護者が平均集団よりもQOLは低かったがいずれも有意ではなかった.

■Table7

この研究の良い点)

リウマチ領域で初めて介護負担に目を向けた研究を行い,選択バイアスに関して検討している.

臨床への応用)

RA患者のQOLが低い場合介護者の主観的負担の増加に影響した.家族のサポート不足や在宅介護の待機も関連を認めた.膠原病疾患特有の薬剤の管理や風邪をひいた時の対応などへの戸惑いなどについては今後質的研究で明らかにする必要があると感じられた.

Limitation)

回答率が低いこと.介護家族に関するデータは取られていないのでRA+の他のRA患者と介護を受けているRA患者が比較され有意な差は見られなかったため選択バイアスは限られていると思われた.

今回先行研究と比較して介護負担が少ない結果であり解析されたRA患者は比較的軽症である可能性がある.

 

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担当:小黒 奈緒

 

 

 

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