AAV患者さんに対するPSL0.5mg/kg+RTXでの2年間後の効果と安全性の検証【Journal Club 2023/10/4】

Reduced- dose versus high- dose glucocorticoids added to rituximab on remission induction in ANCA- associated
vasculitis: predefined 2- year follow- up study

RTX療法を行うAAV患者での大量GC vs 減量GCの効果:LoVAS trialの2年フォロー結果

Furuta S, Nakagomi D, Kobayashi Y, Hiraguri M, Sugiyama T, Amano K, Umibe T, Kono H, Kurasawa K, Kita Y, Matsumura R, Kaneko Y, Ninagawa K, Hiromura K, Kagami SI, Inaba Y, Hanaoka H, Ikeda K, Nakajima H; LoVAS collaborators.
Department of Allergy and Clinical Immunology, Chiba University Hospital, Chiba, Japan
Ann Rheum Dis. 2023 Sep 21; ard-2023-224343


<サマリー>
中等症の新規発症AAVの患者を対象として、PSL 0.5mg/kg+RTXレジメとPSL 1mg/kg+RTXレジメでの再発は変わらなかった。重篤な有害事象は減量レジメで少なかった。
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P:重症糸球体腎炎や肺胞出血を伴わない新規発症ANCA関連血管炎患者
I:PSL 0.5mg/kg + RTX375mg/m2/週×4回
C:PSL 1.0mg/kg + RTX375mg/m2/週×4回
O:複合指標(死亡、再燃、末期腎障害、重症有害事象)(24ヶ月後)

 

<背景>
・The LoVAS trialがオープンラベル、多施設のRCTは6ヶ月間での減量GCレジメ+RTXと大量GCレジメ+RTXで寛解導入に差がなかった(減量レジメ71%、大量レジメ69%)

<研究デザインの型>
・phase 3, オープンラベル、無作為化, プラセボコントロール
・観察期間は合計24ヵ月:6ヵ月の寛解導入期+18ヵ月の寛解維持期

<セッティング>
・日本国内の21施設

<Population、およびその定義>
・2012年チャペルヒルの定義にて、ANCA関連血管炎(顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症、腎限局性血管炎)と新たに診断され、ANCA陽性の患者
・除外:重度の糸球体腎炎(eGFR15mL/分未満)または肺胞出血(酸素2L以上)

<主な介入、および、その定義>       
・減量GCレジメ:PSL0.5mg/kg/日→5ヵ月で中止
        +RTX375mg/mを2/週4回→6、12、18ヵ月に1000mg/body(または500mg/bodyを2回投与)
      ※BVASが0にならない場合、またはCRPとANCA値が正常化しない場合に限り、
       PSL中止ステップ(5mg/body/dayから14週で休薬)の開始を延期することができる

・大量GCレジメ:1.0mg/kg/日→5ヵ月までに10mg/body/dayに減量
        +RTX375mg/mを2/週4回→6、12、18ヵ月に1000mg/body(または500mg/bodyを2回投与)
        ※6ヵ月後以降、治験責任医師の判断により、投与量は自由に維持または漸減され、休薬も可
・メチルプレドニゾロンのパルス療法は認められていない。

<主なアウトカム、および、その定義>
・プライマリ:24ヵ月後の死亡、末期腎不全、再発、重篤な有害事象の複合アウトカム
 ※ESKD:6週間以上透析を受け、回復しないもの
 ※重篤な有害事象:死亡、障害、入院、および/または既存の入院の延長に関連する有害事象
・セカンダリ:
 ・PSL投与量、BVAS、VDI、 SF36、全体的な疾患活動性およびグルココルチコイド/リツキシマブ関連治療毒性(VASで評価)
 ・GC関連する副作用:糖尿病、高血圧、脂質異常症、不眠症、投薬が必要な感染症、病的骨折、腰椎骨密度
 ・IgG値とANCA値

<解析方法>
・ピアソンχ2検定またはFisherの正確検定
・イベント発生:log- rank検定
・縦断的データは共分散分析
・その他の連続変数:Wilcoxon順位和検定を用いた。

<結果>
・死亡、再発、ESKD、重篤な有害事象の複合アウトカム
 →減量GCレジメ:25例/69例(62.7%)
  大量GCレジメ:32例/65例(51.2%) ※両群に差なし:p=0.124
・死亡:減量GCレジメ:2例、大量GCレジメ:5例(p=0.225)
・再発:減量GCレジメ:9例(13.0%)、大量GCレジメ:5例(7.6%)
  寛解導入期の早期再発:減量レジメで3例
  寛解維持期の再発:減量レジメで6例、大量レジメで5例
  無再発生存率:両群間に差なし(p=0.311)。
  投与開始から最初の再発までの期間の中央値:減量レジメ281日、大量レジメ503日
・ESKD:減量レジメ:1例(1.5%)、大量レジメ:1例(p=0.485)
・PSL投与量:24ヵ月後の中央値:減量ジレメ0mg/日、大量レジメ5mg/日(p<0.001)
・24ヵ月間PSL累積投与量(中央値):減量レジメ1817mg、大量レジメ7002mg(p<0.001)。
・24ヵ月後のSF36の身体的と精神的サマリー、VDI、疾患活動性と治療毒性VAS:両群間に差なし
・24ヵ月目における重篤な有害事象:減量レジメ:27.5%、大量レジメ:46.2%(p=0.025)
・重篤な感染症:減量レジメ:10.1%、大量レジメ:24.6%(p=0.026)
・PSL関連の有害事象
 ・重篤および非重篤な感染症、不眠症、病的骨折:大量レジメ>減量レジメ群
・血清IgG値(中央値):減量レジメ:977mg/d、大量レジメ:812mg/dL(p<0.001)
・ANCA値主要評価項目を達成した患者のうち
  血清ANCA値が陰性化→減量レジメ77.5%、大量レジメ88.8%(p=0.14)
  その後のANCA陽性陽性化→減量レジメ:38例中1例、大量レジメ40例中6例

<Limitation>
・サンプルサイズが少ない
・日本人のみ
・24ヶ月での解析では、非劣性試験の形での解析ではない
・PR3-ANCA陽性はMPOANCA陽性と比較して高い再発リスクであり、本試験の結果は、MPO-ANCA陽性患者に限定される可能性がある

<研究の強み>
・リツキシマブ維持療法を評価したのは、MAINRITSAN1、2、3試験とRITAZAREM試験である。これらの試験はすべて、リツキシマブ維持療法と長期低用量GC併用が血管炎の再発予防に非常に有効とした。一方、本研究では、減量レジメでは、早期にGC中止および寛解維持期にはRTX療法のみで、低い再発率であり、従来の低用量GCの長期維持療法は必要ない可能性を示せたこと
・寛解導入期のGC累積投与量は、PEXIVAS試験よりもLoVAS試験の方が少なく、かつ、アウトカムも変わらなかったことが示せたこと

<この結果のメカニズム>
・MPAが80%弱であり、再発し易いGPAが少なかったことが影響した可能性

<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
・いったん病勢寛解が達成されれば、リツキシマブ維持療法を受けた患者にGC長期投与は必要ないかもしれない。

 

文責;矢嶋宣幸

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